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TSヒロイン・おっさん異世界ラブ

2019/02/09~12に投稿した『異界から来襲せし者、その名は京一』『うちのTS娘の為ならば、父さんは勇者にだってなれるかもしれない。』『父ですが、なにか?』の計3話を結合し、誤字表現を中心に、京一を少し悪化させました。


 人間、こういう時はどんな反応とどんな対応をするのが正解なんだろう。


 目の前で馬鹿みたいにはしゃいでいる実の父親と一緒になって「わんわん」鳴いて喜んでる、TS柴犬娘。


 やっ、情報過多過ぎやしませんか!?

 どうすれってんだよ、この状況。

 せめて父さんだけでもどうにかお帰り頂けないものだろうか……


「うぉー、ここが異世界かー!」

「ひゃんッ!」

「その首輪……何だモンジロウすっかり可愛くなって! 三人目の娘か!? これはますます女系家族になって父さん更に肩身狭くなりそうだなぁー! アーハッハッハッハッ!!」


 テンションたっか……

 ありゃ帰れったって絶対に帰りそうも無いな。

 そりゃ長年憧れてた異世界に来たんだもんな、満足するまで絶対に帰らないだろうなぁ。

 いや、満足しても帰らないかも……


 どうしようこの人、ホントに恥ずかしい。


「父さん」

「何だ、良? 明日からは父さんも一緒に頑張るからな!」

「ひゃんっ!」

「モンジロウもヤル気だぞ、あっはっはっ!」

「母さんに怒られない?」

「こっちに飛び込むとき、綾さんにはシルバーウィークが終わるまでには帰って来いって言われてる!!」

「母さん……」


 って事は、向こうとの時差が無ければ最低でも一週間近くはこっちに居るって事か?

 うわぁ……


「あと、綾さんから良に伝言だ!」

「え、母さんから伝言?」

「京一さんが迷惑をかけたらご免なさい、だってさ! 子供の面倒を見るのは父親の勤め! 父さんが迷惑かけるなんてないよなぁ~♪」


 迷惑!

 もうすでに、すげぇ迷惑!


 って言うかアル君居るのに恥ずかしい!

 いっそ、母さんも召還して連れ帰って……

 いや、ダメだ、そんな事をしたらあの母さんの事だ、「永遠の十七歳」で居るための方法を探すとか騒ぎ出しかねない。

 しまいには、本気で通常攻撃が全体攻撃で二回攻撃……とかやりかねない。

 いや、母さんだけならまだしも、姉貴まで来たら最早目も当てられない惨状になる。


 具体的にはオレがアル君とイチャつく暇が無くなる。


「良、良ッ!」

「な、何さ?」

「ここすごいなぁ、星が山ほど見えるぞ! 郊外か?」

「塔の中だよ」

「塔? 塔って、タワーか? スカイツリーとかテレビ塔とか、キマシタワーとかそれ系の塔か?」

「……うん、そう。てか最後は違う」

「うおぉぉぉぉぉぉっ、異世界すげぇー! まさにファンタジー! すごいな、良! どんな技術使ってんだろうな!? 人間便利や技術を突き詰めたら無味無臭な物ばかりに包まれるんだろうけど、これだけの技術がありながら自然と融和させるとか、どんな技術なんだろうな?」


 キラキラとした目が眩しい。

 何だろ、何時だってオレ達と楽しそうに遊んでくれた父さんだけど、今の姿はさらに楽しそうを通り越して生き生きとしている。

 子供みたいな人だけどこれでも大人だもん、色々と鬱屈してる感情もあったんだろうな。

 それにずっと行きたがってた異世界だもん、そりゃ大人げなく燥いじゃうか。


 しゃあない。

 子供からの異世界旅行プレゼントと思って、一週間くらい付き合うか……


 オレはすっかり空気になりかけてるアル君に振り返る。

 すると、どうした事だろうか。

 アル君の顔面が蒼白になっていた。


 自分の義理の父親に向かって魔法をぶちかましたからだろうか?


 いや、そんな感じじゃ無いな?

 と言うか、そもそもそんな些細(・・)な事で動揺するような子じゃない。


「どうしたの」


 問いかけに、錆び付いたロボットみたいな動きでぎこちなく振り返る。


「気が付いてないの? 京一さん、凄まじい魔力だ……」

「え? 言われてみれば……」

「ボクの知る限り……この塔に現れたエルヴァロン以上だ」

「ふぁ!? そんなに? だってだって、たぶんだけどオレのエルフの血って性質的にも母さんの家系のはずだよ? もしかして父さんの先祖もこっちの可能性があるってこと?」

「う~ん……ゼロじゃ無いとは思う。お義母さんの綾さんもキミと同じで匂いで近い存在を嗅ぎ分けてたよね」

「その言い方、ウチの家族は犬か何かですか?」

「……近しい言動は多くやってるでしょ」

「むぅ……否定出来ん」

「とにかく、こっちの世界に先祖が由来しなかったとしても、京一さんの秘めたる潜在能力に惹かれた可能性は高いと思う」

「潜在的能力……それって魔法の無い向こうの世界でも手に入れる事が出来るのかな?」

「まぁ、あれだけの魔力は魔王の直系でもない限り、生まれつきで持ってるとはそうそう考えられない。ましてや向こうの世界でとなると、尚更……突然変異なのか、それとも想像を絶するほどに独自な鍛錬を積んだか……」

「……独自な鍛錬?」


 そこでふと思い出す。父さんが学生時代の帰り道、チャリで帰宅途中に魔法の詠唱をしていたという痛い話を……

 誰だ? お前もやってたろ、とか言ったの!!

