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食いしん坊エルフ  作者: なっとうごはん
第九章 神級食材を求めて
414/800

414食目 魔吸草マラジャク

◆◆◆ エルティナ ◆◆◆


ビーストフォレストの入り口付近にて待機していた皆と合流し、

俺達は薬の材料となる野草探索に乗り出した。


ただ、この森の敷地は非常に広いので

お目当てのを野草一つずつ探していては日が暮れてしまう。

そこで皆の出番というわけだ。


組み慣れたパーティーに分かれて

効率良くビーストフォレストを探索するのである。

彼らくらいの戦闘能力を持った者が六人もいれば

余程のことがない限り不覚を取ることもないし、

野草の見落としも低くなることだろう。


やはり、こういう時は数の力に頼るに限る。

小人数ではどれだけ時間が掛かるかわからないからだ。


更に今回はモモガーディアンズ全員が参加している。

つまりは我がビースト隊も参加しているということだ。


「わんわん!」「きゅ~ん、きゅ~ん」「へっへっへっへ……」


特にわんこ達は初めて見るであろう森に興奮を隠せなかった。

既に落ち着きのないダックスフントの『もも』と『はな』が

ちょろちょろと動き回ってぶちまるに連れ戻されるという案件が発生していた。


逆に落ち着いているのはゴールデンレトリーバーの『ざんぎ』だ。

時が経ち子犬だった彼も立派な体格に育っており、

今ではもう俺を載せて走ることも難なくやってのける。


逆ににゃんこ達はやる気がないのか昼寝をする場所を探している。

彼らが夜行性ということもあるが、もう少しやる気を見せてから寝てほしいものだ。

特に黒猫のすみやきは既にうとうとしており、今にも丸くなりそうである。

まぁ、もんじゃが、がんばって探してくれるようだからいいか。


ここに来ていないペルシャ猫のぶぶづけであるが、

実は彼女は子供を産んで現在は子育て中であるため

桃先生の大樹にてお留守番をしている。


子猫は彼女にそっくりのペルシャ猫と虎柄の猫が産まれていたので、

恐らくはもんじゃとの間に生まれた子供達なのだろう。

心なしか、もんじゃの顔が凛々しく見えたのはそのためだったと推測できる。


ちなみにブッチョラビのひろゆきは置いてきた。

別にこの戦いについてこれないわけではない。

あいつは野草を見つけ次第食っちまうからだ。

意外なことに、あいつはベジタリアンであり肉を食わない。


最近はイシヅカ農園の野菜が気に入っているようで、

桃先生の果実とイシヅカ農園で採れた新鮮野菜を交互に食べる

ということにハマっている様子であった。


また、探索ということで桃先輩に協力してもらおうと思ったのだが、

現在彼は俺がやらかした事案で忙殺されている真っ最中である。

なんでも俺の活躍が桃アカデミーの中央ロビーに設置されている

巨大スクリーンに映し出されてドえらい騒動になっているそうだ。


どうして映し出されたかは不明であり、普通ならありえないことだという。

ぶっちゃけ、いち桃使いであり一人前に毛が生えた程度の俺の活躍が

皆が見るであろうスクリーンに映し出されたくらいで

何故大事になっているのか……これがわからない。


はっ! あれか!? 全裸で動き回っていたのが問題にっ!?

うごごごご……あれは事故だ! 俺は悪くねぇ!


というわけで暫くはまともに連絡を取ることもできないそうだ。

代わりに何かあったらマトシャ大尉か

トウミ少尉という桃先輩に頼れと言われている。


彼女らは桃先輩の同僚であり、

加えてマトシャ大尉はムセルをサポートしてくれている恩人でもあった。

いざという時は彼女達を頼らせてもらおう。


身魂融合をするのであればトウミ少尉ということになろうか?

マトシャ大尉はムセルのサポートで忙しいだろうから。


「どうしたんだい? エル。難しい顔をして」


「ん? あぁ、何でもないよ、エド」


魅惑の王子様のエドワードもこの探索に参加している。

このために今日の分の課題を、あの狂気の宴が終わった後に終わらせたそうだ。

そのせいもあってか、あまり寝てないらしい。


だが、どういうわけか彼の顔には疲労の色がまったくなく、

寧ろお肌もぴかぴかのつるっつるである。いったい何があった?


