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食いしん坊エルフ  作者: なっとうごはん
第九章 神級食材を求めて
410/800

410食目 燃え上がれヒーラー魂

◆◆◆ エルティナ ◆◆◆


「ほぅ……それは大変だな」


「他人ごとだと思って、気楽に言ってくれるじゃないか」


今日はじぃじぃとセミが鳴きまくる真夏日だ。

むせ返るような暑さの中を登校してきた俺は

外の大気と遮断されて、ひんやりとしている教室内に到着し一息ついていた。

そのようにまったりとできるひと時であったのだが、

教室に入ってきた奇妙な人物を見て

平穏なひと時は脆くも崩れ去ってしまったのである。


その人物とは誰でもない俺達のクラスメイト、プルル・デュランダだ。

彼女の姿を見て俺はもちろんのこと、

その場にいたクラスメイト達も大変に驚いた。


ライオットに至っては「敵かっ!?」とか言いながら

輝ける獅子『シャイニングレオ』に変化している始末だ。

完全に臨戦態勢である。


あわててプルルから説明があったが、

早とちりな連中は彼女の話を聞かずに

ライオットを先頭として窓から外へと飛び出していった。

ここは校舎の二階に位置するが連中はお構いなしに飛び出してゆく。


おまえら人の話はきちんと聞けって言われているだろうが。


暫くすると「ぬわ~」という悲鳴が聞こえてきたが

俺はこれを華麗にスルーする。

たぶん、一緒に飛び出していったシーマが予想外に高くてビビった挙句に

地面と濃厚なキスを交わしただけだろう。

彼女なら何事もなかったかのように帰ってくるはずだ。


話によるとプルルはゴーレムギルドで俺と別れた後、

ドゥカンさんの手伝いをするために工場に残ったのだが

暫くして『魔力過多症』を発症させてしまったそうだ。


この『魔力過多症』の情報はヒーラー協会の二階に存在する図書室の資料に

ほんの僅かな情報が記載されていたはずだ。

極めて珍しい先天性の病気であるそうで

書かれている情報がとても少ないのである。


たしか、レイエンさんの『魔力多消費症』と対になる病だったはず。

『魔力多消費症』とは真逆の症状で、

やたら無暗に魔力が生産されてゆくというものである。


普通であれば魔力あり過ぎて俺TUEEEEEEEE!

とでもなりそうであるが、そんなに美味い話があるわけがない。

仮にも病気とされているのだから。

しかも膨大な量の魔力を溜め込むには、

それに相応しい肉体いれものが必要になるのだ。


魔力というものは生命活動に必要不可欠なものであり、

この世界の生き物にとっては切っても切れない存在である。

身体を維持する上でも重要な要素であるのだが、

水と同様に身体に溜め過ぎると不具合が発生するのだ。


え~っと、確か……溜め過ぎると爆発する、だっただろうか?

パッと目を通した程度なのであまり覚えていない。

後できちんと目を通しておこう。


『魔力過多症』は現在のところ治療手段がないらしく

不治の病とされていたはずである。

つまり、プルルはいつ死んでもおかしくない

最悪の病に侵されているということだ。


これを聞いて黙っていられるほど俺は大人しくはない。

カーンテヒルのヒーラーとは医者のことを差すのである。

俺の熱きヒーラー魂が燃え上がってきた。


必ずプルルの病気を治してみせる! じっちゃんの名に掛けて!

じっちゃんの名前、わかんないけどな!!


