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終わりゆく世界に紡がれる魔導と剣の物語  作者: 夏目 空桜
第六章 それぞれの過去に
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TSヒロイン・ダディ!

2019/05/05~7に投稿した『お互いに』『父さんだってな、たまには葛藤するんだ』『乗り越えていた試練』の三話を結合し誤字表現を中心に改稿しました。

 お尻が痛いです。

 顎がガクガクしてます。

 何でかは言えませんけどね。

 ただ、私の身体……


 アル君が触れてない場所はもうどこにも無いと思います♪


「えへへ……」

「ん、どうしたの?」

「アル君から求めてくれたの、凄く久しぶりな気がして……不安もいっぱいあるけど、今凄く幸せだなって」

「リョウ……ボクも、幸せだよ」

「えへへ」

「キミと向き合うことで、やっと気持ちが解放された気がするんだ」

「アル君……」

「ここ最近、心の奥底から、ずっとボクに語りかけるボクが居た」

「……」

「あ、その、変な病気とかじゃ無いからね」

「それはわかってるよ。ただ、それって魔王の魂とかじゃないの?」

「ボクも最初はそう思ったよ。でも、そうじゃない。たぶん、あれは……」

「あれは?」

「生まれてからずっと抑圧され続けた、ボク自身の悲鳴だったと思う。どこにぶつけて良いのかもわからず、泣き叫んでいたボクの心だったんだ」

「うん……」

「キミが、リョウが手を差し伸べてくれなければ、壊れかけていたボクを助けてくれなければ……ボクは……」

「アル君……壊れかけてのは私も一緒だよ」

「リョウ……」

「男だった頃とか、その頃に考えていたこととか、自分の十五年間が全部嘘みたいに消えた気がしてさ」

「うん……」

「どうして良いのかわからなくて、自分の事で精一杯で、笑って誤魔化して……」

「ボクも、そうだった……」

「アル君に甘えていないと、自分が不安で仕方なかった」

「ボクも、リョウが甘えてくれてるとそれだけで安心してた。キミの好意にボクも甘えていたんだ」


 日野良とアルフレッド――


「私なんか自分、自分、自分で……そんなだから、アル君が助けを求めていたのにも、ギリギリになるまで気が付けなかった」

「ボクだってそうだったよ。キミがどんなんに不安だったのか……わかったつもりになっていて、優しさが足りずに不安にさせてしまった」

「アル君……」


 生まれも育ちも、育った世界や星さえも違う二人。


「もっと早く、心の奥底にしまい込んでいたキミの苦しみに気が付いてあげてれば。ここまですれ違わなくて済んだのかも知れない」

「そうだね、もっと歩み寄っていれば……もしかしたらお互いにここまで苦しまなくても、どこかで回避出来てたのかもね」


 だけど、そんな二人の中身は驚くほどそっくりで……

 歯車がどれか一つでもずれていたら、私たちの今はきっとなかった……


「だからね、アル君」

「うん」

「いっぱい話そう。避けていた事があるなら、それも含めて話し合おう」

「リョウ……うん、いっぱい話し合って、お互いを思いやろう」

「これからも私をいっぱい支えてね。私もアル君のこと支えてみせるから」


 今宵、何度目になるかわからない口づけ。

 気が付けば、どちらともなく眠りにつき、


 そして、朝――


「………………我、降臨せり!」


 何か、外が不穏な声音で騒がしかった。

 え!? アル君とのラブを確かめ合った途端にまたハプニング?

 やだぁ……すげぇ面倒くさい。

 アル君ともっとラブラブしてたい。


「さあ、かかってくるが良い……キュアワンコよ!」

「ひゃん!!」

「この邪悪な心に染まりしダディペルソナが相手だ!」


 キュア、ワンコ……?

 だでぃぺるそなぁ?


 ガバッ!!


「え? どうしたの、リョウ……」


 寝ぼけ声のアル君。その寝起きの顔を堪能したいが、今はそれどころじゃ無い!

 慌てて窓から覗くとそこには――


「ハーッハッハッー!! キュアエルフが姿を見せぬ今! その妹であるキュアワンコよ! キミだけで私を止める事が出来るかな!」


 タキシード〇面みたいなクソ恥ずかしいコスプレをした父さんが、ニチアサの変身ヒロインみたいな格好した可愛いもんじろうと遊んでいた。

 ……いや、重要なのはそこじゃ無い!

 そこじゃ無い!!

 

 おおぅ……


 やい、クソ先祖!

 お前のあの戯れが父さんに見られてたぞ……どうしてくれる!


