第201話『だって言ったら笑われるもん』
「じゃあ行くぞ」
声をかけてやる必要性はなかったが、なんとなく雰囲気に従ってビャッコに宣言。
俺は空間スキルからブラックドラゴンソードを取り出して武装する。
聖水攻撃が有効でないなら、こっちも武器を持っていないとさすがに不安だ。
「なかなかいい剣を持ってるね? 強度だけなら聖剣にも劣らないように見えるよ」
俺の取り出した剣をまじまじと見つめ、ビャッコは感心したように言った。
「よくわかったな」
リクと打ち合ってもビクともしなかったブラックドラゴンソード。
なかなかの慧眼だな……と思ったが、こいつは鑑定のスキルがあったんだ。
「ま、聖剣は強度だけがすごくて聖剣と呼ばれてるわけじゃない。聖剣が持つ特異性はさすがに付帯してないようだから助かるよ」
聖剣について俺の知らない豆知識を教えてくれるビャッコ。
リクが持ってるあの剣ってシンプルにいい剣って以外にも他にもなんかそう呼ばれる理由があったのか……。
今度機会があったら詳細を訊いてみよう。
ビャッコは無手のまま弓を射るようなポーズを取って俺に相対する。
そして、
「『インドラ』」
そう呟くと、彼の手から金色に輝く矢が見た目通り光の速さで俺に飛んで来た。
光魔法の結界を瞬時に展開する。
嫌な予感がしたので複数枚の同時展開にしておいた。
パリンパリンパリンッ。
ブラックドラゴンのブレスのときのように結界が次々と破られていく。
ただ、その結界破りも三分の二ほどで勢いを削がれ、ブラックドラゴンのブレスと違って俺のもとに届くということはなかった。
どうにもヤツの豪雷魔法というのは勇者のチートと同じく一点物のスキルのようで普通のスキルのLV5単独より強い力のようだ。
普通の攻撃ならLV5の力で作った結界を複数枚なんて必要ないだろうし。
「竜をも容易く屠る雷の矢を防ぎきるとはね……。魔法の結界も習得しているなんて、君は一体何の力をもらってこの世界に来たんだい? ボクの鑑定レベルじゃ、一部しか見ることができないくらいスキルに溢れていたけど」
ビャッコは呆れたような笑みを浮かべて言う。
答えねーよ。
だって言ったら笑われるもん。
「というかさ、この部屋だと狭いし、よかったら外に行かないか? 広々戦おうぜ?」
「ハハッ、それは断るね。君はここだと神殿の崩落を気にして広範囲かつ高出力のスキルを使いにくいだろう?」
「…………」
俺は提案を蹴られて押し黙る。
そうなんだよ……ウレアにあった魔王城と違って大聖国の権威ある建造物の大神殿をぶっ壊したら、いくら魔王から国を救っても大聖国民に理屈じゃないモヤッと感を残しちゃうと思うんだ。
宗教相手には僅かなしこりも残しておきたくないっていうかさ……。
考えすぎかもだが、でも確実に恩義を感じてもらえる度合いは減るだろうし。
いや、そんなこと言ってられないほどの状況ならなりふり構わず戦うけど。
頑張れば神殿を壊さずに完勝できそうな感じだからちょっと抵抗あるんだよ。
「どうやらボクは舐められているらしい。しかし実際、それくらいの差はありそうだ。だから、君が余裕ぶっているうちに勝ちを拾わせて貰うよ」
ビャッコは俺との力量差を察し、あわよくばパーフェクトゲームを俺が狙っている隙を突こうとしている。
「『アストラ』」
今度は彼の頭上に巨大な銃弾のような……いや、ミサイルと形容すべき形状をした金色の物質が構築された。
ビャッコが方向を指図するように手の平を俺に向けると、そのミサイルの形状になった金色の塊はやはり光速で俺に飛んできた。
パリンパリンパリンパリンッ――
今度は多重に張った結界をすべて突き破ってきたので反射的に俺は剣でそれを斬り裂く。
「まさかこれも無効化できるのか……!?」
ビャッコが目を見開いて驚いているが、俺も驚いてるよ。
すげえなブラックドラゴンソード、雷を斬れたぞ。
尻尾の骨がこんなすごい武器になるってアイツマジでとんでもねえな?
まあ、俺の剣術スキルで上手く角度を合わせたからってのもあるだろうけど。
通電しないのは助かる。




