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第14話 本戦-2回戦

 本当は麻々乃から次の対戦相手の話を聞きたかったが、他者との接触を禁じられているシンは一人スタジアムへと上がった。

 他にも七名の選手が一堂に会しており、これから四ブロックに分かれて、二回戦を行う。



 シンの前に立ったのは同じ日本人だった。

 年齢は不明だが、二十代後半から三十代だと推測し会釈する。

 しかし、相手は無視し立ち尽くすだけだった。



『それでは、第ニ回戦! バトルスタート!』



「「侵略アンヴァズィオン」」



 起動コードの音声入力によりシエルデヴァイスが起動し、ディスクが飛び出した。

 予め、握り締めていたカードをセットし各々の相棒を召喚する。



「俺は【魅惑の小悪魔】を召喚」

「ぶふっ。【断罪だんざい小神しょうじん】を召喚する」



 特に大袈裟なパフォーマンスを行った訳ではない。

 ただルールに則らないとゲームが進まない為、仕方なくやっているのだ。と憤りを抑えつつ、シンは指示待機中のウサギに命令を出した。



「やれ、【魅惑の小悪魔】」



 先程のバトルでシンがカテゴリーdevilデビルのカードを持つ者だと言う事は明かされてしまっている。

 後々、厄介な事になるだろうと考えると憂鬱だが、遠慮なく名を呼べる事は有り難かった。

 それ程までにシンは【魅惑の小悪魔】という兎に愛着が芽生えており、それは魂を通じて契約モンスター側へと伝わる。



「ぶふっ。素早さ重視のモンスターか。俺は【断罪の小神】のモンスター効果発動!」

「ランク序で効果持ち!?」

「これがカテゴリーgodゴッドの力だっ!」



 【断罪の小神】は机の前に鎮座する強面の初老男性のようなモンスターである。

 右手にはしゃくを左手には錫杖しゃくじょうを持ち、その瞳と耳で真実を見抜く。



「問題ぃぃぃ!」



 耳をつん裂くような金切り声を上げる男に不快感を抱くシンは次の言葉を聞き、更に不快感を募らせる事となった。



「君は童貞ですかっ!?? いえすゥゥ、おあァァ、のーォォォ」



 全身でマルバツを表現する男の発言で会場中がざわつき、他のブロックでバトルしている選手もそちらを観戦していた観客も全ての視線がシン達に向けられた気がした。



「…なぁっ!?」



 思わず後退ったシンを心配するように兎が見上げる。

 突然の問題提示に戸惑う。

 咄嗟に周囲へと視線を巡らせそうになったシンの足を兎が必死に前足で掻いていた。

 ホログラムの前足はシンの足に届かない。

 それでもシンの視線は【魅惑の小悪魔】のつぶらな瞳へと吸い込まれ、冷静さを取り戻す事が出来た。


 神に嘘をつくという行為が得策ではないと考えたが、正直に答えても嘘をついても全世界中に晒される事に変わりはない。


 この時の観客、視聴者の反応は賛否両論だった。

 シンの対戦相手を非難する者も居れば、勝つための手段として賞賛する者も居た。

 当の本人達はネット上で騒がれている事など気付く筈も無く、勝負に集中していた。



 シンのシエルデヴァイスには『your answer』と表示され、60秒から時間を刻む。

 それ以外のコマンド入力は受け付けられない状態だった。



「俺は……俺の答えは――」



 今尚、シンは兎を見下ろしており、そこから顔を動かす事は出来ない。

 視線がぶつかり合う中、彼は戦う理由を思い出しその為に羞恥心を捨てる覚悟を決めた。

 両手の拳を握り、勢いに任せて顔を上げる。

 たった一分未満だがシンにとっても観客にとっても長い時間に感じられた。



「俺の答えは……イエスだッ!!」

「んぎぃ!!??」



 シンは【断罪の小神】のホログラムを指差し、正答を叩きつけた。

 【断罪の小神】はその強面を綻ばせて立ち上がると契約者である男に向き直り、右手に持つ笏を振り下ろした。



「……は、え?」



 目の前で起きている出来事に理解が追いつかないシンが呆けているとシエルデヴァイスと大スクリーンにはデカデカと『winner』という文字が浮かび上がった。



「……勝った……のか? ありがとうな」



 しゃがみ込み、ホログラムの兎の頭を撫でるシンの姿が映し出され、会場中からは黄色い声と拍手が送られた。



 四ブロック全てのバトルが決着すると各選手達が移動を開始した。

 六人は一直線にシンの居るブロックへと向かう。

 接触禁止を諭すスタッフを押し退け、彼らは駆け付けた。



「よく勝ったな、この野郎。スカッとしたぜ!」



 ほぼ初対面の選手達に肩を組まれ、揉みくちゃにされているシンは何が起きているのか分からなかった。



「こいつはあの卑劣な男を破ったイカした野郎だ。俺らはこいつを尊敬するぜ!」

「この年で童貞とか普通だから気にすんなよ! 俺もお前と同じくらいの時はまだヤってなかったからな」

「僕なんて、まだだし!」



 四名の男性プレイヤーに気遣われるシンの姿はカメラに収められ、全世界への発信された。



「確かにカッコ良かったよ」



 シンが控室に戻る直前、隣の部屋を割り振られている選手に声をかけられた。

 キャスケットを目深に被った選手はそれだけを言い残し、控室へと消えて行った。

【断罪の小神】

ランク:序

カテゴリー:godゴッド

モチーフ:冥界の主 閻魔大王

効果:問題を出し、対戦相手が正解を答えれば相手の勝ち。不正解を答えれば自分の勝ちになる。

契約者:日本人 擬武ギブ選手

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