「身の危険を感じたら」
あれから、俺は城へどうにかたどり着いた。夜でよかった、王のベランダに降りてから王子の姿に戻った時にそう思った。誰にも見られずに済んだから。
よいしょ、と呟いてベランダの扉を開ける。
鍵?鍵は外から開けたよ?
いつかの、箱を開けたときみたいに。
俺はそーっとベッドに近づき、普通の声でこう言った。
「ただいま、王。」
おやすみ中のところ悪いなぁと思いながらも、起こして報告をする。
すると、王の反応は。
「寝込みを襲うな、心臓が止まると思ったぞ。」
襲ったつもりはないけど、すみませんでした。
王は続ける。
「ストロリーが、お前を探して町に出たきり帰ってこない。明日、探しに行ってくるんだぞ。全く、世話のやける息子と召し使いだ。」
疲れたから三日ぐらい休みたかったのに…。しかし早めにランソワおばさんを探さなければ何だか不味いことになりそうだったので、俺は次の日朝食をお腹に詰め込んで、朝早くから町へと行くこととなった。
おばさんはすぐに見つかった。
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「えっと……。あの、ハイ。ランソワおばさん、スミマセンデシタ。ユルシテクダサイ。」
床に正座をして、ランソワおばさんの前でガタブルと怯えている俺。
いったい何があったのか?
それは、つい二時間前のことだった。
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町に出てきたのはいいが、どこを探せばいいのか分からなかった俺。
とりあえず、バイト先のフーリスト工房にでも行こうと思ったのでまず先にそこへ来た。
来たのはいいが。
もの凄く嫌な予感がする…!
なんと言うか、工房の中から俺の危険信号を発生させるくらいの!!
「あ、あとからにしようっ…!」
思わず口からそう出ながら回れ右をしたところだった。
バーン!!と、工房の扉が開け放たれたのだ。
恐る恐る振り向くとそこには───!!
鬼のような形相のランソワおばさんが立っていた。
ああ、なぜだろう。
俺がいくら化物でも、この人には絶対勝てる気がしない。
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そして、今に至る。
「まったく!!エリネさんが“もしかしたら強盗のあとを───!”などと言ったりするものだから心配していたのですよ!?今の今まで“迷子”とはどういう事ですか!!」
そう、俺は正直に
「強盗を潰しに行ってました!」
とは言えるわけもなく、
「町で道に迷ってました。」
ということになっているのである。
それはそれで怒られたけど。
「あの~。すみません、ランソワさん。俺、今日訓練の日なんですけど…。」
そして、俺の横で同じく床に正座をして、弱々しく手をあげたのはアレグムである。
そんなアレグムに、おばさんからの怒声が降り注ぐ。
「いいえ!!貴方もあなたですよアレグム団員!あなたが居ながら、なぜここを守れなかったのですか!訓練など必要ありません!!」
「いやいやおばさん!アレグムは訓練しないと、まだ新米なんだし!」
「いいえ、王子含めアレグム団員は私が鍛えます!!」
「「えぇ────!?」」
と、こんなやり取りがさらに二時間弱続いたのだった。
アレグム、おばさんの訓練で死ななきゃいいけど…。