だが実際に『魔力過多症』の患者を見るのは初めてだ。

ヒーラー協会の二階にある図書室の資料に『魔力過多症』の患者には

魔法による治療を避けること、と記されていた。

恐らくは治癒魔法による魔力が

限界まで膨らみ続ける患者の魔力に追加される形になるからだろう。


通常であれば少なからず人の魔力は消費され続けているので、

治癒魔法を使用しても患者の魔力が許容限界を越えて爆ぜることはない。

よって、問題なく治癒魔法による治療行為ができるのだ。

そもそも普通の人間なら魔力回復量なんてたかが知れているからな。


「大変なことになったな、プルル。

 でもそれなら魔法を使って魔力を消費し続ければ大丈夫なんじゃないのか?」


プルルを心配したキュウトが彼女に声を掛けてきた。

戦場を生き抜いた彼は、なかなか精悍な顔つきになってきたと思う。


「それだと脳に負担が掛かり過ぎて、かえって危ないらしいよ。

 それに魔法って使えば使うだけ魔力が増えてゆくって

 つい最近に魔法協会で発表されたそうだから」


「え、そうなのか? 言うことがコロコロ変わるな、あいつら」


俺もキュウトの言い分には賛同であった。

だから、所属している魔法使い達に呆れられて

『魔導協会』に分裂されてしまうんだ。


補足だが『魔導協会』は良識人が揃っているので、

近年はそこに加入する若手の魔法使いが多いらしい。

尚、アルフォンスのおっさん先生は『魔法協会』所属だ。

すぐに転属してどうぞ。


「にしても、その格好でいないとダメだなんて大変だな?」


心配そうな表情をしたキュウトがプルルに近付くと、

一瞬にして可憐な少女キュウトちゃんに早変わりしてしまった。

相変わらず八歳の肉体とは思えない発育の良さである。


「きゅおん!? 近付いただけなのに女になった!」


「あー、ごめん。今、僕は常に魔力を放出しているから」


そう言ったプルルの姿は『GDデュランダ』を身に纏った状態だ。

背中のハッチの空いたランドセルからは忙しそうなイシヅカの姿が見える。

どうやら彼が魔力をコントロールしているらしく、

魔力の青白い光が見えないように排出しているようだ。

授業中に大量の青白い光を出されたら黒板が見えなくなるからだろう。


まぁ、俺は最前列の席だから関係ないが。


「どうやら僕って一般的な魔法使いより魔力量が多いらしくて、

 魔力を吸収するアミュレットだけじゃ追い付かないらしいんだよ。

 そこで困り果てたお祖父ちゃんがドクター・モモに相談したところ、

 デュランダを使って魔力を放出してみてはどうだ、

 って持ちかけたらしいんだよ」


「ふきゅん、それだとイシヅカが大変になるな」


「後、俺もな……また気を練らないといけないのか」


「そこなんだよねぇ、この子には苦労させたくないのだけど。

 あ、キュウトは可愛いんだから、そのままでいいんじゃないのかな?」


「きゅ……きゅおん。これは訴訟問題になる」


「そんなこと言ってる場合じゃないだろ?

 あ、不審人物がいたから、ついでにぶっとばしておいたぜ」


ライオット達が大量の布きれを手に凱旋を果たした。

それは白、黒、赤とさまざまな色をしている。


「ふん、手応えのない悪党だったな。

 この元上級貴族のシーマ相手には役不足だというものよ」


やはりシーマは至ってピンピンしている。

彼女にダメージを与えられる者はユウユウ閣下くらいなものだろう。

まったくもって『元上級貴族』とは謎の多い生物である。

そんなことよりもライオットの持っている物はなんだろうか?


「ライ、おまえは何を拾ってきたんだ?」


「ん? ぶっとばしたヤツが持っていたから回収してきた」


そう言って俺に手渡したのは紐のような物だ。

不審に思い彼から受け取ると俺はゆっくりと慎重に広げていった。

な、なんと! それは……!!


「なるほど、見事なおパンツだと感心するがどこもおかしくはないな」


「……紐じゃなかったのかよ」


「きゅおん、大人の女ってこんな物を履いているのか……恐ろしいな」


彼が回収してきた物は女性用のおパンツであった。

サイズ的には大人用だろうか?

だがそれは、いわゆる『勝負下着』に分類されるものであった。

かなりセクシーなものであり、子供が目にしてはいけない危険なものだ。


俺はエレノアさんやらミランダさんに、

我がヒーラー協会の受付嬢ペペローナさんがこれでもか

といった感じで身に着けているのを脳内にメモリーしており

極めて高い耐性が付いているので特に問題はない。

だが他の女子達は顔を赤らめて、その問題の下着を興味深そうに眺めていた。


きみ達にはまだ早い、お子様パンツで我慢するんだ。

こんな紐パンを子供が着けていたら……あ、いやまて、

ユウユウ辺りが身に付けていても違和感がないな。後、お尻女王。

マジパねぇっす、ユウユウ閣下とお尻様。


まぁ、この議題は後回しでもいいだろう。


恐らくはライオット達がぶっとばしたのは下着泥棒だったに違いない。

こんな朝っぱらから学校に忍び込むとは大した自信である。

警備ゴーレムに発見されなかったことから、

なかなかの腕前を持った人物だったのかもしれない。

まぁ、それを上回る変態能力を持ったチャイルドに見つかった不幸を呪うといい。


「ふきゅん……取り敢えず、

 このスケスケの紐パンはメルシェ委員長に履かせてみようか」


「光画機でメモリーしてもいいさね?」


「許可する」


「許可するじゃありません! 犯人と一緒に衛兵に突き出してください!!」


俺とネズミ獣人の少女アカネがそのようなやり取りをしていると、

我がクラスのお尻女王メルシェ委員長が顔を真っ赤にさせて抗議してきた。

彼女に似合うであろう黒色のスケスケおパンツをチョイスしたというのに

何が不満だったのだろうか?


