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終わりゆく世界に紡がれる魔導と剣の物語  作者: 夏目 空桜
第六章 それぞれの過去に
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増えた約束

2019/05/08に投稿した『増えた約束』を表現を中心に改稿しました。

「約束を果たしているって……え? だって、私、カーズさんには触れてるけど、100階にはまだ到達してないよ」

「うむ、それは……」


「あー! あー! 父さん良ちゃんのアロガント・スパークの後遺症があぁぁぁ!!」


「父さん五月蠅い」

「……はい」


 私に怒られてしょんぼりしている父さんはとりあえずほっといても良いとして、カーズさんを見ると何故か苦笑していた。


「え? えっと……そのシニカル的な笑みはなんですか?」

「いや、古の言葉を思い出してな」

「古の言葉?」

「親の心子知らずという言葉をな」

「えっと、それって……父さんのこと?」

「まぁ、だけど本人は……」


 カーズさんの視線を追いかけ父さんを見ると、何故かわざとらしくそっぽを向いて調子っぱずれな口笛(ガオ〇イガー)を吹いていた。


「父さん」

「ひゅひゅひゅっ、ひゅひゅひゅっ、ひゅひゅひゅひゅぴ~」

「父さん!!」

「あ、なんですか~?」

「どこの鉄矢・武田だよ、いちいちネタで反応しないでよ!」


 詰め寄る私。

 ばつが悪そうに引きつり笑いを浮かべる父さん。


「何したのさ?」

「な、何とは何の事か? そもそも何とはどこから来るのか? すなわち疑問とは一つの解を求めるだけの存在では無く、疑問を生み出す対象がいる事から生まれ落ちる……」

「訳のわからんこと言ってないでハッキリ答えなさい!」

「おおぅ……おおぅぅぅ……」


「まぁ、そう怒ってやるな。親とは多くを語らぬ生き物だ。リョウ、お前は父に愛されている。それだけを噛みしめよ」


「ぬ、ぬむぅ……カーズさんがそう言うなら」

「え~良ちゃん、お父さんの言う事は聞いてくれないのに、カーズ兄ぃの事は素直に聞き過ぎじゃ無い?」

「父さん、世の中には日頃の行いって言葉があるの。普段からでっかい子供みたいな言動ばっかりしてるからだよ」

「シドい!!」


 まったく。

 で、でも、まぁ、父さんが私のために何かやってくれてた……

 それだけは確かなんだろうな。だから……


「ありがと、父さん」

「へへ……」


 ポツリと呟くように伝えた気持ち。

 父さんは聞き逃さず照れたみたいに後頭部をポリポリと掻いていた。


「ふむ……それで良い。全てを知る事が最善ではない。相手の思いやりを察するのもまた、大人になるという事だ。さて、そろそろ話を進めようと思うのだが……ところでアルフレッドはどうした? まだ寝ているのか?」

「えっと、アル君は……」


 頑張りすぎて寝不足で起きられないとか口が裂けても言えない。

 ま、バレてそうな気もするけど。


「お早うございます」


 キリっとした感じで降りてきたアル君。

 ただ、まぁ取り繕ってはいるけど、後頭部の寝癖が直っていない辺り目が覚めきっていないのがバレバレである。


「遅いぞ」

「す、すいません」

「まぁ良い。ところで体調はどうだ?」

「万全とは言えませんが、痛みも無いので――」

「アルフレッド君!!」


 父さんがアル君とカーズさんの会話を突然に遮った。


「あ、京一さん……お早うございます」

「京一さんでは無い!」

「え?」


 お、お?

 何だまさか父さん、ここに来て娘はやらん! を発動するつもりなのか?

 ハッキリ言ってスゲェ迷惑だぞ。


 だけど、父さんの行動は私の予想に反する物だった。


「お義父さんと呼びたまえ!」

「京一さ……え? あ、お、お義父さん……」

「アルフレッド君、どうか……どうか、これからも娘を守ってやってくれ」


 え? え?

 深々と下げた頭。

 何か私の予想とは違う態度にビックリなんですが。


「良は生まれは男でこの世界とは違うところで育った。元の世界だと学生で、まだまだ中身は子供のうえにハッキリ言ってビックリするほど頭も悪い」

「おい」

「それでも、それでも……性格だけは、優しさと正義感だけは、皆に誇れる人間に……あ、今はエルフだけど、そんな男に育……、あ、今は女の子だ」

「ええい、いちいち小ボケをはさまずちゃっちゃっと喋らんかい!」

「お、おぅ! とにもだ、父親の甘い目線かも知れないが、良い子には育ってくれたと思う。命を救って貰ったからとか、助けてくれたからとか……今更の頼みで、虫が良く思われるかも知れないが、どうか……どうか娘を幸せにしてやってくれ」

「も、勿論です! こちらこそ、リョウを幸せにすると、誓わせて下さい」


 う、うぉぉぉ……

 散々父さんの小ボケが乱舞していたからどうなるかと思ったが、まさか父さんにこんな風に言ってもらえるなんて……

 何て言うか、まさか自分の将来にこんなシーンが訪れるなんて、当たり前だけど想像もしてなかったせいか恥ずかしいったらありゃしない。

 でもでも、父さんにハッキリ宣言してくれるアル君、めっちゃ格好いい♪

 や、やべっす。

 幸せで脳汁が耳から吹き出しそう♥

 う、うへへ、うへへへ……


「うへへへへへへへ」


「ま、まぁ……あそこで身をくねらせてる娘だが、よろしく頼むよ」

「え、えっと……は、はい! 頼まれました!」

「うん……さて、と。良ちゃん」

「うへへへへへ」

「良ちゃんってば!」

「ぐへへ……ハッ!? あ、えっと……何?」

「父さん、モンジロウと一緒に帰るから」

「……え?」

「えって、そりゃ向こうには綾さんと愛ちゃんを残してるからな。良ちゃんには守ってくれる人が出来たけど、綾さんと愛ちゃん、そしてモンジロウは父さんが守ってあげないとな」