「さて、それじゃあ予め決めておいたパーティーに分かれて探索を開始してくれ。

 くれぐれも森の獣達に危害を与えないようにな。

 まぁ、今の俺達なら威嚇するだけで相手が逃げ出すだろうけど」


今回はいつものパーティーとは別に二組ほど別動隊ができあがっている。

一つは俺とエドワードとビースト隊の混成部隊。

もう一つは……プリエナと愉快な下僕達である。


あの傭兵のおっさん達がちゃっかりついてきているのだ。

無論、プリエナを陰から護るためであるのだが、

陰から四十名ものむさいおっさんに「はぁはぁ」言われながら見守られるのは

精神的にくるものがあるので急遽もうひと『部隊』を編成したのである。


「我らの命の代えても女神プリエナを護るぞ!!」


「「「「「オォォォォォォォォォォォォォ!!」」」」」


野太いおっさんの声が静かな森の中に響き、

それだけで木の枝の上でまったりとしていたリス達が驚いて逃げ出してしまった。

後で彼らに謝っておかなければ。


そんな彼らに当の女神は嫌な顔一つもせずに「よろしくねぇ」と微笑んだ。

当然、彼らはその笑顔に悶絶することになる。


「ぬふぅ」「プリエナたん……はぁはぁ」「ほっ、ほぉぉぉぉぉぉぉぉっ!!」


どうすればいいんだ、こいつら。

もう爆破処理してしまった方がいいのだろうか? 悩むところだ。

まぁ、取り纏め役のルバールさんが、

今のところしっかりしているようだから大丈夫だとは思うが。


「では出発だ! じゃあ、ルドルフさん、ゆっくりしていってね!」


「すみません、しかし本当に探索を手伝わなくてもいいのですか?」


ルドルフさんは家族と過ごすように命じておいた。

折角近くまで来ているのに会えないというのもなんだと思ったのだ。


「いいのいいの、人手が足りなかったら

 そこでこっそり見ているおっさん達に手伝ってもらうから」


「おっさん言うなし」


「あらあら、バレてたのね~」


バレバレもいいところである。

というか、フォリティアさんなどはもう隠れるつもりもないらしい。

さっきから大きなお尻が丸見えであったのだ。


おっさんと言われて不服そうなグレイさんの目の下には

大きな隈ができあがっている。いったい何があったのだろうか?


「あ~もう、今日はホルスート隊長がいないからサボっちまうかな。

 締め切り直前まで粘って原稿書き上げたと思ったら即任務って、

 俺を殺しにかかってるだろ? もう俺はがんばった、寝る、寝ちゃう!」


どうやら彼は過酷な戦いを終えた後にすぐ仕事に駆り出されたらしい。

まぁ、今回は危険なことはないだろうし皆も付近にいる、

彼がいてもいなくても問題はないだろう。

それにそんな状態じゃ満足に仕事なんてできるわけもない。


「グレイさんに命じる」


「うぇっ!? ははっ!」


今まさに寝っ転がろうとしていた彼に俺は命じた。

慌てて姿勢を正す彼を見て少しばかりくすりとしてしまう。


「グレイさんに寝る系のクエストを奢ってやろう。

 フォリティアさんもまったりしていってね!」


「うふふ、だって、グレイ」


そう言うとフォリティアさんは木の根元に腰を下ろし太ももをぽんぽんと叩いた。

それを見たグレイさんは感涙し、すぐさま彼女の膝枕の御厄介になったのだった。


「ありがたや、ありがたや……ぐぅ」


そう呟いていた彼だったが、その僅かな時間で寝息を立て始めた。

相当に疲れていたのだろう……というか、そんな状態でよく任務に就いていたな。

寧ろ呆れを通り越して感心するぜ。


「んじゃ、いってくるよ」


「えぇ、気を付けて。ヒュリティアもしっかりね~」


「……うん、わかった」


こうして俺達はフォリティアさんに見送られて森の探索に向かった。

尚、ゲンゴロウさんは丁度仕事が終わったらしく、

彼女らと一緒にお昼寝と洒落込むそうだ。

これで別のハンティングベアーに通報されることはないだろう。


尚、アルのおっさん先生は単独行動である。

皆の近くを付かず離れずで行動するそうだ。


恐らくは希少な薬草をこっそり採取したいのだろう。

なんせ、ここには『アレ』が元気になる薬草が生えているらしいからな!


◆◆◆



森を探索して三十分ほど経過しただろうか?

