一狩りいこうぜ・4
俺たちは這う這うの体で野営地に戻り、事の次第を報告した。
義親父殿は俄かに信じがたいといいながらも麓に使いを出し、報告を終えた俺と俊峰殿はなぜか楽しげな摩周に見た物を根掘り葉掘り聞かれた。
「聞く姿は並封のようですなぁ」
摩周曰く、並封とは東幻から見て西の果ての巫咸という所にいるという猪の首が前後ろについている獣だという。
「東幻の外について書いてある書物にそうありました」
見た目はゴツイ摩周だが妖怪変化の話に目がなく、よく市場で漁る書物もその類の奇書だ。
この世界にも妖怪オタクがいるのだ。
「これはますます東幻の外から来た魔獣ですな!」
摩周、楽しそうだなお前。
「本当に東幻の外からあんな物が来たのでしょうか…」
そう俊峰殿もいぶかしむが
「この場で一番東幻の外を良く知る俊峰も知らんのなら、そりゃあ人外魔境の類であろうな」
義親父殿が自分を納得させるように言う。
未だ鼻にあの臭いが、腕に仙術を使った名残か痺れが残っている。
「色々わかったことがありますが、困りましたな」
猟師が渋い顔をする。
「あやつ、糞をせんのですな」
その言葉に伯虎も唸った。めっちゃ深刻そうな顔してる。
「そんなにヤツのウンコが大事なんです?」
「猟で獣を追う時の目安ですな。足跡もですが、糞を見ればヤツの腹具合や縄張りが手に取るようにわかります」
あの巨躯と臭いから想像するのもおぞましい。ヤツのひり出すウンコなんぞ絶対拝みたくない。
「あー、俊峰殿の千里鏡で見えたものとかはなかったんですか?」
話題がウンコづくしになるのが嫌で無理やり俊峰殿に話を振る。
「いや、咒力で産み出した獣なら足音がした時点で何か見えていたはずだ」
つまりあれは仙術などを使って出来たものではない。
「しかし、足跡のほうに咒力が残っていた」
「加護の類でしょうか?」
「君のほうが専門だろう?」
そう返されても黄家の仙術は封印や結界などに明るくはない。
しかし投げた長剣が一瞬”何か”に阻まれたことを踏まえると
「その体に加護がかかっているだけ、咒力を持って生まれた妖獣ではないでしょうね」
今ある情報を出来るだけ精査した結果を口にすると
「剣が刺さったのなら、こちらの攻撃は通じるのだな?」
義親父殿は本当に簡潔な解を出してくれる。
大がかりな解術は必要無さそうだし、力押しで大丈夫…だろうか?




