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食いしん坊エルフ  作者: なっとうごはん
第九章 神級食材を求めて
415/800

415食目 フレイベクスの無限お肉

ビーストフォレスト探索から一夜明け、

フィリミシアへと帰還した俺達はヒュリティアの家にて

魔力過多症の治療薬の制作に乗り出した。

現在は早朝ということもあり、まだ暑くはなく爽やかな風が吹いている。


薬の制作場所であるが、そもそも薬を制作する専門的な道具類は

黒エルフ達しか持っておらず、また、その道具の使い方も

彼らしかわからないということもあり

必然的にヒュリティアの家に集まったというわけだ。


俺もすり鉢程度なら使用方法がわかりもするが、

あの万力と箒を組み合わせたような物は何に使うか見当もつかない。


「……さ、始めましょう。グリシーヌ、手伝ってちょうだい」


「わ、わかったんだな! だな!」


そして薬を制作するのはヒュリティア、グリシーヌ、

総監督にフォリティアさんという面子である。

雑用係としてリックとクラーク、

更にはゴードンがマイホビーゴーレムわららを従えて参加する。


薬の制作には根気強く液体を掻き回しながら煮詰める、

という作業があるので根気強いわららが抜擢されたのだそうだ。

普段から屑魔石を掻き混ぜて煮詰める作業をこなしているので、

この程度のことならお手の物であろう。


「おいおい、地べたでやるのか? やりにくいだろ」


「こんなこともあろうかと作っておいたぜ!」


満面の笑みを浮かべて〈フリースペース〉から

大きな作業台を取り出すリック。流石は大工、格が違った。


だが決して彼を大工と言ってはいけない。

彼は自分を騎士だと思っているのだから。


「ケケケ、なかなか良い作業台を作るじゃねぇか。

 俺の作業台もガタきてるから作ってもらおうかなぁ?」


ゴードンが作業台を揺らしてもカタカタと音を出す様子はない。

見た目は荒いが頑丈でしっかりとした作りになっているようだ。


「作業中に揺れたらやりにくいからな、見た目よりも安定性を取ったんだ。

 もう少し時間があったら凝った装飾を彫れたんだがな」


「ケケケ、リックの装飾も侮れねぇからなぁ……それだけにもったいねぇ」


「よせよ、俺は騎士になるんだからさ」


ゴードンのリックを見る目は心底もったいないという眼差しであった。

職人達には俺達にはわからない物が見えているのだろう。


ほどなくして薬の制作が始まった。

始まってしまうと俺と他のクラスメイト達はすることがない。

現に家に入りきらなくて外で待機している連中がいるのだ。


今回もモモガーディアンズ全員参加である。

これって意味がないのでは? と思われがちであるが実はそうではない。

彼らにはやるべきことがきちんとあるのだ。


そう、ここはスラム地区。

弱き者が肩を寄せ合って、なんとか生き延びている場所だ。

よって、ここでおこなうことは当然のごとく彼らの支援である。


王様の政策によって徐々にではあるが彼らも社会に進出しつつある。

主な仕事は町の清掃作業であるが、

中には正社員として飲食店に勤務する者まで現れた。

特に黒エルフの女性はその優れた容姿から人気があるようで、

近年はさまざまな場所でその姿を窺うことができる。


しかしながら、いまだに職が見つからず貧困に喘ぐ者がいるのは確かだ。

そんな彼らを元気付け背中を押してやることが俺に課せられた使命と言えよう。

彼らも同じ町に住む仲間であり、望んでこんな立場にいるはずがない。

一人でも多く幸せに暮らせるように手を差し伸べることは

『ラングステンの聖女』として当然の責務なのだ。


「お~い、エル!

