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瑠那は、爽やかな朝を迎えた……はずだった。
目を開けると、目の前にはイケメンの顔が間近にあった。
「よく眠れたか?」
アルは柔らかい表情で瑠那に問う。紫の瞳が瑠那を覗き込んでくる。
「………い」
「ん?」
「………顔が近い。…………美男子は嫌いって言ったのに」
瑠那はアルの胸を押して退けようとしたが、瑠那の力では敵わなかった。
アルの顔は綺麗だ。王子様~って感じの兄とは違い、純粋に綺麗な整った顔してるなあと思う。
アルは自分の胸を押す瑠那の手を、やめろと言わんばかりに掴んだ。
「そう言うがな、お前だって見た目が良いだろうが。兄と同じ遺伝子を受け継いでいると言えると思うぞ」
「兄様と一緒にしないでよ」
朝から嫌な気分になってしまった。
怒った瑠那はさっさと自室からアルを追い出したのだった。
「お前、セレイアの王族なら“政治の書”を持っているのではないか?」
アルは突然瑠那を執務室に呼び出すと尋ねてきた。
…いきなり呼び出したと思ったら、そんなことか。
政治の書とは代々セレイアの王族が持っている、国を治める者へのアドバイスみたいなものを書いてある書物なのだが、他国では「それを持っていれば思い通りに政治ができる」とか伝わっているらしく、それを求める者はいまだに多いらしい。
……本当にそんなに万能だったら国は滅びてないって――と心の中で叫んでみるが、残念ながら書物が伝説として語られる今、瑠那の言ったことは信じてもらえないだろう。
「持ってるわよ。これのこと?」
瑠那は政治の書を手に持ってひらひらしている。
「お前っ!そんな雑な扱いをするな。国宝だぞ……てか、いまどこから取り出した?」
「そんなのどうでもいいじゃない?あなたにとって“これが在る”っていう事実が大事なのでは?」
「いきなり手元に現れたら、そう問いたくもなる。…で、どこからだした?」
「…………亜空間?」
「何で質問形なんだ。亜空間とは何だ、亜空間とは」
「さあ、よく知らない。その質問の答えは魔法研究家に任せるわ」
本当に知らない。瑠那は魔法を使えても、その論理とかが理解できているわけではない。
「…まあいい。その書物をよこせ」
「やだ、安易に他国の王族に渡せるわけないじゃない」
「何が欲しい?金か、ドレスか?」
「そんなのでつられるほど愚かではないつもりよ」
「…ちっ。どうやったら手に入る?」
「ん~じゃあ、あなたが立派な王様になったらいつか見せてあげる」
瑠那はそう言ってにっこり笑った。
その後、王太子は政務に一生懸命励むようになったとさ。
アルさん、瑠那の亜空間についてはスルーかよ!!
…と叫びたくなる作者です。
この作品はあくまで作者の気まぐれと息抜きで書いているので、更新速度は遅いです。
作者は「白銀の華」をメインに書きますが、スランプに陥ったりするようなことがあればこの作品の更新が速くなるかもしれません。