時間にして丁度お昼時だろうと思われる。

今回は長丁場になることが予想されていたので

各自食事を持参するように伝えていた。


「おんおん!」「きゅ~ん、きゅ~ん」「わうぅ~ん」


地中に埋まっていたトリュフを発見するという

大活躍を見せたわんこ達もお腹が空いたようで、

声を揃えて「ご飯をください」と懇願してきたではないか。


あ、ちなみにトリュフは『白』でございました。

ふっきゅんきゅんきゅん、後日みんなと一緒に美味しくいただこう。


「これこれ、情けない声を出すんじゃないぞぉ」


活躍したご褒美として〈フリースペース〉より、特別に作った

自家製ドックフードを取り出し各自の受け皿に移して与える。

そうしないと力の差で食べることのできない子が出てくるからな。

弱肉強食の世界は厳しいのである。


このドックフードは茹でて潰した大豆と桃先生の果実、

そして少量の塩を混ぜ込んで作った物だ。

どういうわけか、あま~い桃先生の果実をかなり混ぜ込んでいる

にもかかわらず出来上がった物には甘みが殆どしないのである。

まだまだ桃先生には隠された秘密があるらしい。


尚、便宜上ドックフードといっているが、にゃんこにもこれをあげている。

これもうわっかんねぇな?


ちなみに人が食べても問題ない。

食べた感じは例えるならば『タルタルステーキ』であろうか?