「それに、あなた達だって十分履けるじゃないですか!」


「聞こえない」


「聞こえないさね」


彼女のカウンター攻撃に俺達はそっと耳を閉じた。ぱた。

こんな物を履かされたら、俺はきっと吐血して果てるだろう。


「あー、そういえば、エルもだいぶ大きくなってきたもんな」


「おいぃ……ライ。

 俺はおもえが言っていることが、よくわからないんですがねぇ?」


と誤魔化してはいるが彼の言っていることは事実である。

赤ちゃんから急成長を果たした俺であったが、

あまりにも桃力が多過ぎたのか

余計な部分がふっくらと盛り上がり始めていたのだ。


身体も予想以上に大きくなり今や着れる服が殆どない。

着れるのは成長を見越して大きめのサイズで購入した制服くらいなものである。


それに危機感を抱いた俺は、ここ最近のヤツらの横暴な振る舞いを抑制すべく

さらしやら何やらを巻いて誤魔化すことにした。

ただ、ケツはどうにもならない。

そこにさらしを巻いたら変な歩き方になってしまうからだ。


幸いにもユウユウ閣下やキュウトちゃん、

八歳にして爆乳のララァにまでは至っていないので安心している。

だが、ここで油断してはいけない。俺の理想はスリムボディなのだ。

理想でいえばティファ姉くらいのスレンダーボディーを目標にしている。


おっぱいは他人の物だからこそ楽しめるのであって、

自分のおっぱいなど、ただの脂肪としか認識できない。

おケツもまたしかりである。

この考えにはアカネもきっと賛同することであろう。


「あ、いたいた。私の下着を返してちょうだいな」


「ふきゅん、スティルヴァ先生も被害に遭っていたのか?」


我がクラスのエロい担当。

もといエロい副担任スティルヴァ先生がいつものビキニアーマーで教室に現れた。

プルンプルン揺れるおっぱいとおケツがまぶちぃ。

流石は外見だけは超一流のエロフだな。


「そうなのよ~、私の貴重な下着を取られたら堪ったもんじゃないわ。

 ……あった、あった、これこれ。

 はぁ、よかったわぁ。私、今この一着しかもってないのよ」


「おいぃ……またギャンブルで負けて質に入れたな?」


このダメティーチャーは、またしても賭け事をしてボロ負けしたようだ。

そんな、可愛らしくてへペロをしても誤魔化せないぞ。


「さ、さぁて! 朝の会議に行かなくっちゃ! それじゃ、ありがとね!」


ダメエロティーチャーは俺達の視線から逃れるように、そそくさと去っていった。

まったく……どうしようもない大人だ。ある意味で反面教師であるのだが。

きっと彼女のお陰で賭け事に手を出すヤツはこのクラスにはいないだろう。

あんな無様な姿にはなりたくないからな。


「まぁ、それは置いといて……プルルの症状をどうにかしないとな」


「ありがたいけど、治癒魔法で治せないから無理だよ。この病気は……」


「誰が魔法で治すと言ったんだ?

 この病は魔法による治療ができないことくらい知っているぞ」


「え、知っているの!?」


資料で治癒魔法は使えないことはわかっている。

であるなら別の方法を考えろってことだ。


「ふっきゅんきゅんきゅん……大丈夫だ、プルル。

 幸いにも我がクラスにはスペシャリストが多く揃っている。

 魔法がダメでも方法はいくらでもあるのだぁ。

 イシヅカ、魔力の放出は完了したか?」


俺の問いかけにイシヅカは親指を立てて答えた。流石に仕事が早い。


「よし、取り敢えずはGDを脱いでくれ。

 魔力が一瞬にして回復することはないだろうから暫くなら大丈夫だろう」

 

