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食いしん坊エルフ  作者: なっとうごはん
第十九章 鬼退治
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778食目 もたもた

 いまだ激戦が続く宇宙要塞ASUKA宙域。おびただしい命が消えゆく空を見上げるのは、彼らの勝利を祈る者たちだ。


「あんた……」


 主がいなくなったフィリミシア城にて、モモガーディアンズの、そして夫の帰りを待つミランダは、輝いては消えゆく夜空の星々に恐怖を覚えた。彼女の足にしがみ付く彼女の息子ゼファーも同様だ。


「光が、命が消えてゆく……こんなことって」


 エルティナに聖女の座を託されたゼアナは己の力の無さに悲観した。彼女も戦場に出るとの意志を示したが、エルティナに却下されたのだ。

 それは、地上に残る者の面倒を見る者がいなくなるとのことからである。現在のラングステン王国はゼアナの手によって纏め上げられ、混乱することなく治められていた。


「若きが死に、老いし者が残されようとは。いつ、どの時代、どの世界でも、この理は変わらぬのか」


 桃師匠は地上に残された。それは最早、戦える身体ではないことと、地上に残った戦士たちを取り纏める者が必要であることからだ。


「桃師匠、フィリミシア近辺に聖獣が出現しました」

「うぬ……間隔が短くなっているな。ハーキュリー殿、休む暇もなくて済まないが頼めるか?」

「是非もない。身体を動かしておらねば心が落ち着かぬゆえ」


 ライオットの父親ハーキュリー・デイルは血に染まった包帯を引き千切り、フィリミシア城を飛び出して行った。

 現在、惑星カーンテヒルの各地では、聖獣と呼ばれる怪物が数多く出現し未曽有の危機に陥っている。既に何ヶ国かとの連絡は付かなくなっており、事態の深刻さは増すばかりだ。


 その聖獣たちの目的はただ一つ。獲物が持つ【運】の回収である。


「ヒーラーたちの様子は?」

「魔力が危険水準に達している者たちが殆どです。もう、魔法による治療はできないと考えるべきでしょう」

「うむ、果たして、我々が命尽きるのが先か、それとも……」


 桃師匠とゼアナは、輝いては消えてゆく星々を見上げる。それは美しくも儚い輝きであった。






「ちょと、もっと急げないの!? 全然、速度が出てないじゃないのっ!」

「ユウユウが太ったからじゃないの?」

「失礼ねっ、ここと、ここが、成長しただけよっ!」

「うっわ~、もぎたい、もげろ」

「星熊、あんたが重いのよ!」

「あ~、聞こえない、聞こえない~」


 ユウユウとリンダ、星熊童子が騒ぐのは、桃太郎たちが漕ぐ木製の船の上だ。えんやこらと船を漕ぐ桃太郎の姿は宇宙に在って滑稽極まりない。


「流石に手漕ぎ舟は無謀であったか」

「それくらいわかるでしょうに! あぁもう、GDが故障しなければ、ひとっ飛びで戦地に向かえるのに!」


 珍しく焦る姿を見せるユウユウに吉備津彦は違和感を覚えた。そして、その違和感の正体は彼女の言葉ですぐさま解消されることになる。


「このままじゃ、出番が無くなるわよっ!?」

「あ~、完全に取り残されちゃってるもんね」

「そんな理由か……焦る事はない。出番はまだある」


 対する吉備津彦とリンダは妙な落ち着きを見せていた。そんな二人がユウユウには気に食わない。怒りのボディプレスにて二人を容赦なく押し潰した。


「あぁもう、少しは大人しくしておくれ」

「茨木は子供だから仕方がないよ」


 復活を果たしたウルジェに、大破したGDを修理してもらっているプルルと熊童子は、落ち着きのないユウユウに辛辣な言葉を投げかける。その言葉にユウユウは更にヒートアップした。