 そうだよ、同じ事やった事あるよ!!


 はて?

 そう考えると、だ……


「アル君、魔法はイメージする力だって言ってたよね」

「うん、その通りだよ。現にキミはそのイメージする力が明確だから普通なら考えられないほどに魔法の上達が早いんだ」

「それね、もしかしてイメージをする事で、魔力の上昇ってあるのかな?」

「もちろんだよ。具体的なイメージは魔素の流れを自分の中に生み出す事になる。それを怠らずにやり続けるのは聖者や神官の瞑想と同じで、自分の精神修練となるだろうしね」


 なるほど……

 ようは父さんは30数年間、たゆまなくオタクだったおかげで自然と魔力が鍛えられていたと。

 それがこっちの世界に来た事で、一気に開花したんだろうな……


「おい、良! 見てくれ、父さん空飛んでるぞ!!」


「「…………」」


 思わずアル君と目線が合った。


「すご……」


 雑な褒め言葉がアル君の口からこぼれ落ちる。


「うぉー、たーのしー! そうだ、勇者ならやっぱりこの魔法だよな! ス〇エニよ、今までソシャゲにも散々課金したんだ、俺に力を貸してくれ!! ギガ〇イン!!」


 父親の知りたくもない小遣いの使い道を知らされたと思ったら、某青い鎧に身を包んだ勇者が得意とする魔法まで絶叫した。


 ん、なんだ?

 髪の毛がパリパリ言って逆立つぞ?

 あれ?

 これって静電気?


 何て事を思っていたら、前方の森が突然青白く発光した。猛烈な爆音とともに。


 ……それまではしゃいでいたモンジロウもすっかり尻尾を丸めてオレの背後に隠れてしまった。

 と言うか、ぶっちゃけオレも障壁を張ってくれたアル君の背後に隠れていた。

 夜空で馬鹿笑いする父さん。


 地形を変形させて月夜に馬鹿笑いするその姿は、勇者と言うよりも魔王そのものだった……




 無双――


 と言う言葉がある。ラノベを読んだ事のある日本人ならほぼ百パーセントで知っている事だろう。

 そう、わざわざ異世界まで来たのにオレとは一切無縁のあの(・・)言葉だ。


 ……神様ってのが本当に居るなら、心底残酷だと思う。


 何が起きてるかって?

 目の前で無双が起きてるんだよ。


「父さん、殺しちゃ駄目だよー!」

「不殺の誓いを立てた覚えはないでござるぞー!」


 ござるって、貴方どこの流浪人ですか?


「おろー!」

「おろーって言うな、いい加減怒られるぞ!!」


 父親孝行と思って受け入れたけど、失敗だったかな……


 そんな後悔に揺れるオレの横で、アル君は感心したように父さんの動きに魅入っていた。


「どうしたのアル君? また年上の男好き属性が出たとか言わないよね?」

「何不機嫌に不穏なこと言ってるのさ! そうじゃなくてさ!」

「何さ?」

「だから、不機嫌に反応しないの。えっとね、京一さん、異様に戦い慣れしてない?」

「あ、あぁ、そうだね」


 そういや母さんが前に言ってたな。

 父さんも今はあんなガチオタだけど、昔は手の付けられ無い不良だったって。

 よく母さんの兄さん(この間入院した伯父さん)がまだ警察官になりたてで駆け出しの頃、町中でよく大立ち回りをやっていたらしい。

 オレはアニメヤンキーだって笑って信じてなかったけど、あの異様に喧嘩慣れ(戦い慣れとは言わない)した姿を見ると、なるほどと納得せざるを得ない。

 と言うか、倒した敵から武器を奪い取って他の敵を殴りつけるとか、オレが思い描くヤンキーそのものだ。


「チッ、へし折れたか。やわい武器を使いやがって……」


 だんだん父さんの口調が荒んでいく。

 しまいにはオーガーをヘッドロックしたままヒュドラにヤクザキックまでかましてる……


 ねぇねぇ、お父上。貴方が憧れたのは勇者であって、ヤクザでも蛮族でもないですよね?

 今の姿をお母上様が見たら、きっとぶち切れますですよ?


「父さん! そこまでにしないと強制送還するよ!」


 父さんの動きがピタリと止まる。


「良、父さんな、もう少し異世界に居たい……」


 すげぇ泣きそうな顔で懇願された。

 や、帰しませんがね。ただ、あんまり派手に暴れると、モンジロウが怯えるからやめて頂きたいのですよ。

 さっきからオレの後ろで震えてるのが分かりますか?


