第十四部【攻略対象者編】『柊木冬夜の心情』
柊木冬夜視点。
騒動の時の心情。
僕には優秀な兄がいる。
雪夜兄さんは僕の自慢の兄さん。
だけど教育に厳しい両親に
兄さんと比べられて、
いつからか兄さんは僕にとって
最大のコンプレックスになっていた…。
兄さんはなんでも卒無く熟して、
だけどその影でたくさん努力する人だ。
そんな兄さんに憧れて真似たけど、
僕は兄さんのようにはなれなかった。
この学園に入学したのも、
雪夜兄さんが卒業した学園だったから。
兄さんが主席で入学したのに対し、
僕は本番でケアレスミスをして学年2位だった。
雪夜兄さんが新入生代表として
立ったステージに僕も立ちたかった…。
風紀部に入ったのも、
雪夜兄さんが学生時代に
風紀委員長として貢献したから。
僕も雪夜兄さんのように、
風紀委員長になりたくて
学園の規則に沿った学園生活を送り、
風紀の乱れを正し、風紀部に貢献した。
一年の月日が経ち、
風紀委員長が決められた。
…選ばれたのは僕ではなかった。
どんなに努力しても
一番になりきれない自分が嫌いだった。
その年、雪夜兄さんが
新任教師としてこの学園に来た。
兄さんに情けない姿を見せるわけにも
いかないのでそのまま風紀部に所属した。
(…来年は風紀委員長になれるかもしれないしな!)
『痛ったぁ!』
新入生の女子が僕の前で転んだ。
僕はその女子に手を差し出した。
「大丈夫ですか?1年の教室は向こうですよ。」
何故か2年の教室へ繋がる廊下へ来た女子生徒。
靡く黒髪が美しく見とれてしまった。
よく見ると清爽な顔立ちをしていた。
『あ、すいません!ありがとうございます!』
女子生徒は僕の手を掴み起きあがる。
(…手、小さい)
思ったより小さく簡単に折れてしまいそうな
か細い手を見て少し心配になる。
(女子とはこんなに脆いものなんですね…)
『…あの…道、間違えちゃったみたいで
1年生の教室ってどこですか?』
1年の教室と2年の教室は逆方向…
案内の紙が貼ってあるはずなんですが…
この女性は相当抜けているのでしょう。
「ここからだと説明しても解りづらいですね…
なんだったら教室まで案内しますよ。」
『!ありがとうございますっ!』
その満面の笑みに僕は一目惚れした。
それが彼女…晦との出会いだった。
晦が学園で同級生に虐められた。
その同級生の名前は四季閏。
可愛らしい顔立ちだが
無表情で何を考えているのか
わからない不気味な女性…。
今年度の主席で特待生入学をした生徒。
学園では品行方正な姿勢の彼女…
そんな彼女が何故、虐めなんかを?
晦に原因はもしかしたら
自分と仲のいい誰かのことが
好きで妬まれてるかもしれないとのこと。
(『女の妬みは怖い。』
と聞きますが、これは厄介ですね…。)
なにしろ、相手が普段は品行方正で優秀な生徒…
一、生徒である晦が抗議しても
教師も他の生徒も彼女を信じるでしょう。
その件に関して晦は生徒会長にも話したようで
後日、臨時生徒総会が行われた。
僕は証人としてその場に立ち晦の味方をした。
そこには生徒会長以外に晦の同級生で、
いくら注意しても髪色を直さず、
喧嘩に明け暮れ学園の風紀を乱す
問題児で有名な榎月夏目の姿もあった。
(…ライバルだが、
晦を守ることに対しては心強い味方だな。)
臨時生徒総会のあと、
晦に謝りもしない彼女は一部の生徒に虐められた。
それでも反省の色が見せない
彼女は相当図太い神経の持ち主のようだ。
後日、生徒会長が彼女を呼び出した。
晦が階段から落された件について
話すために呼び出したのだと思う。
だけどそれを無視して帰ろうとする
彼女を榎月と一緒に抑える。
(折角晦に免じて大事にしないであげたのに
晦の優しさにつけあがって…)
「生徒会室に行かないのなら
此処でお話ししても良いのですよ?」
『2人ともぉ閏ちゃんが
怖がってるからやめてぇ…私は大丈夫だからぁ…』
四季なんかの心配をするなんて、
晦はとても優しい…彼女にも見習って欲しいものだ。
痺れを切らした
生徒会長が教室までやってきた。
「せっかく、晦が人目に当たらぬよう
生徒会室で話をしようと言ってくれたのに
その優しさを仇で返すとは…愚かですね。」
『秋人先輩ぃ私の為に来てくれてありがとぉ
それに夏目くん冬夜先輩ぃごめんね巻き込んで』
「いいんですよ寧ろ頼ってくれて嬉しいです。」
(晦が頼ってくれたことが嬉しいんです。
晦が謝ることなどありません。)
そんな僕らを傍目に
帰り支度をする四季閏…。
『もう我慢できない!私がいくら酷いこと言われても、
酷いことされても我慢できるけど
みんなのことを馬鹿にしたことは許せないっ!