 バーベキューコンロの設置が終わったぞ! 早く焼こうぜ!」


「おぉ、早いな、ライ……って、炭が起きてないじゃないか」


「あっ、忘れてた」


この巨大バーベキューコンロは以前、フィリミシア中央公園で使用した物である。

その頃はまだ生きていたいもいも坊やと楽しくBBQを楽しんだなぁ……。


っとと、いかん、いかん、涙がこぼれそうになった。

確かに彼とはもう一緒にごはんを食べることは叶わない。

でも、今は常に彼の魂と共にある、さみしいことなんてないはずだ。


……すまん、嘘だ。

やっぱり、一緒にごはんが食べたい。


でも、それは叶わないことであると、俺が一番良く知っている。

望んでも叶わない……これこそが真・身魂融合の罰だということを。


あぁ、つれぇなぁ……。


「エルちゃん、私達はお掃除すればいいんだね!?」


「あぁ、頼む、リンダ」


生活に余裕がない者は環境に気を配ることができない。

身の回りを清潔に保とうとするのは余裕のある者だけだ。

このスラム地区も以前よりはマシになったが、

それでもゴミやら何やらで散らかっている。

こんな環境では心機一転することもできなくなってしまうだろう。

そこで俺達がお掃除のお手伝いを買って出たのである。


「それじゃあ、いつもどおり『奥』のお掃除をしてくるわね」


「いってらっしゃいませ、ユウユウ閣下」


このフィリミシアにも吹き溜まりというものは残念ながら存在する。

だが、それは一人の少女にとっての憂さ晴らしの場所になっていた。

それを知らない犯罪者共はそこに集まり……後は言わなくてもわかるな?