牛、または馬肉を生のまま食す料理である。


これにオリーブオイル、食塩、コショウで味付けし、

タマネギ、ニンニク、ケッパー、ピクルスのみじん切りなどの薬味と卵黄を

添えて混ぜ込み食するとまんまそれであったのだ。

しかも『へるすぅい~』であり間違いなくダイエット料理である。


これをヒーラー協会いちのぽっちゃりであるエミール姉に勧めたところ……

『これで勝つる! わたしは念願のくびれを手に入れるぞぉぉぉぉぉっ!』

と息巻いていたが結果は残酷なものであった。


このレシピは桃先生の大樹が生える前から存在しており、

かなり前に彼女に教えてあげたものだ。

それゆえに、どうか察してほしい。


『へるすぅい~』も『くいすぎ~』には勝てなかったよ……と。


ビースト隊にご飯を上げた後に、

俺達はお手軽な『おむすび』と鶏のから揚げを口に運んでいた。

案の定、エドワードは弁当を持参しておらず、

俺のお手製の料理を食べる気満々であったのだ。

予想どおり過ぎて少しばかり笑ってしまった。


さて、この『おむすび』はシンプルに塩を振っただけのものだ。

そして、わざわざ冷ましてから弁当箱に詰めてある。


この冷えた米の魅力に気付いた者はわかるだろうが、

温かかった時よりも米の甘みが増えているように感じられるのだ。

また、適度な加減で振った塩の効果により甘みが増幅される。

更には冷えて固くなったことによる歯応えも追加され、

噛む喜びが生まれるのである。


俺の記憶の中には、この冷えた飯に塩を振り掛け

清酒のお供として食べていた記憶がある。

それがまた清酒に絶望的に合うのだ。

同じ米が原料だから当たり前といえば当たり前であるが。


逆に唐揚げは熱々の出来立てを弁当箱に詰めて、

すぐ〈フリースペース〉に放り込んだ。

唐揚げは出来たての熱々を「はふはふ」しながら口に運ぶに限る。

しかし、その行為は溢れ出たジューシーな肉汁で口の中を焼くことになるだろう。

そこで『冷えた』おむすびが活躍するのである。


口の中を焼く肉汁の中に颯爽と飛び込む冷えたおむすび。

彼は口の中を優しく冷やし、更には口の中のから揚げと強力なタッグを組み

我々の舌を満足させてくれる。米と肉……満足しないわけがない。


「はふはふ……あふい。んぐっ……ぷはぁ! やっぱり、温かい食事は最高だよ」


「まだ沢山あるから慌てなくてもいいぞぉ」


普段は温かい食事を摂れないエドワードは

ここぞとばかりに温かい唐揚げを豪快にも手掴みで口の中に放り込んでいた。

もちろん、おむすびも手掴みである。


彼付きの教師レイドリックさんが今の彼を見たら卒倒しそうだ。

いくら英才教育を受けていても美味しい唐揚げのとおむすびの前には

無力であるという証明であろう。


そうこうしているとエドワードが喉を詰まらせて苦し気な表情を見せた。

このことをあらかじめ想定していた俺は

水筒から桃先生のジュースをコップに注ぎ彼に手渡す。

コップを受け取ったエドワードはそれを一気に飲み干した。


「ぷはぁっ、苦しかったよ」


「エドは、あわてん坊さんだなぁ」


だが彼の気持ちもわからないでもない。

二~三噛みしてごくんと飲み干すあの快感は確かに抗い難い。

特に『んぐんぐ』と喉を通るご飯の感触には感動すら覚え癖になってしまう。


だが、その結果として高確率で喉が詰まる。

残念ながら、よく噛んで食べるのが正しいのだろう。


俺はそこら辺に生えていたレタスで唐揚げを包み口に運ぶ。

ここは人の手が入らない自然の宝庫、野菜もよく探せばそこいらに自生している。

フィリミシアの農家の人々が手塩にかけて育てた野菜とは違い、

野性味に溢れた味が口いっぱいに広がって俺の新たな味覚を開発してゆく。


これはこれでありだ。

この野生の野菜達を皿に載せてドレッシングを掛けて食べれば

更なる味覚を開拓できることだろう。

人の手ではなく大自然が育てた味だ、

我々の想像を超えたものになるかもしれない。

目的の物を手に入れて時間があれば野菜達も収穫してゆこう。そうしよう。


「はぁ……美味しかった。ごちそうさま、エル」


「おそまつさまなんだぜ」


ポンポンと膨れた腹を擦り大の字で寝っ転がるエドワード。

こう言うところはやんちゃ坊主している。

その様子を見ていたビーストどもが我先にと

エドワードに纏わりつき一緒に寝っ転がった。


これが本来の彼の姿かどうかはわからないが、

とてものびのびと過ごしていることだけはわかる。

こういう時くらいは何も言わないでおいてやるのが人情というものであろう。


本来はこのまま少しばかり、まったりとしたいところであるが、

今回の俺達の目的はプルルの薬の材料を手に入れることである。

よって腹が落ち着いたところで探索を再開させることになった。


俺達が手に入れる物は入手最難関である吸魔草『マラジャク』。

これは近付くだけで魔力を吸い取られるという危険な植物であるため、

アホみたいに魔力がある俺が採りに行くことになったのだ。

多少吸われても平気であることが選抜理由である。

そしてエドワードは俺の護衛だ。


本来の護衛であるザインには思いっきり頼みまくって代わってもらったらしい。

ザインもエドワードの実力は知ってはいるが、エドワード自体も護衛対象である。

したがって、なかなか首を立てには振らなかったそうなのだが……

どういうわけかこうして交代している。


いったい、何があったんだぁ……?


暫く森の中を進むと緑の匂いが一層濃くなってきた。

鬱蒼と生い茂る木々が行く手を遮るように生えている。

それは森の生き物達を護ろうとする大自然の優しさのようでもあった。


俺達はこの向こうに『マラジャク』があると確信する。

身軽なもんじゃが一足先に木々の向こう側に行き、

暫くすると「にゃ~ん」という鳴き声が聞こえてきた。

どうやら当たりらしい。


身体の小さな、ももとはな、すみやきは木の隙間から容易に侵入できたが、

俺とエドワード、そして体の大きなざんぎは

侵入するための場所を四苦八苦しながら探した結果、

ようやく木の根が絡まってできた小さな木のトンネルを探し当て内部に侵入した。


が……この時、アクシデントが俺を襲うことになる。


「うおぉ……おケツがハマりやがった! エド、引っ張ってくれい」


「以前のエルだったら簡単に通れたのにね」


彼に強引に引っ張ってもらい、ようやく通過することに成功する。

まったく、余計な部分が育ってしまって困ったものだ。


この行く手を遮る木々だが魔法で吹き飛ばすわけにもいかない。

動物だけではなく植物もグレオノーム様の護るべきものであるからだ。

俺も意味なく吹き飛ばすのは躊躇われる。

それに飛び火でもしたら大惨事になるからな。


木のトンネルを抜けた先には紫色の花を咲かせた植物が群生していた。

といっても数はそれほど多くはない。

パッと見で五~六十といったところであろうか。


可憐な花は見る者を和ませ、そこから放たれる香りは人を無性に惹き付ける。

見た目はバラに近いが棘はないようだ。

だが、それよりも凶悪なものを持っているのは間違いない。


そこから少し離れた場所に静かに座している者を確認する。

白い体毛に凛々しい顔立ち、俺がよく知る存在がそこにいた。


「ふきゅん、とんぺー!? なんでここにいるんだ?」


「おんっ」


その隣にはもんじゃ達がいる。

どうやら、花に近付くのを止めてくれたようである。

もんじゃ達は好奇心の塊だから注意をしていてもやらかしかねない。


彼が何故ここにいるかはさておき、この花がマラジャクで間違いないようだ。

とんぺーに礼を言いムセル達を降ろした後、俺はその先に踏み込んだ。


なるほど、確かに魔力が吸い取られている。

感覚としては指で背中をなぞられている感じだ。

だが思ったほど吸収される速度は早くはない。

これは距離が離れているからだろうと推測した。


俺は更に花に近付いてみることにする。

すると今度は容赦なく魔力を吸い取り始めたではないか。

どうやら先ほどの吸収は注意のようなものだったらしい。

この吸収速度は「これ以上近付くと吸い殺す」という警告なのだろう。


「エル! 大丈夫なのかい!?