閏ちゃんがそのつもりなら…
私っ…ここで閏ちゃんにされた事全部話すからっ!!』
その人を舐めた態度に、
馬鹿にしてる態度に優しい晦が怒った。
「そうですね。四季には解らせた方が良いです。」
「何を解らせるんですか?」
それでも自白せず、知らないふりをする彼女。
「しらばっくれてんじゃねーぞ!
テメェが晦のもの奪ったり、
階段から突き落としたりしたんだろっ!」
「身に覚えのあることと、ないことがあるのですが。」
「ほらやっぱり。」
『ひどいよぉ閏ちゃん…』
晦が彼女の自白を聞いて涙を浮かべる。
「では私がやったという証拠は?」
「「「は?」」」
「赤猿…げふん、一般生徒である榎月夏目は兎も角、
学園の生徒の見本であるべき生徒会長や
風紀を守るべき風紀委員が証拠もなく憶測でものを言い、
一般生徒であり、か弱き女性をまるで魔女狩りの如く
裁くなど…まさかとは思いますがしてませんよね?
確たる証拠があって無関係な生徒の前で
私の罪とやらを暴いているのですよね?」
「魔女狩り?これは正当な裁きです。」
何を言っているんでしょうか彼女は?
「中世ヨーロッパでは多くの女性…時には男性が
魔女とされ、拷問にかけられ殺された。
まさに今この場もそれと同じく、
罪無き乙女を民衆の前で
魔女と罵り刑に処すかの如く、
一般生徒の前で私を蔑むんですもの。」
僕の目を真っ直ぐに見る彼女。
…間違いなく僕に向けて言っているのでしょう。
…だけど
『それにさっき覚えあるって言ってたじゃない!』
そう彼女は自分でそう証言したのだ。
「えぇ。言いましたよ。」
悪びれることなく開き直る。
「証拠は無くとも、お前自身が証言したんだ。
お前の方が余程愚かじゃないか。」
「何か勘違いされてませんか?
確かに階段から突き落とされたことは
身に覚えのありますが、彼女の私物を窃盗した覚えはありません。」
「その言い方じゃ、まるで晦が
貴女を突き落とした見たいじゃないですか!」
なんてことでしょう!
謝罪の言葉を口にせず、
開き直った上、晦に罪を着せるなどっ!
許せません!
「『まるで』ではなく実際そうなんですよ。
以前彼女に呼び出されて突き落とされたんです。」
彼女の取り出したものは小型のレコーダーだった。
その内容は晦が彼女を階段から突き落としたことや、晦が『ハルタ』という男や
雪夜兄さんを自分に惚れさせようとする。
という酷い内容だった。
「わざわざ証拠を偽造するなんて…そこまでして僕達に気に入られたいのですか?」
そこまでするとは
『女の妬み』とは恐ろしいですね。
「このボイスレコーダーは特殊で
探偵や警察などが実際に使う為、
確たる物的証拠となるよう加工及び
偽造工作が出来ないものなのですが…
そう言うと思ったのでこちらを用意しました。」
そう言って彼女は鞄から
ボイスレコーダーの内容が
偽造されていないことを証明すると
書かれた証明書を僕達に見せた。
「どうせその紙も偽造したんだろう。」
「まぁ、そう言うと思ってましたよ。
なんだったら確認して下さっても良いのですよ?