つまりはそういうことだ。死にたくなければ口を噤むがいい。

まぁ、そのお陰でスラム地区の治安はぐっと向上したのだが。


これって、喜んでいいのだろうか? 一応、悪人であるが彼らも命があるのだ。

救う者である桃使いとしては手放しには喜べない事案である。


俺がその件で頭を悩ませていると足元がひんやりとしだした。

視線を足元にやれば水色の美しい毛並みを持った

未確認生命体が纏わり付いているではないか。


「ひゃん、ひゃん!」


「おぉ、雪希ゆきは今日も元気だな」


この子はルリティティスさんと

前の旦那さんとの間にできた子供で『雪希』という。

彼女の名付け親は俺だ。

雪希は純潔のフェンリルで、

このカーンテヒルでは水属性の上位精霊というポジションに位置する。


そんな彼女が何故ここにいるかというと、

彼女の母親であるルリティティスさんが

ルドルフさんとの間に出来た子供をそろそろ出産しそうであるからだ。


氷の大迷宮はヒュウという氷の精霊が見ていてくれている。

彼女は危険を冒してまで友達の雪希を救ってほしい

とフィリミシアの俺の下までやってきた勇敢な精霊だ。


そのようなこともあってか最近はメキメキと実力をつけ、

上位に近い中位の精霊にまで成長したらしい。たいしたものである。


ルリティティスさんは現在、ルドルフさんの屋敷にて出産の時を待っている。

彼女は上位の水の精霊であり氷の大迷宮でずっと暮らしてきたため、

暑い環境下では生活に苦労するらしく、

氷の息を使用して家の中を冷やす行動に出た。

そのため、現在のルドルフさん宅はまるで冷蔵庫のようになっている。


ルドルフさん自体はフェンリルと契りを結んだためまったく平気らしいが、

俺達は一分と居られないほど屋敷は冷え切ってしまったのだ。

それは冗談で置いていった

ミルク入りのコップに割りばしを入れた物が凍っていたほどだ。

もちろん、美味しくいただきました。


「うはぁ、ユキちゃんはひえひえで気持ちいいさね」


「ほんと、ほんと、夏には最高だわぁ……」


「くぅん」


アカネとアマンダが足元にいた雪希を抱き上げて拉致してしまった。

それを見た女子達が我先にと雪希に群がる。

男子達も便乗しようとするものの女子達によって壁が形成され

彼らははシャットアウトされてしまった。

そんな彼らは不満げな表情でBBQの下準備中作業に戻ったのである。


ちなみにだが雪希の舌は更にひんやりしている。

これにペロペロされると暫くは涼が持続して極楽気分になれるのだ。

フェンリルの冷たい舌は息を急速に冷やして氷の息を吐くための機能らしい。

しかし、まだ子供の雪希ではひんやりする程度である。


では大人のルリティティスさんは触った時点でアウトかというとそうでもない。

大人になったフェンリルは体温を自在に調整できるそうだ。

だから温かいスープを飲んでも即座に凍ることはない。

だから、チュッチュしてレロレロしても大丈夫だという。


「しっかし、今日はまた暑いなぁ……うおっ、卵が落ちた!」


「何やってんだよ、ロフト……あえぇぇぇぇぇっ!? 目玉焼きになってるぞ!!」


ロフトが落した卵は廃材のトタン板の上に落ちて割れてしまった。

するとどうだ、卵がふつふつと音を立てて

見事な目玉焼きになってしまったではないか。


既に時間は十時を回ろうとしている。

……今日は暑過ぎだな。


俺は『アスラムの実』を輝夜と協力して創り出し皆に分け与えた。

食べれば熱中症対策になる優れ物だ。


さて、準備は皆に任せて俺は俺にしかできないことをしよう。

それはこの『フレイベクスの無限お肉』の調理である。


仮にも邪竜と呼ばれた竜の肉だ、まともに食べれるとは思えない。

というか、竜の肉全般がまともに食べることができないらしい。

それは竜の肉が特殊調理食材であるからだ。


「よし、まずは普通に焼いてみるか……」


俺は普通の包丁で肉を薄くスライスし熱したフライパンの上に載せる。

すると肉はすぐさまぐずぐずに崩れ無残な姿を晒してしまった。

どうやら、ただ焼くだけでは食えないらしい。


「では、蒸してみてはどうか?」


蒸し器にいれて蒸してみたがこれもダメだった。

固くなり過ぎて歯が立たないのである。

なかなか手強い食材だ、だが……燃えてきた。

俺も本気を出すことにしよう。


俺は〈フリースペース〉から黒く輝く包丁を取り出す。

これは初代様が大切にしていた業物の一振りだ。


「ユクゾッ」


『よかろう……レッツ、クッキング!』


俺の気合いに呼応して食材の精霊が出現した。

この勝負……もらったな。


『まずはこの肉に果物の果汁を擦り込むのだ』


『果物ならなんでもいいのか?』


『かまわない、彼女は果物が好物だからな』


手元にある果物といえばリンゴ程度しかない。

しかも食後のデザート用に買っておいたため一つしかなかった。

したがって俺は桃先生を創り出し容赦なくその果汁を肉に擦り込んだ。


するとどうだ、フレイベクスの無限お肉が

ビクンビクンと痙攣し始めたではないか! これはいったい……!?


『んん~いいぞぉ、彼女も喜んでいる。次は容赦なく肉を叩くのだぁ』


『ふきゅん!? 叩けばいいのか?』


『そうだぁ……彼女は「ドM」だからなぁ』


『ドMっ!?』


食材の精霊の指示に従いお肉を叩くも変化は見られなかった。

恐らく俺の腕力が足りないせいであろう。


『もっとだぁ! この程度では彼女は満足せんぞぉ!』


『くっ、だが、俺の腕力では……そうだっ!』


自分で出来ないなら力を借りればいい。

窮地の際には柔軟な発想力で乗り切らなくてはならないのだ。


「俺はここでクラスメイト・ライオットを召喚!

 フレイベクスの無限お肉にダイレクトアタック!!」


「殴ればいいのか?」


俺が頷くのを見届けてからライオットは強烈な拳を

フレイベクスの無限お肉に振り下ろした。


『まだだ、まだ終わらぬ。もっと刺激を与えるのだぁ』


「俺のターンはまだ終わってはいない!

 即効魔法『バトンタッチ』を発動し、

 ライオットと手札のウルジェを交換し場に召喚!

 再びフレイベクスの無限お肉にダイレクトアタック!」


「お肉を~叩けば~いいんですか~?」


状況を飲み込めていない様子のウルジェであったが

素直にお肉に向かって拳を振り下ろしてくれた。


メメタァ……!!


パワーだけならライオットを上回るだろう。

お肉は歪な形に変化しビクンビクンと痙攣していた。

調理テーブルがそろそろヤヴァイ気がする。


『もう一息だったが……惜しいな、時間切れだぁ』


食材の精霊が残念そうな声を上げた。

どうやら、調理に制限時間があるらしい。

だが、俺は自分のライフがゼロになるのを見るまでは諦めない!


