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第1話 その日、俺達は力の全てを失った


 利き腕が無い。


 信頼していた仲間に切断されたから。



「ああああああぁぁ!!! 痛いっ! 痛いっ! 痛いっ! 痛いっ! 痛いっ!!!」


「うるせえな。うちのクランにさっきまで所属していた世界最強のおひとり様がよう」


「クスクス〜! はぁ〜! 弱っ! 油断し過ぎだって、陽光ようこうくん」


「ほっとけ、ほっとけ。それよりも今はお宝の回収を急ぐぞ。早くダンジョンから脱出しないと「反転」するからな」


「了解了解〜!」


 《《元》》仲間達の「フレア」のパーティーメンバーたちが喜んでいる。俺を騙し、傷を負わせて宝を手に入れられてそんなに嬉しいのか。


 ……右腕の切断面から血が吹き出し続けている。なまくらな武器で斬られたからだろうか?


 あぁ、くそぉ……意識が朦朧としてくる。あぁ、身体中が熱い。早く切れた傷口を塞がないと確実に死ぬ。


「ちょっと! 貴方達。なにを考えておりますの? お仲間である天照あまてらすさんに攻撃して、傷を負わせるなんて! どうかしていますわ」


 俺たちのクランに臨時パーティーとして、加入してくれていた上級探索者の宵宮よいみやカノンさんが怒りの表情を浮かべて、仲間たちを睨み付けている。


「………駄目だ! 宵宮さん。コイツ等に逆らっちゃ……殺される」

「天照さん。……ですが! 傷の手当てをいたしますわ!」

「……ハァ……ハァ……駄目だって……俺のことはいいか……早くこのダンジョンから逃げて……反転したらダンジョンに閉じ込められるんだ」

「ですがっ!」


 ……宵宮さんは優しい人だな。パーティーを組んで間もない俺にこんなに優しくしてくれるなんて……この人はこんな所で死ぬべき人間じゃない。


「『七星歴・太陽ソル』も力を全て奪われ片腕も切断されたら、終わりだな。陽光、ハハハ!! ざまぁみろだ。始めろ、オオツキ」


「はい。アキラさん」


「いや〜! 本当に頑張ったよね。わたしたち〜! 今まで誰も手に入れられなかった、世界に七つしかない「星玉」の一つを手に入れられるんだもん。前人未到ってやつ? きゃははは!! 嬉しぴぃ!」


 人が死にかけているのに随分と嬉しそうだ。……元仲間のアキラが祭壇らしき場所に、切断した俺の《《全ての能力が宿った右腕》》を雑に放り投げた。


 そして、祭壇の両端に設置されていた。灯籠らしき物から“紅蓮の炎"が点火すると、不死鳥フェニックスの姿をし石像が突然出現した。


なんじのダンジョン踏破を確認。供物を差し出した対価として『太陽宝玉プロミネンス・プラネット』を差し出そう。受け取るがいい】


「ハハハ!! 遂にか。遂に手に入る。世界中の探索者が血眼になって探しているお宝の1つが俺のものに……寄越せ! さっさと寄越しやがれ!!」


 アキラが吠えるように叫んでいる。ふざけるな。俺を騙して、俺の力と引き換えに報酬を得ようとするなんて、あり得ないだろう。そんなの……


【そして全ての力を差し出した者には、新たなる力『模倣』を授けよう。0から這い上がり、このダンジョンを再攻略せよ】


 どこからともなく声が聞こえたと思えば、俺の残っている片方の左手に赤色の宝石が突然現れた。


「…………これは? 右腕の出血が収ま……ごぁ!?」


「おらぁぁっ!! なんで死に損ないのお前が、俺のお宝を持ってんだよっ! 返しやがれえぇ!!」


「ゴホッ!……アキラ。お前なにを……があぁぁ!?」


「天照さん! お止めなさい! これ以上は、わたくし、宵宮カノンが許しませんよっ!」


「あ〜! うるせえ、うるせえ〜! 人気ダンジョン配信者ライバーだからって、うるせえんだよ。そんなに、あの死に損ないが気になるなら一緒に添い遂げろよ。うぜぇな」


「なっ! なんですか。その言い方は!?」


 アキラの容赦ない飛び蹴りが、俺の腹部へと炸裂し、俺はダンジョンの壁へと叩きつけられた。


「……つっ! 傷口から……また血が……」


 吹き飛ばされたせいで、 左手に持っていた『太陽宝玉プロミネンス・プラネット』を落としてしまった。


 『太陽宝玉プロミネンス・プラネット』は、もともと俺の力を根源にして作られた「星玉」。


「あれを持っていれば……止血できる……早く……また持たないと……」


「オラよっ!」


 グシャッ!というなにかを砕く音共に、俺の左脚が変な方向に折れた。


「ギャアアアアアア!!!」


 骨折した場所を踏みつけられている!? 痛い痛い痛い痛い痛い痛い。


 右腕もない。力の全ても奪われている状態なんだぞ。そんな状態で俺の傷ついた左脚を力強く蹴るなんて…痛い……痛い……痛い。


「お〜! うるせえ、うるせえ。俺は、昔からすかしてるてめえのこと大っ嫌いだったんだよ。『七星歴・太陽ソル』の陽光。なにが世界最高峰の7人だ。てめえを見てると反吐が出るぜ。…………それにしてもよう。本当に嫌いな奴の断末魔を聞くのは楽しいな。」