「……そっか、うん」

 

 そりゃそうだ。

 父さんには守るべきものがある。

 何かこっちではしゃいでる父さんを見てたら、こっちで住むのが当たり前みたいに思っていたけど……

 そう、だよな……


 あれ? なんだろ。

 さっきまですげぇ鬱陶しかったけど、帰ると思うと凄く寂しいというか……


「こっちの世界の話や良ちゃんの背負う宿命とかはさ、父さんには正直よくわからん。わからんけど、蹴りつけなきゃ駄目な事あんだろ? だったら面倒い事はパパッと終わらせて、さっさと帰ってこい。そん時、お前達が本当に住みたい場所がどっちの世界なのか改めて考えてみると良いさ」

「父さん……うん。ちゃんと考える。そして、全部終わらせたら絶対に会いに戻るよ」

「ん……じゃ、カーズ兄ぃ、頼んます!」

「よかろう、時の扉よ!」


 地面に現れる魔法陣。

 これでまたしばらく父さん達とはお別れだ。


「さてと、あ、そうだ。モンジロウから良ちゃんに伝えたい事があるって言ってたな」

「え? モンジロウが?」

「モンジロウ、ほら」


 父さんに促されたモンジロウがもじもじしながら俺の前に出てくる。


「どうしたの、モンジロウ?」

「ひゃ……ひゃん! ひゃ……りょ、りょうしゃま、ひろってくれてありがと、ひゃんばって」

「!!!! もも、もんじろー!!!」


 うぉー! うぉー!!!

 もんじろう!!

 もんじろうぉぉぉぉぉぉぉおおぉぉぉぉっ!!

 ちょっぴりアホの子かと心配していたけど、わんこなのに、ついに人語までマスターするなんて!!

 うちの子の可愛さ世界一ィイィィィィィッ!!


「父さんは帰って良いけど、モンジロウは残っても良いんだよ!」

「りょ、良ちゃん!! そんな残虐超人も真っ青な罵詈雑言、父さん喰らったこと無いんだけど!?」

「あ、つい……」

「ついって……うぅ……良ちゃんが冷たい……」

「ひゃん」


 膝から崩れ落ちる父さんの背中にポンと手を置くモンジロウ。

 こう見ると、駄目な祖父を慰める孫娘みたいな絵面だ。


「うぅ……すまぬモンジロウ。と、とにもだ! まぁ今のがモンジロウがずっと良ちゃんに伝えたかった気持ちみたいなんだ」

「そ、そっか……うん、ありがと、モンジロウ」


 頭を撫でてやると目を細め千切れそうな勢いで尻尾を振る。

 手放したくないよぅ……


「良ちゃんが望むならモンジロウはこっちに残してあげたいけど、良ちゃんも居なくなってモンジロウも居なくなったら、綾さんも愛ちゃんも本当に落ち込むと思うから」

「そ、そうだよね」

「それに、そうなったら父さんじゃ慰められないだろうし……ふ……」

「や、あ、あ~……」


 自分で言ってダメージを喰らう父さん。何て言えば良いのか世のお父さんの悲哀を感じる。


 ……まぁ、父さんの悲哀はともかくとして、私がこっちに残るという選択は、家族が一人減ると言うこと。

 死に別れでは無い。

 だけど、選択一つで元の世界とは永遠にも等しい別れになる……

 ただでさえ手の届かない場所で心配させて寂しい思いをさせてるのに、これ以上家族に贅沢は言えない、よね。


「モンジロウ」

「りょうしゃま?」

「元の世界に戻ったら、皆の事を守ってあげてね。全部終わったら、私も必ずそっちの世界に会いに行くから」

「ひゃん♪」


 ぶんぶん、ぶんぶん……

 この喜びの表現も、しばらくは見納めか。


「じゃ、父さん達戻るわ!」

「うん、元気でね。母さんと姉さんにもよろしく。良は幸せにやってるって伝えておいて」

「おうよ!」

「あと、父さん」

「何だぁ? やっぱ寂しくなったか?」

「いや、そうじゃないとは言わないけど、そうじゃなくてね。母さんに隠れて超像稼働シリーズとか買いあさっちゃダメだよ」

「お、おうよ……あ、綾さんに怒られたくないしな」

「ふふ……うん、じゃ、またね」

「おう! おっと、そうだった忘れるところだった。モンジロウ」


 父さんの呼びかけにモンジロウは目を合わせてうなずき合った。


「さらばだ、キュアエルフ! またいつの日にか会おう!!」

「しゃよなら、う゛ぃう゛ぃっどきゅあえるふ! またね!!」

「うぉい! 外で叫んでいたのはこの練習のため、か……い」


 私の言葉が最後まで紡がれる前に、光が溢れ、そして二人は消えた。

 まるで、そこには最初から誰も居なかったみたいに……


「リョウ……」

「えへへ、大丈夫。寂しくないって言ったら嘘になるけどさ……」


 そう、これで良いんだ。

 こっちの世界に来た時から覚悟はしてたんだ。

 それが、奇跡が起きて父さん達に再会出来ただけ。

 

 それに……


「さ、アル君。張り切って宿命に蹴りつけよう!」

「そうだね、そしてお義父さんやお義母さんに会いに行かないとね」

「うん!」


 それに、さ、

 また一つ、元の世界に会いに行く約束が増えちゃったんだもん。


 忠犬のためにも頑張って終わらせないとな!

次話から、京一編がスタートします。

京一、動きます。

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