「むかーし、昔の事じゃった…」
「ごちそうさま。」
「…。」
俺は夕食をキレイに食べ終わり、フォークとナイフをテーブルの上に置いた。
今までにないくらい、平和な夕食だったと思う。王は緊張してて手をつけてなかったけど、俺が一言
「ちゃんと食べないと話さないよ。」
と言ったらちゃんと食べた。
さて、そろそろ話すか。
俺は深呼吸をして、頭の中で話すことを素早く整理した。王は一言も聞き漏らすまい、とこちらをジッと見ている。
えっと、話の始めはこうだっけ。
「むかーし、昔の事でした
────」
──────────────
昔々、サリマーダ王国が出来る前の頃。
とある村に、一人の少年が迷いこんできました。
どうやら記憶もなく、帰るところも無いらしいのです。心優しい村の人々はその少年を村に住まわせてあげました。
月日が経つのは早く、あっという間に5年が過ぎました。
少年は相変わらず、村に住んでいます。ただし、村の隅に。
理由は簡単。
少年が何も変わらないからです。
この村に迷いこんできた時のまま、何一つ。5年前同じ背丈だった子供たちは、成人へと変わりつつあるというのに。
村人たちはそんな少年を恐れました。
化物だ、という人もいました。
それでも村に住まわせているのは、その少年に悪意を感じなかったからでした。
当のその少年。
村で生活を始めて、2年が過ぎようとした頃。
突然、自分の能力に気づきました。
腕を何にでも変えることが出来たのです。
それは徐々に慣れていき、3年目には自分の姿を丸々変えることが出来ました。
そして、少年は思います。
自分は人間じゃないのだろうか?と。
ここ最近、村の人々の自分を見る目が変わってきたので、村人の誰にも言わなかったのでした。
誰にも、嫌われたくない。
独りは嫌だ。
そんななかで、村の人々から恐れられてからも、少年に優しく接してくれる友達が二人いました。
彼は、
彼女は親友でした。
この村に迷いこんできた頃から、仲がよかったのです。
もちろん、二人はもうすぐ成人を迎える、それに順した体になっています。
彼は言いました。
村の人たちのことは気にするなよ。お前はお前なんだから。
彼女は言いました。
私は、君の事を化物だなんて思ってないから。信じてる。
少年は、もう、この二人さえいてくれれば何も要らないと思いました。
それくらい、三人は仲がよかったのです。
しかし、悲劇は突然起きました。
村が、盗賊に襲われたのです。
抵抗する村の人々。しかし、平和な暮らしをしてきた彼らには、戦う力などありませんでした。
増えていく死人の数。
そんなとき、少年は村を救うべく立ち上がります。
右手に剣を。
左手には斧を造ります。
次々と現れる盗賊たち。
少年を見つけた途端に襲いかかってきます。
しかし少年は自然と体が動き、盗賊たちを潰していきました。
後には真っ赤な血が残りました。
最後の一人を殺したあと、少年は二人の親友のもとへと戻ります。
しかし。
二人は、他の村人と同じ目をしていました。
少年は近づきたくても、それ以上は近づくなという目で見てきます。
少年は傷つき、泣く泣く自分の住んでいる村の隅の家へと帰りました。
その日の夜。
少年は、辺りに漂う煙の臭いと、ぱちぱちと物の燃える音に目をさましました。
村人たちが少年の家に火をつけたのです。
命からがら、少年は燃える家を脱出しました。しかしそこに待ち受けていたのは、人々の殺意の目でした。
この村にはもう、居られない。
村人に追われるようにして、少年は森の奥へと姿を消しました。
そして、村の子供たちは大人たちに教えられていくのです。
森には、何にでも姿を変えて人間を騙して食べてしまう、恐ろしい化物が住んでいるんだよ。
と。
──────────────
「───そして、その化物の名前は、『百変化』。」
俺は自分の事について話終えると、ふう、と息をついた。
王の顔は、驚きで物も言えないくらいだった。
ほら、やっぱりいつの時代も変わらない。
俺は、ハハッと小さく笑った。