「………止め……痛……あぁ…………宵宮さん?」


 容赦なく踏みつけられる。……それに俺の近くに倒れているのは傷だらけの宵宮さんか?



「キャハッ! Aランク探索者も、後ろから頭を殴られたら呆気ないわよね。あんたの荷物全部貰うから。サンキューね」

「陽光のも貰うな〜! ダンジョン反転が起きる渋谷ダンジョンで仲良くくたばれよ。仲良し同士でよう。ヘハハハ!!」


 ……あれは俺と宵宮さんが背負っていた背嚢リュックサック



【……“ダンジョン反転〝を開始する。渋谷ダンジョン内の地下500階と地上1階を反転させ、残った挑戦者チャレンジャーに試練を与える。受けたくない者は、地上へと通じる転移門ゲートへと向かうように……繰り返す】



「やべえな。本格的に反転が始まりやがる。オオツキ、サユリ、急いで転移門ゲートの中に行くぞ! さっさとダンジョンから脱出しないと出れなくなっちまうからな」


「は〜い! 新リーダーのアキラ様〜!」

「こんな美人なAランク探索者を楽しめないのは残念だが。アキラさんの命令だからな。じゃあな。宵宮カノンちゃん。あんたはすげえ目の保養になったぜ。ギヒヒ!!」


 元仲間のオオツキとサユリが祭壇近くに現れた転移門ゲートへと入っていく。


「じゃあな。「フレア」の元リーダーさんよう。てめえの全ての力を犠牲にして手に入れた『太陽宝玉プロミネンス・プラネット』は、オレ様が今後、有効活用してやるからよう。大人しく、宵宮と仲良く死んでくれや」


「……ふざけ……彼女だけでも……助け…………ギャアアアアアア!!!」


「あぁ!? 馬鹿かてめえ!? あんな地位も、顔も、金も持ってる勝ち組を助けるわけねえだろう。……そうだな。死にかけだった宵宮をてめえが助けようとして、2人とも行方不明になったってことにしておいてやるよ。陽光。オレ様がてめえの名誉を守ってやるから、あの高飛車女と仲良く死にさらせや! 陽光!! オラよおぉ!!」


 再び骨折した左脚を踏みつけられた後、宵宮さんが倒れている方向へと、アキラにおもいっきり蹴り飛ばされた。


「があああぁ!?…………宵宮……さ……ん」


「アハハハ!! まるで負け犬だな。陽光。似た者同士でお似合いだぜ。てめえ等は。じゃあ、今までありがとうよ。相棒君。ギャハハハ!!」


 アキラは僕たちの姿を笑いながら、転移門ゲートへと入って行った。


「………宵宮……さ……ん……き……み……だけ……で……も……たす……」


 

 切断された右腕からの出血量を考えれば、俺はもうすぐ死ぬ。


 それならば、最後の力を振り絞って、彼女だけでも転移門ゲートの中に……彼女だけでも救ってあげたいんだ。


 口で彼女の服を噛み、地面を這いずりながら少しずつ進んで行く。


 踏みつけられて、骨折し、粉々になった左脚を引きずりながら、大丈夫。脚に感覚はないから痛みを感じるのは切断された右腕だけ。


 もう少し……もう少しで宵宮さんを救ってあげられる。


「………もぅずご……じぃでぇ……すぐぅでぇ……」


 自然と両目から涙が溢れてくる。

 彼女を救えなかったらどうしようと考えると、恐ろしくて自分が情けなくなってくるんだ。



【………………………この状況、その姿で他人を心配し。助けようとするとは。感服した】


 何だ? 不死鳥フェニックスの石像がなにか言っている?


【救う対価は、その助けられようとしている娘の全ての力としよう。それで、お前たちの身体は修復される。……全ての力を奪う娘には、新たに『福音』の力を与えよう。……それでは反転を始める。ダンジョンを再攻略し、初期の力で地上を目指すがいい。挑戦者たちよ】



 石像がそう言い終えた瞬間、俺たちが居た部屋は歪み始め、周囲の光景は激変したのだった。

 

天照あまてらす陽光ようこう

レベル1

スキル 模倣


宵宮よいみやカノン

レベル1

スキル 福音


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