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第5話-1



 あれ? 声が出ている。

「はーい。お待たせー、つぐみくーん」

「へっ?」

 いきなりニコニコ顔の会長が、美咲所長の後ろに出現した。軽快に右手を振りながら。しかも、その横には与謝野さんもいる。

「か、会長?」

 緊迫感が一気に崩れ去る登場はやめてほしかった。久々に脱力。

「いやー、ここにテレポートしてくるのにずいぶんと手間取ってしまいましてー」

 ポリポリと頭をかく会長。こいつには緊張という言葉はないのかもしれない。

「どうして……?」

 美咲会長は驚きを露にしていた。そういえば、ここへはテレポートできないようになってるはず。

「お兄ちゃんに不可能はないのよ」

 ずいぶんとご自慢げな与謝野さん。

「草薙亮也……。そうだったの。早く気付くべきだったわね。君が『ナギの名を継ぐ者』だということに」

 ナギの名を継ぐ者? それって『ナギ族』と何か関係があるのかな。

「なるほどね。最初から知っていたのね、ここのことを」

「わかっていれば話は早いですー。つぐみくんや他の超能力者たちを解放してもらいましょうかー」

「断わるわ。やっと手に入れたチャンスなのよ」

 美咲所長は立ち上がると、右指をパチンと鳴らす。あれは。

「会長、あぶないっ!」

 体の自由を奪われちゃうよ。

 会長の前に一陣の風が走り抜けた。

「悪戯も度が過ぎれば許すことはできなくなる」

 会長の顔つきが変わった。いつものニコニコした笑顔はどこにもなかった。開かれた瞳は怒りに吊り上がっている。

 口調も間延びしてなくって、ハッキリとしゃべっている。

 ホントに会長なの? 別人みたい。

「効いてない。さすがね」

「所長以外の者は早くここから出ていけ」

 三人の男の人たちは会長に拳銃を向けていた。どうやらこの人たちは超能力者じゃないみたい。

 会長の迫力に押されたのか、三人の男たちは最もあっさりと逃げていってしまった。残るは、美咲所長と霧原さんの二人だけ。

「出ていけと言ったはずだ」

 会長は腕を組んで立っている霧原さんを見る。

「僕には見届ける義務があるんですよ」

 メガネを取った霧原さんは会長を一瞥すると、あたしへと視線を変える。

「結子! 早くつぐみくんを!」

 会長が叫んだと、ほぼ同時だった。

 カプセルに亀裂が入り、ぱりーんっ! と粉々に砕け散った。

 飛び散るガラスの破片が、がんじがらめで動くことのできないあたしに無数の刃と化して襲ってくる。

「つぐみくんっ!」

「きゃあぁぁぁぁぁぁぁぁぁっっっ!」

 あたしは目を閉じた。

 が、いつまで経っても襲ってこないガラス片。あたしは恐る恐るゆっくりと右目だけを開いた。

「っ?」

 例えるなら、あたしの周りだけまるで時間が止まったみたいだった。数センチ手前でガラス片が空中で止まっている。

 と、すぐに重力に引かれてガラス片は落下する。

「サイコキネキス、というわけか」

 霧原さんはほくそ笑んでいた。まるでこうなることを予測していたみたいに。

 会長ってテレポートだけじゃなかった? サイコキネキスって言っていたけど、杜野センパイなんかとは全然レベルがちがう。

「結子、つぐみくんを」

「わかってる!」

 与謝野さんがあたしの方に駆け寄ってくる。

「与謝野さん、寝ていたんじゃなかったの?」

「ホントあなたって考えなしに行動するんだから」

「別に考えなしで行動していたわけじゃないわよ!」

「睡眠不足はお肌の天敵なのよ」

 もしかしてこうなることがわかっていて、与謝野さんずっと寝ていたわけ?

 与謝野さんはまずあたしの頭にかぶさったへんてこなヘルメットを取ると、次に鋼鉄板に固定していたベルトを外す。

 とたんにあたしはへなへなと座り込んでしまう。まだ美咲所長の能力が残っているみたいだった。

「世話のかかる人ね」

 与謝野さんに毒づかれても、事実だけに何も言えなかった。

 あたしが与謝野さんに助けてもらっている間に、会長と美咲所長との超能力者同士の戦いは始まっていた。といっても、一方的に美咲所長の攻撃が続いているみたい。でも、会長は何のダメージも受けてないって感じ。

 そういえば、会長のこと『ナギの名を継ぐ者』とかって言っていたけど。

「『ナギ族』の話は聞いたんでしょう?」

「どうしてあたしの考えていることがわかるの? まさか与謝野さんまでっ!」

「あたしはテレポートとテレパシーだけよ。でも、お兄ちゃんはちがうわ。『ナギ族』の頂点に立つ者なんだから」

 頂点に立つ者? あの会長が。何かいろいろありすぎて収拾がつかなくなってきた。

 ただ、あたしは会長だけを目で追っていた。         

「あきらめろ。俺には何をやってもムダだ」

「いやよ! せっかく私の能力を認めてくれる人が現われたのに。研究所まで創ってここまでやってきたのよ! 誰にも邪魔はさせないわっ!」

 半狂乱に叫ぶ美咲所長。

「誰なんだ? お前にこんなものを与えた奴は?」

「そうよ。誰にも渡さない。渡すぐらいなら」

 美咲所長はサングラスを会長に投げつける。キレる前兆。




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