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31 時間差攻撃

 31 


 僕は46歳になって早半年が過ぎた。少し前までは“アラフォー”だとか言われていたが、もう“アラフィフ”の仲間入りだ。


 見た目、平均より若いよね、なんてお世辞交じりに周りから言われることが多かった記憶があるのだが、昨今は鏡に向かうたびに年齢とし相応の自分がいることに気付くようになった。


 先日、高校時代からの友人の一人と会ってじっくり話す機会があり、元友人(※数年前から故意に連絡を取らなくなったヤツ)の話題が持ち上がった。


 その元友人というのは、言うなればワガママで定職にいまだ就かず、かと言って自分から何かを起こそうという裁量があるわけでない、それで何か目立った長所があるわけでもないそんなやつ。

 さらに、容姿に恵まれているわけでもコミュニケーションに長けているというわけでもない、しかしそれなのに人一倍プライドが高く、他人の言葉に耳を貸すわけでもない。


 いうなれば、一番人として付き合いづらいタイプなわけだ。


 しかし、そんな男でも昔は友人だった。 


 自分たちにとって友人というのは、上でも下でもない、良いところも悪いところも何も含めてのものだった。


 しかし、あることを切っ掛けにその元友人は僕に対し決定的となる逆ギレを起こし、それ以来友人であることを辞めた。


 それが丁度、十年前。


 そしてその十年もの間に、その元友人は数々の友人から仲違いの諍いが原因で見放され、今日に至っている。


 ☆☆☆


 そして先日会った友人曰く、


「なんであんなんなっちまったんだろうな……」


 しかし、その友人がその言葉を発すると、僕は以前から思っていたことを話した。


「いや、奴は前々からあんなヤツだったんだよ」


 ☆☆☆


 そう、その友人も僕も、もう結構ないい歳のおっさんなのだ。まだまだ、それこそまだまだ分からないことだらけだが、それなりに人生経験を積んで生きてきたのだ。


 しかし、その《元友人》は全てを受け入れられず、耳を貸さず、自分という器さえも見誤ったためにこうなっている。


 時間ばかりが通り過ぎ、体だけが老いた子供の姿がそこにあるだけなのだ。


 ☆☆☆


 先の友人が発した言葉、


「なんであんなんなっちまったんだろうな……」


 は、僕に言わせれば“なった”のではない。


「俺たちが少しだけ先に進み、ヤツはあの頃のままなのさ」


 というわけだ。


 時間差攻撃。


 人にはそう見えるだけ。ただの錯覚なのさ。





   

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