ねぇ?十二月三十一日晦さん?」
『…ぁ、確かあの時ぶつかっちゃったけどっ
まさか階段から落ちちゃうと思わなかったんだもん!』
「晦…?」
「そうですか…怖かったでしょう。
確かに突き落とされたことは事故だとしても
晦の私物が無くなったのは事実です。」
晦に声をかけて安心させる。
会長は密かに
晦に対して不信感を抱いたようです。
(…最後まで晦を信じてあげないなんて。
酷い男ですね。)
確かに晦が彼女を階段から落としてしまった。
でもそれは事故で故意的なものではない。
それにまだ晦の私物が消えたことに
関して何も解決していません。
彼女の疑いは晴れてません。
「十二月三十一日晦さん。
私が貴女の私物を盗む所を一度でも目撃しましたか?」
『そんなのしてないわよ!アンタに決まっ…
…私が嫌いだから私のもの盗んだんでしょ?……ひどい…
私、閏ちゃんと友達になれると思ってたのにっ!』
「私が貴女を嫌っている?
別に嫌いではなかったですよ?
友達になりたいとは思いませんが。」
「話しを逸らさないで下さい。
あなたが晦の私物を盗んだんでしょう?」
「いいえ。盗んでませんよ?」
『じゃあ誰がやったって言うのよ!』
「…一応誰が盗んだか知ってますが」
「なんで知ってるんですか?あなたが盗ませたんじゃ…」
「いえ、彼は自らの意思で盗みに働いてました。
私が知っているのは…偶然現場を目撃してしまたんですよ…
…一応その時、止めるように言ったので
それ以降は物がなくなったことはないかと…」
自らの意思で…晦の物を盗んだ…?
「ある少年…実名を出すわけにもいかないので
少年Aとでも言いましょう。少年Aは学園のマドンナである少女のファンの1人だった。ある日少年Aは彼女の落とした消しゴムを拾った。憧れの彼女の物が欲しくなってしまってそのまま消しゴムをポケットに隠した。盗んだことがバレるかと最初は怯えていたがバレなかった。…それから彼女の私物を盗んでは家に持ち帰った。私が目撃したのは少年Aが教室で彼女の体操着に顔を疼くめ……
『いやぁぁぁぁあぁああ!!!』」
その内容は男の僕でさえ悪寒がするものだった。
晦は耐えきれず悲鳴をあげた。
「なんの騒ぎだ?叫び声が聞こえたんだが…」
騒ぎを聞いて駆けつけて
雪夜兄さんが教室へ入って来た。
怖がる晦を慰めようと手を伸ばす。
…その手は宙を舞った。
『雪夜先生ぇ助けて!私怖いっ!』
「ぇ、晦?」
「……また、お前か十二月三十一日。
それと何度も言ってるが下の名前で呼ぶな。」
僕ではなく雪夜兄さんの元へかけていく晦…
それが晦が上目遣いで
兄さんに迫るように見えた……。
(…自分が頼られなかったからって、
僕は何を考えているんでしょう…最低です。)
「雪夜兄さ…柊木先生、
彼女誰かに私物を盗まれてるんです。
その犯人を四季が知っているのですが
匿名で誰が盗んだのか教えないんです。」
動揺している晦のため
僕が変わりに兄さんに説明した。
…つい、いつもの癖で
『雪夜兄さん』と呼びそうになった。
「…冬夜、お前、
この状況で犯人を引き出すつもりか?」
「…?そうですが?」
何を当然なことを
聞いているのでしょう?兄さんは。
「よく考えてみろ、いくら物を盗んだといって
こんな場所で告発されたらそいつの今後の学園生活はどうなる?」
「晦の私物を盗んだんですよ。そのくらいの処罰は当然の報いです。」
「……本気で言ってんのか?」
その声に、その表情に、
呆れと少しの嫌悪感が滲んでいた。
(…僕は何か間違えている?
