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歌の龍王  作者: 朱鷺田祐介
20/74

【20】港町ラズーリの闇

運命の劇場へようこそ

龍の秘密を追う魔道師ザンダルは、奇妙な運命に導かれ、旅立つことになる。


「歌の龍王」は、拙作のダーク・ファンタジーTRPG「深淵」の世界を舞台にした幻想物語です。



赤の八弦琴


我は見つめる者。

汝の生きざま、とくと見届けよう。



 港町ラズーリの波止場は波の音に満ちていた。

 ゲグに仕える者と名乗った娘は、海のように青いローブの中からザンダルに手を差し伸べる。その肌の色はずいぶんと日に焼けて黒いが、それは健康的で魅惑的だった。

「あなた様こそが御使い」

 娘は繰り返す。

「海の神王を目覚めさせる者」

 おそらくは、海に封じられた魔族「波の騎士」を信奉する異端者であろう。何かの予言が彼女を導いている。それとも、ザンダルが懐に抱いた「赤き瞳」に呼び寄せられたのか?

「夢が……この街を覆いました」

 娘はザンダルの手に触れる。

 またも脳裏に海中を彷徨う者の夢が広がる。

 そして、輝く海面には、白銀の巨大な球体が浮かんでいる。


 ザンダルの記憶のどこかでちりちりとした警戒が立ち上がる。

あれは危険なものだ。

 おそらく、ザンダル自身が抱くスゴンの赤き瞳よりもっとずっと…


「あれは何だ?」

 ザンダルは女の手を振りほどきながら、問いかける。

「目覚めを呼ぶ者。真実の姿を失い、復活の時を求めて彷徨う者」

 そうして、娘は水平線を指差す。青い、青い海と、青い、青い空の狭間に、白い入道雲が葬列のように並ぶ水平線に、なにやら、きらりと光る物がある。白銀の何かが雲の狭間をさまよい、ゆっくりと移動していく。


 大きい。


 あれは何だ?

 思わず、幻視の糸を伸ばし……ザンダルはぞっとするような気配に身を潜めた。

 とてつもない魔力。

 風の遠吠えがザンダルの耳に響いた。

 風虎か。

 モーファットで火龍を観察していたザンダルですら、その魔力の大きさにぞっとする。

 公爵、もしくは大公の名を持つ者に違いない。

 風虎座の魔族など縁がないと思っていたため、あれが何かは判別できないが、危険な存在であることには間違いない。


「あれこそ目覚めをもたらす第一の使者。

 天空を舞う白銀の大公」

 ゲグに仕える娘が言う。

「さあ、参りましょう。

 我らが神がお待ちしております」


「そういう訳にはいかない。

 魔道師学院の名にかけ、魔族の信徒と通じる訳にはいかぬのだ」

 ザンダルは、ずっと持ってきた手槍を構え、娘に向ける。

 相手が異端者ならば、この街の警吏たちに突き出し、協力を得るのが得策。うまくすれば、街にいる魔道師かまじない師の力も借りられよう。

 そう決めて、ザンダルは娘に声をかける。

「この街にも、領主がおろう。

 そこで詮議をいたそう」

「ええ、構いませんわ」

と娘は微笑み返す。

「ご挨拶がまだでしたね。

 私、このラズーリを治めるライン・ラズーリの娘、アナベルでございます」



★本作は、朱鷺田祐介の公式サイト「黒い森の祠」別館「スザク・アーカイブ」で連載され、現在も継続中(最新64話/2021年春まで)を転載しているものです。


http://suzakugames.cocolog-nifty.com/suzakuarchive/

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