第12話 吾輩、普通の冒険者でござるが?
翌朝
モブ彦は、
いつものようにギルドへ向かっていた
その横には、
小型化した白銀神獣――シロ
トテトテ歩いている
「完全に犬でござるなぁ」
グルォン♪
尻尾フリフリだった
そして
「シロー!!」
街の子供達が駆け寄る
シロが嬉しそうに尻尾を振った
その隣では、
パン屋のおばちゃんが普通に撫でていた
「いやぁ、
今日もかわいいねぇ」
「毛並みふわふわだなぁ」
門兵まで癒されていた
「……平和でござるな」
モブ彦が頷く
リリアは頭を抱えた
「一応神獣ですよ!?
災害級モンスターに警戒心なさすぎでは!?」
だが
シロが、
トテトテとリリアへ近付く
「……っ」
スリッ
頭を擦り付けられる
モフッ
「~~~~っ」
リリアの肩が跳ねた
「リリアたん?」
「……な、
なんでもありません」
耳だけ赤かった
そのままギルドへ入る
すると
ザワッ……
空気が変わった
冒険者達の視線が、
一斉にモブ彦へ集まる
「神獣使いだ……」
「禁呪課の……」
「やっぱり魔王では?」
最後だけ酷かった
モブ彦は困惑する
「なんか視線痛いでござる」
「当たり前です」
リリアが頭を抱えた
「全長八メートルの神獣を従えて、
普通の冒険者面しないでください」
「今は小さいでござるよ?」
「昨日は門よりデカかったんですよ!!」
シロは、
受付前でお座りしていた
完全に行儀が良かった
しかも
モフッ……
妙に癒される
「……かわいい」
受付嬢が、
無意識に呟いた
ハッと我に返る
「ち、
違っ――」
シロが尻尾を振った
「~~~~っ」
完全に落ちた
モブ彦は依頼書を見回す
「うーむ」
そして
一枚を手に取る
「薬草採取でござるな」
沈黙
「えぇぇぇぇぇ!!?」
ギルド中が叫んだ
モブ彦がビクッと肩を震わせる
「な、
なぜ叫ぶでござるか」
「いやいやいや!!
神獣連れて薬草採取ですか!?」
「バランス崩壊してるだろ!!」
「森終わるぞ!?」
冒険者達が騒ぎ出す
モブ彦は困った顔になる
「吾輩、
普通の冒険者でござるが?」
シーン……
リリアが遠い目をした
「その認識が一番怖いんですよねぇ……」
その時だった
シロが、
子供達へモフッと擦り寄る
「かわいい……」
「モフモフ……」
「神獣なのに癒される……」
冒険者達まで、
頬を緩め始める
モブ彦が感動したように呟く
「完全に癒し系でござるな」
ピシッ
リリアの表情が引き攣った
「モブ彦さん」
「なんでござる?」
「どうしてあなたは、
毎回毎回その手の単語を口にするんですか」
ゴォォォォォォッ!!
紫色の魔力が、
ギルド全体へ広がった
「《癒し系》ぃぃぃ!!?」
ふわぁ……
暖かい空気が、
ギルドを包み込む
「……なんだこれ」
冒険者の一人が、
椅子へ座り込む
「癒される……」
「働きたくねぇ……」
「もう依頼とかどうでもいい……」
次々にダメ人間化していく
リリアは、
死んだ目で口を開いた
「これは周囲の精神を弛緩させ、
警戒心や闘争本能を低下させる感情系禁呪です……」
「ギルド終わってるでござるなぁ」
「もう終わってます」
シロは、
モフモフしながら尻尾を振っていた
しかも
触れた相手の警戒心を、
どんどん溶かしていく
「かわいい……」
「モフモフ最高……」
「帰りたくない……」
モブ彦は感動していた
「すごいでござる……
完全にセラピードッグでござる」
「世界観壊れてますからね!?」
その時だった
ギルド奥の扉が開く
大柄な男が姿を現した
傷だらけの顔
圧倒的威圧感
ギルドマスターだった
「……お前」
低い声が響く
周囲が静まり返る
ギルドマスターは、
モブ彦を真っ直ぐ見つめた
「マジで何者だ?」
沈黙
モブ彦は少し考えてから、
真顔で答えた
「ただのキモオタでござるが?」
シーン……
ギルドマスターが黙る
リリアが頭を抱えた
「そこなんですよねぇ……」