兄さんに嫌われるようなことを仕出かしている…?)
『先生っ!私っ怖いんです!
誰かが私のもの盗んで…お願いっ先生っ私を守ってぇ…』
「……はあぁ、十二月三十一日…
お前は後で生徒指導室に来い。
少し聞きたいことがある。」
『っ!はぁい!』
晦は瞳に熱を灯し
まるで愛しい人を見つめるように
兄さんを見て頬を赤らめた。
(…嗚呼、そういうことか。
僕はがこんな馬鹿な女に
うつつを抜かして自ら風紀を乱していたからか…)
雪夜兄さんの一言で、
僕は初めて自分の愚かさと晦の本性に気づいた。
「あと四季は後日、
十二月三十一日の私物を盗んだ奴を教えてくれ。
生徒指導の元、厳重な処罰を下すから。」
「わかりました。柊木先生。」
僕はずっと一緒だったからわかるけど、
兄さんは四季さんを信頼してる。
だから他の生徒より気さくな感じだ…。
『ちょっと、なんで先生だけフルネームで呼ばないの!
私の先生に気安く話しかけないでよぉ!』
晦が四季さんに対して文句をつけた。
(…誰が『あなたの先生』ですか?僕の兄さんがあなたみたいな愚かな人間のものになるわけがないでしょう。)
「…は?」
「ハァ…誰がお前のだ。」
その証拠に兄さんも少し機嫌が悪い。
四季さんも否定した!
(…ハッ!もしや、二人は両想い?
それならば四季さんは未来の僕の姉…?……義姉さん?)
『な、なんでぇ!?好感度が足りなかったの?!
これも全部アンタのせいよっ!!』
一人で考え混んでいると
晦が二人の仲に嫉妬して、
四季さんに鬼形相で迫っていた。
右手を高々と上げる晦。
それを受け止め四季さんを庇う男子生徒…
(…誰でしょう?何故か四季さんに親しげですね…
ちょっと近すぎやしませんか?
四季さんは雪夜兄さんの嫁ですよ?)
『なんでよっ!なんで!なんで!なんで!
なんでなんでなんでなんでなんでなんでっ!!』
晦さんが狂ったように叫ぶ。
その姿は最早、百年の恋も一瞬で醒めるものだった。
そしてあろうことか彼女は落ちたカッターを……
『…そうよ。アンタが死ねば私の思い通りのまま!皆私を愛してくれる!だってこの世界は女神様が不幸な私にくれた『ゲーム』の世界なんだもん!!邪魔な『バグ』は死ねっ!!』
四季さんに向けて振りあげたのです。
雪夜兄さんと先程の男子生徒が
動ごいたが間に合わず彼女は顔に傷を負った…。
(…まさか、『キズモノにした責任』をとって
結婚するつもりなのか!流石兄さん!)
その後、四季さんに好意を寄せているであろう
榎月夏目を軽く払い
四季さんを保健室へ連れていく兄さん…。
(…流石です雪夜兄さんっ!どこから計算だったのでしょう?僕は全然気づきませんでした。四季さんを手に入れるためにここまでするなんて…兄さんは本気なんですね!ならば僕も全力で兄さんを手伝います!)
四季さんが義姉になるのはそう遠くないでしょう。
なんたって僕の兄さんが本気なんですから!
恋愛END【兄さんと共にEND】
(■条件3『柊木冬夜』の好感度70%以上)
【クリア達成!】
やっとここまで書けました!
この辺の下りを書かないと
『隠しキャラ』の話しがかけないので…
次から本編の
第2章みたいなものを書いていく予定です。