『くくく……俺のターンがいつ終わったと錯覚していた?』


『な……に……!?』


「トラップカード!『とどめの一撃』!

 このカードは相手の場にモンスターがいない場合にブルトンを特殊召喚できる!

 ゆけっ、ブルトン! 必殺の『アシュラ・インパクト』だ!!」


「……本当に撃つぞ?」


少しばかり戸惑いつつも、

彼はフレイベクスの無限お肉に向かってアシュラ・インパクトを放つ。

それは無抵抗なお肉に命中し、

たまたま近くを歩いていたシーマを巻き込んで壁に激突した。

形的にはフレイベクスのお肉が地面につくのを防いだ結果になったのである。


ちなみに実際にカードバトルをしているわけではなくノリでやっているだけだ。

俺の調理においては稀によくある光景である。


『おぉ……見ろぉ……彼女が至高の喜びに震え、

 その旨味を解放しようとしておるわ!』


食材の精霊が示す先にあるフレイベクスの無限お肉が

ふるふるとその身を震わせた。

そして遂には眩いばかりの輝きを放つようになったではないか。

それはまるでお肉の宝石のようだ。

この光景を見た俺は悟り、包丁を格好良く構えて言い放った。


「調理……完了!」


「重いからこの肉を早くどけろ! 私が元上級貴族でなければ死んでいたぞ!!」


さて、肉しきと化したシーマもあのように言っているし、

調理し終えたお肉を調理台に戻すとしようか。


俺はライオットとブルトンに頼んで

キラキラと輝くお肉を調理テーブルまで運ぶように頼んだ。


「うはぁ、すげぇ肉だな……っ!?」


「……うむ、これは見事な……っ!?」


肉を運ぼうとしていた二人の動きが突如として止り、

そしていきなり肉に噛り付いたではないか! いったいどうしたというのだ!


「おいぃ! どうしたんだ二人とも! お肉はまだ生のままだぞ!」


「ぐえっ! 肉を持ち上げる前に食うな!

 おまえらの体重が載って苦しい!!

 ふ、ふぎぃぃぃぃぃっ! 潰れるっ潰れるぅぅぅぅぅぅぅっ!!」


俺の言葉とシーマの断末魔によって我に返った二人は

自分のおこないにとても驚いた様子だった。

ライオットはともかく、

ブルトンまで一緒になってこういう行為に及ぶのは珍しい。


「……不覚、俺もまだ鍛錬が足りんな」


「でも仕方がないさ、この肉の香りを嗅いじまったらなぁ……もぐもぐ」


そういいながらもお肉を食べることを止めないライオット。

ブルトンも相当に無理をして我慢しているように見える。

どうやら獣人族には抗い難い魅力を持つお肉へと変貌を遂げたようだ。


だが、俺が注目したのはその部分ではない。

彼らに食われてしまった部分だ。


「ふきゅん! こ、これはぁ……!?」


なんと、フレイベクスの無限お肉が調理された状態で再生を始めたのである。

これならば、わざわざ調理しなおさなくてもよさそうだ。

それならば全ての部位を調理してしまおうと思い付くのも自然な流れであろう。


おっと、その前に……。


俺は医療魔法〈メディカルステート〉を使用して

ライオットとブルトンの状態を確認する。

本来なら俺が毒味をする予定だったのだが、

それをする前に二人が生のまま食べてしまったからだ。


確認したところ二人に異常は認められなかった。

それどころか『祝福』という珍しい効果が記載されていた。

武器や道具にそういったステータスが記載されているのはよく見るが、

生物に記載されているのを見るのは初めてだ。

まぁ、特に害はないようだし放っておいても問題ないだろう。


「……むぅ、力が腹の底から溢れ出てくる。この肉の滋養は相当なものだ」


「がふがふ、おっ? そういえばそうだな! んぐんぐ」


いい加減に食べるのを止めろ、おバカにゃんこ。

BBQをする前に満腹になってしまうぞ?