「うっさいわね!」

「いや、身体の方は十分に大人のようだぞ」

「ふん!」

「あべしっ!?」

「「「しょ、初代様ぁぁぁぁぁぁぁっ!?」」」


 そして、さり気にユウユウの豊満な乳房を揉んでいた吉備津彦は、彼女から怒りのメガトンパンチを頂戴した。吉備津彦は速やかに沈黙、機能を停止した。


「さ、最終決戦とは思えないムードですよね」

「誠司郎、こいつらは、いつもこんな感じだ。考えるだけ無駄と知れ」


 誠司郎の呟きに、ガイリンクードが鋭い指摘を示す。反論する者がいない辺りお察しと言えよう。


「誠司郎、そんなことよりも、服を着なさい、服を」

「えっ、お父さん、今更? ガイリンクードさん、服なんてある?」

「必要ない。見られて恥ずべき肉体ボディはしていないはずだ」

「つまりは、もっていないと……だって、お父さん」

「こっちが恥ずかしいんだ。お父さんは、誠司郎をそんな子に育てた覚えはありません」


 だが、偶然に持っていたタオルで、至高の大天使の乳房と股間を隠すことに成功。

 しかし、かえってエロティックに見えてしまう、という結果に陥った。チラリズムとは罪深いものである。


「いや、それにしても、この遅さは酷いだろ」

「ううむ、ヴァルハラを出た時は早かったのだが」

「カタパルトで押し出してもらったからでしょうね」


 史俊と時雨の指摘に、顔面が陥没している吉備津彦は唸った。そして思う、前が見えないと。


「初代様、やっぱり宇宙でオールは無理なんじゃないっすか?」

「うむ、二代目もそう思うか。大失敗だったな」

「「はっはっは」」

「何、この行き当たりばったりな人たち」


 時雨の白い視線は桃太郎たちに突き刺さり、ほんのりと精神的なダメージを与えた。


「やっぱ、推進力はいるよなぁ」

「そのことごとくが壊れてるのよ。エルティナがいれば、オナラで加速できるのに」

「何、娘はそんな事をしているのか!? お父さん許しませんよっ!」

「急に親ばかになったわね、吉備津彦」

「吉備津彦様、分かります」

「おぉ、誠十郎君。分かってくれるか」


 史俊とユウユウは、親ばかな二人に呆れかえる。同じような歳の娘がいる、という境遇は二人の心をグッと近づけさせる要因となり得たのだ。


「あっ、そうだ。ガイリンクードに船を押してもらえば?」

「……リンダ、なんで今頃、気が付くのよ」

「え~? なんで私が悪いの? 皆、気が付かなかったじゃないの」


 リンダはユウユウの理不尽なツッコミにむくれた。事実、これだけ人がいるというのに、この方法に誰も気付かないという。圧倒的な脳筋族の成せる業であった。


「別に押してもいいが……残る船は置き去りになるぞ?」

「私たち以外はどうでもいいわ」

「桃力を得ても鬼は鬼だな」

「だって鬼だもん」


 ガイリンクードはユウユウの自己中心的な性格に呆れるも、そんな彼女が嫌いにはなれなかった。欲望に忠実な姿も彼女の魅力であったからだ。


 そんな、わちゃわちゃして、グダグダになっている彼らに念話が届く。発信主は機動要塞ヴァルハラの勇者タカアキだ。


『はろぅ、えぶりわんわん』

『『『わんわんぉ~!』』』


 息の合った返事を返す戦士たちに、濃厚な満足感を示したタカアキは、彼らに機動要塞ヴァルハラに帰艦することを促した。

 吉備津彦たちがもたもたしている間に、機動要塞ヴァルハラが追い付いてしまった事が大きな要因だ。


『取り敢えず、一度帰艦してください。突破口が開けたので、この船で宇宙要塞ASUKAに特攻ぶっこみますんで』

『派手にやろうってんだな? いいぜ、話に乗ってやる』


 タカアキの提案にガイリンクードはニヤリとほくそ笑む。

 顔のベースが誠司郎のため、あまり凶暴性は見受けられず、無理矢理【悪い子なんだぞ】とアピールしているみたいで可愛らしい状態となってしまっている。


「あらまぁ、可愛らしい顔ね」

「むぅ……顔のベースは俺にしておくべきだったか」

「不気味になるから、誠司郎で正解よ」


 ユウユウの指摘に、ガイリンクードはちょっぴり凹んだ。






 機動要塞ヴァルハラに帰艦した戦士たちは、すぐさま補給と整備を施してもらい、一度、艦橋のオーディンと面会することにした。タカアキは特別な部屋に居るので、念話を通しての会話となる。


「よく来た、勇敢なる戦士たちよ」

「あなたがオーディンね。ふぅん、渋いおじさまじゃないの」


 ユウユウの挑発的な態度にも、微塵も心を動かさないオーディン。その姿にユウユウは感嘆を覚える。


「ほんとだ、立派なお髭ね」


 そして、リンダの言葉に激しく心を揺れ動かすオーディン。彼は紛う事なきロリコンであった。ユウユウのオーディンに対する評価が大暴落した瞬間である。


「こほん……ペタン娘、最高。じゃなくて、諸君らには、やってほしい事がある」

「やってほしい事? ヴァルハラの護衛かしら?」

「いや、その必要性はもうない。ASUKAに取り付ければ、この船はもう用済みとなる」


 オーディンは右腕を上げる。すると、モニター画面に多くの人々の姿が映し出された。

 それは、ヴァルハラに乗り込む神々の姿であった。

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