 幸せなはずの朝。

 それなのに、面倒くさい父さんに見られてしまったせいで、酷く憂鬱になるのであった。


「はぁ……」


 眠りは素敵、目覚めは最悪。


 グッタリした目覚めでリビングに向かうと、さっきまではしゃいでいた父さんとモンジロウが居た。


「……おはよ」

「出たな、キュアエルフ!!」

「それはやめい!!」

「え~、あんなノリノリで戦ってたくせに~」

「あれは先祖の罠! 私を勝手に操ってたの!」

「あ……」

「何よ、その間」

「あ、や、その……あ、ああ、『それって俺の血がうずくうずく!』みたいなヤツか!? 良いな、父さんもそれ言ってみたい!!」

「……父さん普段から『俺せいじゃ無いんだ、仕事に行きたくないのは俺の宿業なんだ!!』とか普通に言ってるだろ」

「良ちゃん、お父さんが仕事行きたくなくてだだこねて綾さんに甘えている所は忘れろ」

「わかったよ、その後に母さんにオタマで叩かれてたのも忘れたげる」

「良ちゃん違うぞ! あれは叩くとか言う暴力じゃ無い! 綾さんはプラスチックのオタマで叱咤激励してくれたんだ! 金属製のオタマじゃ無いのがミソ(・・)だ!」


 はぁ……

 思わずため息をついてしまった。

 父さんは端から見たらヤカラ感丸出しの時があるくせに、母さんからきっちり調教済みなんだもんな……


 アル君に愛され調教済みの私と、ちょっとかぶっちゃうじゃん。


 血か!?

 またも血か!?


 ……腹黒ショタエルフ(アイツ)を見た後だと、血筋を疑わずにいられないんだよな。


「な、なぁ良ちゃん!」

「わ! 何さ、突然でっかい声上げないでよ。ビックリするじゃない」

「え、えっとさ……その……だ、だから……」

「何よ? モジモジしないでよ」

「そのな、語尾(ごにょごにょ)とか……一人称(ごにょごにょ)とか……」

「ごにょごにょ言っても聞こえないよ、ちゃんと言ってよ」

「えっと、その……全部受け止めてあげたつもりでも、やっぱりハードルがなぁ……」

「どうしたの、何か似合わないシリアス顔して?」

「似合わないとかシドい! いや、とりあえず、アレだ……えっとその……そう! 良ちゃん、アレの時の声はもう少し小さい方が良いぞ! 安普請のアパートとか悪徳施工不良の獅子パレスみたいなアパートだと筒抜けだから!!」

「アレの、声? ……ッ! 父さんの変態!! アロガント・スパーク(※詳細はネットで検索)!!」


 ズズンッ!!


 と地面を揺らした轟音。


「ニャガハァ~~~ッ」


 床に叩き付けられめり込んだ父さんが珍妙な呻き声とともに沈黙した。

 ハッ!

 いかんいかん、あまりの恥ずかしさに必ず殺すと書く技を殺す気でぶちかましてしまった。


「ごめん父さん、少しやり過ぎた!」

「み、見事だ……だが、例えここで我を倒そうと、遠く無い未来、第二第三のダディペルソナが現れ……この世を面白おかしくするであろう……」

「………………」


 ダメだコイツ、どんなときでもネタをぶち込まないと我慢出来ない体質らしい。

 父さんを制御するにはやっぱり母さんが必要なようだ。

 母さん、どうか一分一秒でも良いので父さんよりも長生きしてね。私と姉さんじゃ制御出来ないか――


「さて、親子漫才の気はすんだか?」


「おひゃあ!?」


 父さんの対応でいっぱいいっぱいで気が付かなかったが、カーズさんがいつの間にかリビングに現れ紅茶を飲んでいた。


 ――カーズ――

 全ての英雄の頂点に立つ男。


 たぶん先祖の力とかで私の力が解放されたからだろう、改めてこのカーズという人が持つ魂の力強さとでも言えば良いのか……

 目の前に居るだけでその力の強大さが身に染みてわかる。

 ハッキリ言ってシャレにならない。

 私だってかなり強くなったはずなのに、強くなればなるほどにこの人との次元の壁を感じてしまう。

 ぶっちゃければ、どう逆立ちしてもこの人に勝てる姿を想像出来ないのだ。


 アル君がこの人の前では誤魔化しも虚勢も無駄だと教えてくれたけど、今更ながらにその言葉の真意を実感している気分だ。


「おお……カーズ兄ぃ、兄ぃが来てるのに騒いですまんす」


 おいおい、父さん。

 あんた神様とまで呼ばれる人に兄ぃとか馴れ馴れしいっての!