「な、なんだか嫌な予感がするよ」


そういいつつもGDを脱ぐ準備をするプルル。

サブコクピットから降りたイシヅカは机の上で背筋を伸ばした。


彼女が『イジェクト』と呟くとGDデュランダは光の粒子に姿を変えて

マジックカードに収容されていった。

胸の辺りにマジックカードが浮いているところを見ると

カードは胸部装甲の中に収納されているのだろう。


プルルはマジックカードを手に取りスカートのポケットにしまい込んだ。

このカードは金属製なので、そう簡単に折れ曲がったり傷ついたりはしない。

何を隠そう、使われている素材は希少金属『ライトフェザー鉱石』であるのだ。

それゆえにお値段が高いことになっている。

一般市民には縁がない魔導器具の一つだろう。


尚、ティアリ王国を救った報酬として

リマス王子から個人的にライトフェザー鉱石を百キログラムほど授与されている。

俺はその全てをガンズロックに預け加工してもらうことにしたのだ。

暫くすれば素敵な道具の数々に姿を変えることだろう。楽しみだ。


「さ、準備はできたよ。本当に大丈夫かい? なんだか不安だよ」


「心配するな、大船に乗った気でいるんだぁ……

 よし、まずは整体から試してみよう。先生、お願いいたします」


俺はさっそく整体のスペシャリストを呼んだ。

プルルは姿勢が悪いので骨格に異常がある可能性がある。

そこでまずは骨格を正常な状態にして

魔力の流れを正常にしてみるというものである。


近年の研究結果によれば、魔力の流れが良くなることにより、

それだけ消費も良くなるということが判明しているのだ。


これは脳筋戦士の魔力貯蔵量が低いこと

との因果関係を調べたことにより判明したものである。

健康過ぎる脳筋戦士は魔力消費が異常に高く

体内に溜めることができないそうなのだ。


つまり逆に不健康な者は魔力を体内に溜め込み易いということになる。

年老いた大魔法使いの魔力が多いのはそのためだ。


……あれ? 俺って不健康なのかな?


まぁ、体質によるものもあるらしいし一概にはそう決めつけられないだろう。

この研究には、まだ未知の領域があるのだから。


俺の呼びかけに応え、一人のクラスメイトが優雅に歩み寄ってきた。


「クスクス……えぇ、よくってよ?」


スペシャリストその一、ユウユウ閣下だ。

彼女の父親が東洋の施術なるものを体得しているらしく

彼によってさまざまな技術を仕込まれているらしい。これは期待できそうだ。


しかし彼女の登場を確認した途端、

プルルは流れるような動作で後ろに振り向き駆け出した。


「ぼ、僕、急用を思い出したよっ!!」


プルルは にげだした!(バタバタバタ)

しかし まわりこまれてしまった!


「大丈夫、痛いのは『一瞬』だから」


「い~や~! た~す~け~て~!!」


一つ言っておく……ユウユウは走るのは遅いが踏み込みの速度は音速に迫る。

至近距離での逃走は不可能だと思うがいい。

それに今はなんでも試してみないことには進展しない。

治癒魔法が使えない今、全て手探りで解決の糸口を手繰り寄せるしかないのだ。


プルルを流れるような華麗な動きで押し倒した彼女は

慣れた手付きで人差し指をプルルの『いけない』部分に容赦なく突き入れた。


ずぶぅ。


「ひぎぃ」


暫し痙攣した後、プルルはピクリとも動かなくなった。

というか何故そこに突き入れたんだ?

女子達が皆そこに手を当てて戦慄しているぞ。

無論、俺もだが。


その前に整体じゃない、とツッコミたい。

ツッコんだらおなじめにあうと思うが。


ぬぽんっ、という音を立て

プルルから指を引き抜いたユウユウは首を傾げて言った。


「ん……? 間違えたかしら」


「プ、プルルゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥっ!!」


ざんねん! プルルの ぼうけんは ここで おわってしまった!


なんということであろうか、期待された東洋の医術は失敗に終わった。

我々には、まだ早過ぎたのであろうか?

だが、ユウユウはその結果には満足しておらず、

次なる施術を敢行しようとしていた。


「仕方ないわね、普通に整体することにするわ。

 まだ経絡秘孔はパパみたいに突けないようだから……そぅれ」


ごきごき、ぱぷっ、めりめりめり、ぺみゅ……ぽきゅ、ぱきぱき。


この世の物とは思えない音がプルルの華奢な身体から聞こえてくる。

その音に俺を含むクラスの女子達が戦慄した。


あ、これ、あかんやつや(確信)。


「んごぉぉぉっ!? ぷぎゅぅぅぅっ!! ほぎぃぃぃぃぃぃぃっ!?」


更にはプルルの断末魔の声を聞き、彼女達の恐怖は危険な領域に突入する。

普通に美少女であるプルルが白目痙攣をして絶叫する姿を見ることになろうとは、

この聖女エルティナの目を以ってしても見抜けなんだ。


あーっ!? プルルが絶対に晒してはいけない顔をっ!!

