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第33話 500階層・右腕のやり返し


 現在、499階層最後のボスフロア『深緑のエスピナ』。


 エスピナは不在だった。


 そして、ボスフロアの中央には、木の机と椅子だけが置かれており。机には、俺宛の手紙が書かれていた。


『ボク唯一無二の親友へ、ボクは用事も済んだので、一足先に自身のダンジョンである「ミクトラン」へと帰ります。あー、もしも観光に来たいのならいつでもどうぞ。それなりの戦力を揃えてお持ちしてますので。


 君に半殺しにされたくありませんからね。(笑)


 それから、「ファイアリー姉妹」「カグチ」「アリア」のお世話をよろしくお願いしますね。


 皆さん、とても個性的で良い娘たちなので、メイドとして侍らせることをオススメしますよ。クスクス。


 そして最後に、今回の件で最低限の力は戻させてあげたつもりです。君の右腕の方は…………とりあえずどうにかなると思うので、ちゃっちゃっと500階層に向かって、渋谷ダンジョンを攻略しちゃってくださいね。


 それでは、また会う機会があればお互いに生きて会いましょう。さようなら、陽光』



「………だって」


「ぶちのめしたいですわ! 黒幕気取りでぶちのめし確定ですわ!!」

〖おのれ、エスピナ!! 我の名前が1度もないとはどういうことピヨオオオオ!! ぶちのめしたピヨップ!!〗

「やりますわよ! 雛鳥〜!」

〖殺意増し増しで片付けるピヨ! 小娘〜!〗


「クスクス。エスピナちゃんらしい最後よね。樹海エリアもあえて手を抜いてくれてたし。本当に不思議な子よね〜! クスクス」


 エスピナへの殺意で、初めて意気投合する宵宮さんとスザク。


「…………500階層に上ろうか。たぶん、鉢合わせになると思うからさ。気を引き締めていこう。皆」


 500階層。


 最後の階層を昇る。


 これを上れば、彼らと再会することになると俺は確信していた。







◇◇◇


 渋谷ダンジョン・最深部「不死鳥フェニックスの神殿」


 クラン「フレア」が、太陽宝玉プロミネンス・プラネットを手に入れ、紛失してから2時間経過。


「な、なんなんだよ! 俺様たちがなにしってんだ!!」

「ゆ、許して下さい! なんだか分からないけど。許して下さい!!」

「すいやせんでした! すいやせんでした! もうしませんから!!」


「ござ、〈氷乱菊〉」

「うるさい人たちですね。〈砂塵廊〉」


「「「ぎゃあああああああああ!!!!」」」


 無事に500階層に到達。


 そして、これにより渋谷ダンジョン踏破攻略完全完了。


 …………それと同時に彼らとも再会することになった。


 階層を上りきった先で、俺と宵宮さんを半殺しにして、最深部に置き去りにしたアキラたちがいたんだ。


「……天照さん。天照さんの推測通り、あの方たちさ迷っていたみたいですわね」


「うん……それに、なぜかマリアさんたちと戦っているね。近づいてみようか」


「はいですわ!」


 念のため、武器を構えておく。スキルと魔法のバフも身体に付与して、準備万端でアキラたちへと近づく。


「も、もう! これ以上攻撃されたら死んじまうよう!」

「許して、許して下さい!!」

「なんでもします! なんでもしますから見逃して下さい!!」


 アキラ、サユリさん、オオツキくんの3人は、身体中に怪我を負いながら、マリアさんと凛に命乞いをしていた。



「凛、マリアさん!」


「ごじゃあ? 主殿!」

「! 陽光様っ!? 今、参ります!」


「え、あ? はぁ!? 陽光!? それに宵宮!? な、なんで生きてやがるんだ?」

「う、嘘、 なんであの女が生きてるのよ?」

「そ、それに天照の右腕見てくだしゃい! 可笑しな布を巻いてるけど右腕がありやすぜ!」


 声をかけたら、すぐに反応して俺の元へと駆けつけてくれた。

 それを見たアキラたちがジロジロと俺の方を見ながら指を差して驚いていた。


「ごじゃあ!?……主様! 右腕はどうされたので?」

「……! 陽光様の右腕から反応がありません!」


「……それは……ですわね」


 俺の擬似的な右腕を触り驚き始めた二人。

 その様子を見て、宵宮さんは戸惑い始めた。


「ごめん。これまでの全部の力と右腕を失っちゃった。やらかしちゃってね」


「主様がやらかし?」

「そんなのあり得ません! 私のご主人様は最強で、やらかす人では決してありません! これにはなにか事情が」


