異世界転生したいから儀式を執り行う。
ろうそくの炎が鏡に映る。
二つの炎がゆらゆらと、向かい合わせに揺らめく。
それを注視して「その言葉」を唱える。
ただの慰めだ。女子たちのしていた与太話を拾い聞きした程度だし、本当にそんなことできるなんて思っているわけじゃあない。
でも本当に今が退屈で、このまま平凡な人生をおくって死んで行くことを考えていたら全身がぐらぐらするような不安を覚える。
ただでさえ「死」について考えるのが怖いのに、自分が死んだって親兄弟が悲しんで、自分の遺す物がスマホ内のデータ程度だってわかっているのに。
いつ死ぬかわからなくて、死んだ後見つかったらやばい物はできるだけ手元に残さず、できるだけそんなこと考えていないように取り繕う、もううんざりだ。
視点がぼやけて、二つの炎が一つに見えてくる。意識が遠のく。
死んで逝く時もこんな風なんだろうか。
眠気が極限までくる頃合でろうそくの火を消してベッドに横になった。
「異世界に転生できるおまじない」…、ただ自己催眠で明晰夢が見易くなるだけなんだろう。それでもいい。せいぜい夢を楽しむだけだし。
異世界の夢を見るならどんな世界がいい? 西洋風は飽きたな、エルフとかありきたりだし。アジア…三国志とかいいよな。でもあの中に飛び込んで活躍できる自分が想像できない。もうちょっと前の時代ならワンチャンあるかも。いいとこの出でかわいい許婚がいて…レールの上ってのは今と変わらないけど、こういうチート楽勝コースなら全然大歓迎だ。
どうせ異世界なら不老不死ぐらいあるだろうし、死の恐怖がないなら…どこでも…