いかん、このままでは病気で爆発四散する前に、

ユウユウによって彼女が『Heaven』に逝っちまう!


「おまっ!? 何やってんだよ、ユウユウ。ここはこうするんだ」


メキメキメキ、ゴリュゴリュ……。


「ぴぎぃぃぃぃぃぃぃぃぃっ!? もぴょぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉっ!!」


ユウユウの無茶な整体を見てられなかったのか、

ライオットが彼女に代わりプルルの整体をおこない始めた。

だがそれはユウユウよりも過酷なものであり、

プルルの体勢はとんでもないことになっていた。

股など大開きにされていて可愛らしいおパンツが丸見えになっている。


「おまままままままっままままま! いびびびびびびびびびびっ!?」


もうプルルは乙女が発してはいけない悲鳴を上げているが彼はお構いなしだ。

それでもユウユウよりはマシなのか、幾分プルルに余裕がありそうに見える。

更に暫くすると危険極まりない表情が治まり白目痙攣は息を潜めた。

代わりに現れた真っ赤に染まった彼女の顔がなんとも艶めかしい。


「ら、らめぇ! なんか色々出ちゃう! ひ、ひぃぃぃぃぃぃぃっ!!」


「出やしねぇよ、ほら、力抜け」


「あっ、あっ、はぁぁぁぁぁんっ! くひぃぃぃぃぃぃぃぃっ!!」


「変な声出すなよ、ほら、どうだ? ここか?」


「だ、だって! うくくく……! あっ、あぁぁぁぁぁぁんっ!!」


セリフだけ聞いているとアレだが、ライオットの整体はなかなか堂に入っている。

道場の息子だけあって、色々と叩き込まれているようだ。


しっかし、プルルは身体が固いなぁ……。


暫くするとライオットの整体治療は完了した。

見事なお手並みである。


「う~ん……思ったんだが」


ライオットは自分の手を見てワキワキとそれを動かした。

そして息の荒いプルルの目を真剣に見つめる。

何か気になることでもわかったのだろうか?


その彼女は肩で息をしており大量の汗を流していた。

長い髪の毛が唇に纏わり付き妖艶な表情を見せている。

震える手で汗で額にへばりついた前髪を払いのけ息絶え絶えに返事をした。


「はぁ、はぁ……何? ライオット」


「プルル……おまえ、また尻が大きくな……」


「ふん!」


「ぶべっ!?」


プルルの怒りの鉄拳がライオットの顔面に突き刺さった。


確かにライオットは施術中にプルルのムチムチのおヒップを鷲掴みにしていた。

だがそれは整体するために掴んでいたようであるため誰も何も言わなかったのだ。

黙っていればいいものを余計なことを言うから殴られるんだぞ。

尻が大きくなったことは、わかっていても口に出すものじゃない。

特に女性にはな。


俺は顔が陥没した哀れなバカにゃんこに黙祷を捧げた。

次いでプルルの魔力を調べてみる。

調べ方は脈を調べるのと同じ方法だ。


手首に指を軽く当てて魔力を感じ取る。

この方法は魔法に携わる者であるなら誰でも知っていることだ。

難点としてはおおよその魔力量しか把握できないといったところか。


「ふきゅん……特に変化はなしか。血流は良くなっているようだな」


取り敢えずは整体による魔力の改善効果は確認できなかったようだ。

その代り血液の流れは良くなっており、

彼女の顔は代謝がよくなったことで火照っていた。

別の原因もあるかもしれないが。


「はぁはぁ……し、死ぬかと思ったのに成果なしかい。とほほだよ」


「ふきゅん、取り敢えずは骨格と魔力過多症の因果関係は認められなかったな。

 よし、次だ次。どんどんいくぞぉ」


「まだやるのっ!?」


「当然だぁ」


「おまえら~席に着け~」


次のじっけ……げふんげふん。試みをおこなおうとしたところで、

アルのおっさん先生が教室に入ってきてしまった。

プルルの治療は一旦中止である。


「ふっきゅんきゅんきゅん……命拾いしたな。続きは放課後だぁ」


「く、食いしん坊は僕を治療してくれているんだよねっ!?」


超不安そうな顔を向けてきたが

俺は間違いなく病気を治そうと奮闘している。

だが、楽しんでいないとは言っていない。


「ほらほら、席に着け」


「「はぁい」」


俺達はアルのおっさん先生に促され席に着いた。

さて、真に試すべき本命は二つ。奥の手が一つ。

出来れば本命に行き着く前に治ればいいのだが。


そんなことを考えながら授業を消化していったのだった。

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