ブルトンの言葉が気になった俺は

通常の〈ステート〉を使用して二人の身体能力を調べてみる。

すると驚きの効果を確認することができた。


「な、なにぃ……!? 全ての身体パラメーターに+50の効果だとぉ!

 このお肉を食べたら貧弱一般市民も

 立派な冒険者へとクラスチェンジできるじゃねぇか!」


この能力の増加量は脅威であった。

一般の者がステータスを+50するのにはおよそ十年は掛かるといわれており、

人によっては十年掛けても届かないとまでいわれているのだ。

それがこのお肉を食べただけで増えてしまうのである。

恐らくは食べて暫くしたら効果がなくなるとは思うが、それでも驚異的だ。


ブルトンはライオットがへばりついたままの

フレイベクスの無限お肉を調理テーブルに難なく載せてくれた。

これもステータスが増加しているからだろう。


ちなみに知力や魔力の増加は認められなかった。

本当に肉体的なパラメーターだけだ。

これならばプルルが食べても大丈夫そうである。


尚、シーマは白目痙攣した姿で発見された。

彼女の尊い犠牲に敬礼を以って応えたい。


俺はライオットの尻尾をキュッと握りフレイベクスの無限お肉から引き剥がした。

彼は尻尾を握られると某野菜人同様に力が出せなくなるのだ。


ライオットを引き剥がしたところで残りの部位のお肉を『調理』してゆく。

先ほど調理した部位はモモ肉だ。量的には一番多く大きい。

高さは二メートルに及ぶだろうか?

俺の筋力では〈ゼログラビティ〉なしで持ち上げることはできない。


「ほれ、残りの部分も仕上げるぞ!」


「尻尾は握らないでくれよぉ」


不満を口にするおバカにゃんこであったが、このエルティナ、容赦はせぬ!

いうことを聞かない悪い子は尻尾をにぎにぎするぞっ!!


彼の尻尾は適度な弾力があり、いつまでもにぎにぎしていたい逸品である。


そんなこんなで残りの部位も調理することに成功し

調理テーブルにはさまざまな部位のお肉が圧倒的な存在感を示していた。

もちろん、どの部位も再生し元のお肉の姿に戻る。

だが、このフレイベクスの無限お肉が元の姿に戻る際、俺は違和感を感じ取った。

別に気分が悪くなると言ったものではなかったので、

そこまで気にはしなかったが。


お肉の調理が終わったところで薬の制作が終了したようだ。

家の中からヒュリティア達が出てきた。


「お? お疲れさま、薬の方はどうだった?」


「……えぇ、完成して飲ませたわ。でも……」


ヒュリティアとグリシーヌが浮かない表情を見せる。

それは彼女達が作った薬でもダメだったという証であった。

これで万策尽きたということになる。


「ごめんね……皆ががんばってくれたのに」


辛いだろうにプルルは俺達に労いの声を掛けてくれた。

それは震える声からもわかることだ。


「プルル……」


「そんな顔をしないでおくれよ、

 ディレジュさんのお陰で僕にはまだ時間があるんだ。

 それよりもBBQをするんだろう? お腹が空いたから早く焼いておくれよ」


そう言って彼女は笑みを作った。


いかん、こんなことで涙を見せてしまっては。

たとえ万策尽きたとしても、俺は諦めない!

更なる方法を模索しなくてはっ!!


「わかったんだぜ、おいぃぃぃぃぃぃぃっ! おまえら!

 BBQをおっぱじめるから、人を掻き集めろぉぉぉぉぉぉっ!!」


「わぁい!」


俺の言葉で皆が一斉に人を掻き集めに行った。

掃除に向かった連中はもちろん、スラム地区に住む方々も呼びに行ったのだ。

やはりBBQは皆でわいわいしながら食べるに限る。


集まった人数はクラスの皆も含めて二百人近くになった。

だが、このフレイベクスの無限お肉の前では無力っ!

全員ことごとく満腹にして差し上げるわっ!!


この時だけはプルルの病を忘れるかのように

フレイベクスの無限お肉を焼き続けた俺であった。

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