 青白い光……魔力が花に吸収されていっている!」


「あぁ、魔力を吸うって話は本当らしい。だが、この程度なら問題ないぜ」


心配するエドワードを落ち着かせるために俺はあえて笑顔を見せる。

といってもこの程度の魔力吸収など片腹痛い。

これでは一般人は殺せても俺を殺すことはできやしないのだ。


俺は更に花へと近付いた。

流石にマラジャクも本気を出したのか物凄い速度で魔力を吸収し始める。

どうやら俺の魔力の味を覚えたらしい。


なるほど、これなら一般人はおろか魔法使いも危ない吸収速度だ。

魔力が過剰になっているプルルでも五分持たないだろう。


だが……相手が悪かったなぁ。


俺はお構いなしにマラジャクへと接近してゆく。

すると不思議な現象が起こった。

何やら話し声が聞こえてきたのである。


『バ バカナ! ワレワレニ チカヅケル イキモノガ イルトハ!』


『モット、マリョクヲ スエ! ツマレテシマウゾ!』


どうやらマラジャクの声が聞こえているらしい。

この大きなお耳はいよいよもって声なき者の声も拾うようになったようだ。

耳が良過ぎるのも考えものである。


一致団結して俺の魔力を吸い上げるマラジャクであったが、

その内の一輪が遂に脱落した。


『オ、オレハ モウ ダメダ オレニ カマワズ二 スイ ツヅケロ!』


『トマーッシュ! ヨクモ ヤッテクレタナ! ユルサン!』


ぶっちゃけた話、俺は何もしていない。

ただ単に、あちらさんの自爆である。

だが、これでマラジャクには魔力吸収量に限界がある、ということが判明した。

量的には一輪で一般的な魔法使い五人を殺す量であろうか?


ハハハ、そんな量では全く足りんよ!

俺を殺したければ、もっと繁殖するんだなぁ!!


『アァ! オデロモ ヤラレタ! ナンナンダ コイツハ!?』


『ク、クルゾ!』


『マリョクガ ケタ チガイダ!

 ダガ ミンナ アキラメルナ! スイツヅケルンダ……グハァ!?』


『オリファーサン マデ ヤラレタ! クソッ!』

 

なんだか大魔王にでもなった気分である。

彼らを大人しくさせるには強烈な精神ダメージを与えるのが有効的だろう。

そこで俺は通じるかどうかわからないが、桃力を載せて力ある言葉を放った。


『オレノ マリョクハ ゴジュウサンマン ダァ……!!

 スイキレルナラ スイキッテミロォ! マラジャク ドモォ!!』


実際は限界を越えたことによって更に魔力は増加しているようだ。

把握できる桃先輩が忙しいため、詳しい魔力量は不明であるが。

ちなみに、魔力五十三万は

おおよそ一般的な魔法使い『三千五百人分』の魔力量である。


『ゲェェェェェェェッ!? ゴジュウサンマン ダトォッ!!』


『スイキレル ワケ ネェダロ! イイカゲンニ シロ!!』


『モウダメダァ……オシマイダァ……』


これにはマラジャク達も精神をへし折られたらしく、

しなしなとしおれてしまった。枯れてはいないようなのでたぶん大丈夫。


『クックック ハイシャニハ シ ヲ!』


気分はまさに大魔王そのものである。

薬に必要な分である三輪を手折り、俺はその場を後にした。


きみ達が俺の魔力を吸いきるには……未熟!


「目的は達成したんだぜ」


「うん、なんだかマラジャクが可愛そうになってきたよ」


エドワード達の下に戻った俺は戦果をお披露目した。

俺の手には可憐な花を咲かせたマラジャクが三輪収まっている。

この状態では魔力を吸収しないらしい。

やはり根の部分が本体なのだろう。


目的を達成した俺達は皆と合流するため

フォリティアさん達が待つ場所へと移動を開始した。

もちろん、ちゃっかり野菜達を回収することも忘れない。


きっと他の皆も目的の野草を入手していることだろう。

俺達も予想より多く手に入った野菜達を土産に合流場所に急ぐのであった。

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