「元の世界に帰すなんて言わないからさ、そんなしょげた顔しないでよ」

「良! 愛してるぞ、マイドーター!!」

「ぐぇ!!」


 熱烈にはぐられた。

 正直鬱陶しいというか、気分はまったくもってよろしくない。


 や、別に父さんの事は嫌いじゃ無いけどさ、でもこの歳で父親に抱きつかれるって、結構な罰ゲームだよ?

 

「離してくれ」

「照れてるのか、良」


 アッハッハッとバカ笑いする父さん。

 鬱陶しいなぁ、とか思ってたら、


「およ?」


 突然ぐいっと引っ張られ父さんから引き剥がされる。

 後ろを振り向くと、アル君がオレを引っ張っていたのだ。

 お? 何だ何だ、どうした、どうした?

 ヤキモチ、ねぇヤキモチ? しばらくご無沙汰なデレ期でございますか?


「父さん、ありがと」


 オレはアル君のデレを引き出してくれた父さんにお礼を言うと、アル君をぎゅってする。


「リョ、リョウ? は、恥ずかしいってば!」

「だってオレが男に戻ってから最近アル君冷たかったんだもん」

「それはだから違うってば!」


「父親の前でイチャつくバカッポー」

「ひゃん!」


「そこは触れないのが嫌われない父親像だと思うよ?」

「難しい選択だなそれは。って言うか、今ちらっと聞こえたけど、良、お前男に戻ったのか?」

「ギクッ! 何故それを!?」

「いや、今自分で言っただろう」

「ひゃんっ!」

「え、あれぇ~……オレ言ったか? うん、言ったな」

「そうか……でも、あれ何だな」

「あれ?」

「性別が戻ってもお前達の愛情は冷めた訳じゃ無さそうだな」


「冷めてたまるか!」

「冷めませんよ!」


 ハモって否定する二人の幸せハーモニー。

 ふ、ふふ……父さんの前で断言するのは恥ずかしいが、アル君がムキになってくれるのは凄く嬉しい。


 そんなイチャつくオレの横で、首をかしげる父さん。

 何だ、何か言われるか?

 いや、言いたい事は山ほどあるだろうけどさ。

 とか思ってたら、予想外の言葉が飛び出した。


「えっと……何?」

「いやな、良の中に鎖みたいな不思議な力が見えるんだけど、それが繋がろうとするたびにハサミみたいな物が切り刻んでいるのが見えるんだ」

「なぬ!?」

「魔法が視認出来るって、京一さん、貴方何者ですか……」

「ハッハッハッ! お父さんはお父さんだ!」


 そう叫んで意味も無く戦隊ものっぽいポーズを取る父さん。

 一々恥ずかしい……

 そんな父さんが何故か分からんけど、オレの周りをグルグルと回りながら唸り声を上げる。


「う~ん……それはそうと、その鎖見た感じからしてたぶん呪詛系だなぁ……もしかしたらそれが繋がれば女に戻るのか? 父親が元息子に言うのもあれだけど、女に戻りたいか?」

「え? あ……」


 本音は今すぐ女になりたいと叫びたい。

 でも、父さんにそれを伝えるのはえらく躊躇われるというか……

 そんな二の足を踏んでいたら、アル君が一歩前に出た。


「リョウには女性に戻って貰います。彼女はボクの妻になる人ですから」

「うわぉ!!」


 予想外に男らしいほど男らしい助け船が出た。


「そうか、まぁ、初めて会った時にもそう言われたしな。それがお前達の幸せなら父さんは何も言わん。じゃ、女に戻……戻る、なのか? とりあえずそう言う事で良いんだな?」

「う、うん……って言うか出来るの父さん!?」

「要はその見えているハサミを取り除けば良いんだろ? それなら難しくは無さそうだ」

「京一さん、先生の解除魔術をそんな簡単に言うとか……何者ですか、本当に……」

「お父さんはお父さんだ! それ以上でもそれ以下でも無い! ただ、敢えて言うなら、伝説のお父さんだがな」

「調子に乗りすぎ……」

「ハッハッハ、調子に乗れる時には乗っとけと言うのが日野家の家訓だ! 何時だって乗ってみせるぜビッグウェーブ! どんなさざ波も荒波に変えてみせるぜ、日野スピリッツ!」

「どんな家訓だよ、初めて聞いたぞ」

「ああ、どうりで……」

「アル君! キミは何に納得してるのさ!」

「いや、リョウの生き様だなぁ……って」

「ひどっ!」

「ほらほらじゃれるな。じゃあ、早速その魔法を解除……と言いたいけど、今チラッと出て来た先生ってのは何者だ? その解除の力を使った相手の事か?」


 父さんが来てからだいぶ時間が経ってるから説明するのは今さら感があったけど、オレ達はこの塔を登っている理由を改めて説明する事にしたのであった。


全体改稿中で既存の読者様にはご迷惑をおかけしております。


もう少し先になりますが、展開が大きく変わると思いますので今しばしお待ちください。

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