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闇の王子、影の王子  作者: チェル
一章──奔走、影の王子編
26/79

「むかーし、昔の事じゃった…」







「ごちそうさま。」


「…。」



俺は夕食をキレイに食べ終わり、フォークとナイフをテーブルの上に置いた。

今までにないくらい、平和な夕食だったと思う。王は緊張してて手をつけてなかったけど、俺が一言


「ちゃんと食べないと話さないよ。」


と言ったらちゃんと食べた。



さて、そろそろ話すか。


俺は深呼吸をして、頭の中で話すことを素早く整理した。王は一言も聞き漏らすまい、とこちらをジッと見ている。


えっと、話の始めはこうだっけ。



「むかーし、昔の事でした

────」





──────────────




昔々、サリマーダ王国が出来る前の頃。


とある村に、一人の少年が迷いこんできました。

どうやら記憶もなく、帰るところも無いらしいのです。心優しい村の人々はその少年を村に住まわせてあげました。



月日が経つのは早く、あっという間に5年が過ぎました。


少年は相変わらず、村に住んでいます。ただし、村の隅に。


理由は簡単。

少年が()も変わらないからです。

この村に迷いこんできた時のまま、何一つ。5年前同じ背丈だった子供たちは、成人へと変わりつつあるというのに。


村人たちはそんな少年を恐れました。

化物だ、という人もいました。

それでも村に住まわせているのは、その少年に悪意を感じなかったからでした。



当のその少年。


村で生活を始めて、2年が過ぎようとした頃。

突然、自分の能力に気づきました。


腕を何にでも変えることが出来たのです。

それは徐々に慣れていき、3年目には自分の姿を丸々変えることが出来ました。

そして、少年は思います。

自分は人間じゃないのだろうか?と。


ここ最近、村の人々の自分を見る目が変わってきたので、村人の誰にも言わなかったのでした。



誰にも、嫌われたくない。


独りは嫌だ。



そんななかで、村の人々から恐れられてからも、少年に優しく接してくれる友達(ひと)が二人いました。



彼は、

彼女は親友でした。



この村に迷いこんできた頃から、仲がよかったのです。


もちろん、二人はもうすぐ成人を迎える、それに順した体になっています。



彼は言いました。


村の人たちのことは気にするなよ。お前はお前なんだから。



彼女は言いました。


私は、君の事を化物だなんて思ってないから。信じてる。



少年は、もう、この二人さえいてくれれば何も要らないと思いました。

それくらい、三人は仲がよかったのです。




しかし、悲劇は突然起きました。


村が、盗賊に襲われたのです。


抵抗する村の人々。しかし、平和な暮らしをしてきた彼らには、戦う力などありませんでした。

増えていく死人の数。



そんなとき、少年は村を救うべく立ち上がります。


右手に剣を。

左手には斧を造ります。


次々と現れる盗賊たち。

少年を見つけた途端に襲いかかってきます。

しかし少年は自然と体が動き、盗賊たちを潰していきました。


後には真っ赤な血が残りました。



最後の一人を殺したあと、少年は二人の親友のもとへと戻ります。



しかし。




二人は、他の村人と同じ目をしていました。

少年は近づきたくても、それ以上は近づくなという目で見てきます。



少年は傷つき、泣く泣く自分の住んでいる村の隅の家へと帰りました。




その日の夜。



少年は、辺りに漂う煙の臭いと、ぱちぱちと物の燃える音に目をさましました。


村人たちが少年の家に火をつけたのです。



命からがら、少年は燃える家を脱出しました。しかしそこに待ち受けていたのは、人々の殺意の目でした。



この村にはもう、居られない。




村人に追われるようにして、少年は森の奥へと姿を消しました。




そして、村の子供たちは大人たちに教えられていくのです。



森には、何にでも姿を変えて人間を騙して食べてしまう、恐ろしい化物が住んでいるんだよ。



と。





──────────────





「───そして、その化物の名前は、『百変化』。」




俺は自分の事について話終えると、ふう、と息をついた。



王の顔は、驚きで物も言えないくらいだった。



ほら、やっぱりいつの時代も変わらない。



俺は、ハハッと小さく笑った。







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