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第11話 予選

 鷺ノ宮エンタープライズ代表取締役社長の記者会見から一ヶ月後、遂に公式大会、魔王杯の開催日を迎えた。



 これまでも日本での公式大会や非公式大会は開催されていたが今回は規模が異なり、全世界の人達が参加した。

 どのように大会を進めるのかと心配していたシンだったがそれは杞憂に終わった。

 予選はスマートフォンを用いて行うようで、参加表明しておけば現地へ向かう必要は無い。



 全参加者をトーナメントに割り当て、鷺ノ宮エンタープライズが開発したAIが勝敗を決するとの事だった。

 その勝敗基準は公表されていないが、元々カードの強さと好感度に依存するゲームである為、契約の時点でおおよその勝敗が決してると言っても過言では無いだろう。

 あとはどれだけカードを信じて、好感度を高めるかという問題になる。



 亜梨乃は三回戦敗退、リョウは二回戦敗退という結果だった。

 そして、残ったシンは順調に勝ち続け、予選準決勝まで駒を進めた。

 シンの自宅に集まっている三人はスマートフォンの画面を凝視している。

 これまでは一分程度で勝敗結果が表示されていたが、今回は三分程度の時間を要した。

 『winner』と浮き出た画面から決勝戦の画面に自動的に切り替わり、シンは安堵の息を漏らした。



「遂に決勝戦だね」

「これで本戦に出場する十六人が決まるのか」

「気を抜くなよ、シン!」

「お、おぅ。俺は何もしないけどな」



 四人で小さい画面を凝視していると画面が切り替わり、左端にノーネームと表示されたシンの白い兎が現れた。

 反対の右端には【巨喰きょじき小妖精しょうようせい】と表示された毛むくじゃらの巨人が現れた。



 これまでにない演出を楽しむ三人と鼓動が速くなるシンは瞬きを忘れて結果を見守った。

 デフォルメされた小さな兎と巨人が画面内で可愛らしい埃を舞い上がらせながら戦う。

 そして五分程度経過し、画面は真っ黒になった。



『貴方様のユーザーネームが全世界に公開されます』

というメッセージだけが浮き出て、画面が明るくなった。

この大会参加時にそのような文言があった為、この場面では既に同意済みとなっているのだろう。



「……シン」



 麻々乃が見せてきたのは更新された公式サイトだった。

 そこには本戦出場が決定した十六人の名前が連なっており、下から三番目にシンというユーザーネームがあった。



「すげぇ! マジで本戦に出場じゃねーか!」

「でも、これってさ」

「日本チャンピオンは居ない。上位ランカー達の名前も無い」



 興奮するリョウとは対照的に亜梨乃と麻々乃は冷静だった。

 確かに今回の大会には有名どころは一人も出場していない。

 そもそもカテゴリーdevilデビルのカード所有者にしか価値のない大会なのだ。

 それでもこれだけの参加者が集まったという事はお祭り感覚か転売目的のどちらかだろう。



「猫のフランス人は居ないのか?」

「ん。分からない」



 シンの取り引き相手となりうるフランス人は識別出来ないが彼、或いは彼女もこの大会に参加している可能性は非常に高い。



 あの文面を見る限り、あちら側は既に猫のランク破のカードを持っている可能性を否定出来ない。

 彼、或いは彼女が大会で優勝してしまえば兎のランク破のカードが手に入る機会を失うだろう。



「シン。シン? シンっ!」



 ビクッと身体を震わせたシンが顔を上げると怒り顔の麻々乃と目が合った。



「勝つ事ばかり考えてる。優勝してもシンは兎のランク急のカードを手に入れられない」



 麻々乃に指摘されるまで気付かない程にシンは目先の利益を優先していた。

 戦う理由を全うする為にはランク破のみでなく、ランク急のカードも手に入れなければならない。

 しかし、シンはその手段を持ち合わせていないのだ。



「シンくん、まずは一勝だよ」

「あぁ。ありがとう」



 こうして、シンは【魅惑の小悪魔】というランク序のカードだけで予選を突破した数少ない参加者になった。

 それが世間に明るみになるのは、もう少し後の話である。

【巨喰の小妖精】

ランク:序

カテゴリー: fairyフェアリー

モチーフ:妖精 トロール

効果:不明

契約者:ノルウェー人選手

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