 神罰とか受けるのは父さんだけにしてよね。


 そんな事を考えていると、カーズさんは特別気にした風も無く薄く微笑み、テーブルに硝子の小瓶を置いた。

 ……何だ、あの鮮やかな水色の液体。


「待たせたな、これは約束の物だ」

「あざっす!」


 約束の物?

 父さんはえらく嬉しそうにそれを受け取っているけど。

 ん~……、それ何だ? 裏で父さんとカーズさんは癒着でもしてたのか?

 と言うか、そもそも父さんとカーズさんの接点ってどこだ?

 何か人知れず父さんが戦い挑んでフルボッコにされてたみたいだけど……


 あまりにタイミングが良すぎる父さんのあのリタイアは、カーズさんが仕込んでいたとしか思えないんだよな。

 恐らくカーズさんは俺達の目を盗んで父さんと接触。

 父さんは腰痛だ何だと言ってたけど、たぶんその時にカーズさんに喧嘩ふっかけてフルボッコにされた……とかそんな感じがする。

 

 まぁ、父さんは意味も無く喧嘩ふっかけるような人じゃ無い(と信じたい)。

 おそらく私とアル君の事を思って戦ってくれたはずだ(と信じたい)。


 ここからは俺、じゃなかった私の憶測だけど、おそらくカーズさんが考えていた計画はこうだ。


 ソウルドレイクと戦う事でアル君の闇を炙り出し、そして私達にソウルドレイクを浄化させ、復活したブルーソウルの加護をアル君に与える。


 だけど、カーズさんの計画の中で唯一の誤算は、突如現れた父さんの存在だ。

 うちらの中で一強状態の父さんは、正直この計画だと邪魔でしかないはずだ。

 父さんの暴走モードでソウルドレイクと戦えば、カーズさんの計画が破綻するかも知れないから……


 そのためには父さんと接触して退場して貰うしか無かった。

 でも、たぶん父さんの事だから、素直にうんとは言わないでそれで喧嘩になったんだろうなぁ……

 そんで喧嘩ふっかけても勝てなかったくせに、偉そうに何かしらの対価を要求した。

 それが恐らくあの小瓶。

 まぁどうせ母さん絡みの飲み薬か何かだろう。

 永遠の十七歳でいるための若作り薬とか……


 それにしても、あくまで憶測に過ぎないがこれは無謀すぎるほどに無謀な計画だ。

 何せその計画の核がこんな元男のポンコツエルフと病みまくりのアル君だったんだから。


 とにも、これらがカーズさんが考えた計画の全容だったはずだ。


 優しくとも甘さは無い人だ。

 失敗していたらおそらく手を貸してくれる事は無く、私たち二人の未来も無かったはずだ。


 スゲェ綱渡りで父さんというイレギュラーは居たけど、私達カーズさんの期待に応えられたんじゃないかと思う。

 そんな事を考えているとカーズさんが私を見ているのに気が付いた。


「あ、えっと……その、お早うございます」

「うむ、お早う」


 そして、一瞬の間。

 えっと……何だ、この緊張してるみたいな間は。


「あ、あの~……」

「約束だったな」

「ふぇ?」

「何を惚けている? そなた達と約束したであろう。お前達二人が未来を歩めるよう、私も尽力すると」

「あ、あ~、は、はい! しました、していただきました! ……あれ?」

「どうした?」


 ……おかしい。

 確かカーズさんの課題は100階までの到達と、カーズさんに触れることだったはず。


 カーズさんがブルーソウルの魂を解放したご褒美として何かを授けてくれたのか?

 だけど、カーズさんの性格を考えたら、それはそれ、これはこれ……と言うはずだ。

 すなわち、ブルーソウルはあくまでアル君の人間性のための課題であって、私自身の課題は何一つ解決してない。

 一度出した課題を変えるとか……

 何かまた厄介な事を企んでるんじゃ無いのか?

 思わずそんな風に勘ぐってしまう。


「ふふ、失礼な事を考えているな。いや、それとも冷静な分析と言うべきか」


 カーズさんが苦笑いを浮かべる。

 何だろ、こういう風に笑う姿は、顔は似てないのにアル君とかぶって見える。


「お前達は、とくにリョウ、お前は私との約束を果たしているのだ」


 カーズさんが告げたそれは、予想外の返答であった。

前回の投稿から随分空いたしまいました……

け、決してロマサガ3が悪いとか、ブレスオブワイルドを安易に起動してまた火が付いたとかじゃないんだからね!

……ご免なさい、もう少しまめに更新出来るように頑張ります!

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