「天照さんの右腕は、そこに居る犯罪者たちに切断されたのですわ」


 冷たい視線で宵宮さんは、俺たちを裏切った3人を睨みつけた。


「「「ひいいいぃいい!!!」」」


「ござ? 切……断?」

「なんですって? 〈砂切〉」


「「「ひいいいぃいい!!!……ぎゃあああああああああ!!!」」」


 凛とマリアさんの放った魔法で、盛大に吹き飛ばされるアキラたち。


「…………それでは、やっておしまいなさい! 雛鳥!」

〖任せるピヨップ! 小娘!!〗


「「雛ちゃん?」」


〖ピヨピヨピヨピヨピヨピヨピヨピヨ!!! ビヨップ〜!…………ピヨピヨヨ〜!〗


 スザクがどんどん巨大化していく。


「マ、マスター、スザクちゃんて、あんな巨大化スキルを持ってたのかしら?」

「い、いや、あれってそもそもスキルもの?」


 その光景にドン引きする俺とアリア。


「「「ひぃ、ひいいいああああ!! デブ鳥!?」」」


〖誰がデブ鳥デブップ! 貴様らの行い、我はしかと見ていたピヨ。よくも我が主たる陽光の右腕を切断してくれたピヨな〗


「あ? 陽光の主だと? ぷっ! なんだよ! このデブ鳥! 見かけだけかよ!」

「え? こんな醜い豚が陽光ちゃんのペット? う、ウケるんだげど! ひ〜!」

「ぷくっ! わ、笑ったら駄目っすよ。俺たち、今、ピンチなんすから……ブハハハ!!」


〖な、なんだピヨップ? なんで、そんなに我と陽光の関係を笑うんだピヨ?〗


 アキラたちが、スザクの姿を見て笑っている。


「あ、貴方たち! こんな状況でよく笑ってられますわね! 殴りますわよ!」

「カノン駄目、コイツら埋めないと反省しない!」

「そうですね。消しましょう。陽光様のために」


「…………………」

「マスター……アイツら倒………マスター?」

「ごめん。アリア、ちょっと行ってくるよ」


 俺はスザクの元へと駆け寄った。


「だははは!! なんだよ。コイツ、身体がブヨブヨじゃねえか! うけるぜえ!!」

「アハハハ!! おデブちゃん鳥。餅かよ、アンタ!」

「もしかして、このブタ鳥を倒せば、この悪夢も覚めるんじゃないですか? ねえ?」


〖や、止めて、ピヨ! た、助けて、陽光〜! 我、虐められてるピヨップ!〗


「てめえから仕掛けといてなんなんだ! だははは!!」

「おらおら、悪夢の元凶覚めなって!」

「風船みたいですぜ! 割ってみましょうか?」


 この光景を見て俺はブチギレ、右手に力を込めた。


〖や、止めてピヨップ〜!〗

「「「ぎゃははははは!!!」」」


「アキラ!!!」


「あ? なんだ? 亡霊の陽こ………がはぁ!?」


 アキラの腹を抉るようにぶん殴る。


「陽光ちゃん! いきなりなにを……がはぁ!?」


 サユリさんは右手で往復ビンタした。


「あ、天照くん……いや、天照さん。俺は何もして……ごはぁ!?」


 オオツキくんは顔面を骨折する勢いでぶん殴る。


 そして全員がダンジョンの壁へと叩きつけられた。


「スザクは俺の相棒だ! 馬鹿にする奴らは俺がこの右腕でぶん殴る! 覚えておけ!」


 俺はそう叫び! 握りしめた右手をスザクのお腹へとタッチした。


〖陽光……やっぱり、我は陽光が大好きピヨ!……そして、そんな我の大好きな陽光から右腕を切断した貴様たちには、それ相応の罰を与えるピヨップ。――――貴様たちの探索者としてのこれまでの「経験」、「力」、「才能」の全てを対価に天照陽光の右腕の復活とする。……渋谷ダンジョンに悪意をもたらした元凶め。成敗ピヨップ!!!〗


スキル発動――――「再生」


「はぎゃ? おい、おいおいおいおい!! 俺様の力がない?」

「………歯抜けた……回復魔法……できない?」

「俺の力が……使えない?」


〖………これからは身分相応に生きろ。愚者たちよ。ピュルルルルルル!! そして、太陽宝玉プロミネンス・プラネットは我が主に返してもらう。良かったピヨな。陽光、大好きピヨップ!〗

「………スザク。ありがとう」



 ――――こうして、俺は渋谷ダンジョンを再攻略し。


 右腕が復活。人類初となる「星玉」の1つ太陽宝玉プロミネンス・プラネットの真なる持ち主となったんだ。


スザク(不死鳥フェニックスの雛鳥)

レベル10

天照陽光の守護獣

スキル 隠密 物真似ものまね 治癒 変身   

再生(限定条件あり)



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