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なりたい職業ランキングで『冒険者』が一位から陥落した  作者: ミソネタ・ドザえもん
第二章:英雄候補生

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20/23

20.爆発

 王都出発から数十時間、馬車移動の間、転寝を掻いていたら、気付いたら外はすっかりと真っ暗になっていた。


 明りのない中、一面真っ暗闇の世界の中、向かいの席からスース―と寝息が聞こえてくる。

 どうやら、長時間移動のおかげでエリスも眠りについてしまったらしい。


「今は一体、どの辺だろう?」


 馬車移動であることを加味すると、そろそろニトロコングの生息地に足を踏み入れていてもおかしくはない。

 馬車の窓から外を見ると……森の間を抜ける林道を走っているのか、鬱蒼と生い茂る木々が微かに見えるだけだった。


「……もう少し寝ているか」


 暗黒に包まれた世界をしばらく見ていたら、再び眠気に襲われ、そう思った矢先だった。


 ドゴオォォ!


「うわっ!」


 地を割く程の衝撃音が、どこからともなく鳴り響いたのだ。

 馬の悲鳴が聞こえた後、馬車は左右にしばらく揺さぶられた後、完全に制止した。


「カイルさんっ!」


 いつの間にか、エリスが目覚めていた。


「あれっ!」


 エリスが指さした方向には……空一面の星々。

 そんな星々に混ざって……灰色の煙が見て取れた。


 まもなく、俺の鼻腔を硝煙の香りがくすぐった。


「……出たな」

「えぇ、準備は万端ですか?」

「……ああ」


 俺は馬車の扉を開けて、両足に力を込めた。


「行ってくる!」


 そして、煙の上がる方向に全速力で走り出した。


 エリスは多分、後ほど俺の後を追ってくると思われる。だから、とりあえず俺が先陣を切って、件の魔物に突っ込むことにした。


 空を覆う程、高く太く伸びた木々の枝を避けながら、全速力で煙の方へと走り続けた。

 徐々に硝煙の香りが強くなっていく。


「いた……っ!」


 暗闇に慣れ始めた瞳が、眼前にいる魔物を捉えた。


 深紅の毛並み。

 屈強で筋肉質な前腕。

 人よりも少し短いながらも、人の胴体程太さのある脚。


 ……間違いない。


「こいつが、ニトロコング……っ!」


 奴の攻撃手段は爆炎。

 迂闊な接近は禁物。


「ゴオオオオォォ!」


 そう思っていたのに、奴に俺の存在を悟られてしまった。

 雄叫びをあげた後、ニトロコングは目にも留まらない速さで俺に迫った。


 避ける……っ!


 ギリギリまで魔物を引き付けようとした、丁度その時……眼前が真っ赤に発光した。


「あつっ……!」


 爆炎だった。


 先日、王都で焼けている家屋に突っ込んだ時以上の熱量だった。

 もう数秒回避が遅れれば、全身黒焦げになっていた。

 ニトロコングが爆炎に視界を取られ、俺を見失っている間に、俺は奴から距離を取った。


 ……なるほど。


 確かにこれは、遠距離攻撃が定石とされた意味も理解出来るな。

 エリスからの事前情報もあり、これまで一度も相対したことがない魔物ながら、おおよそニトロコングの特徴を理解したつもりだった。


 ……しかし。


 夜間にも関わらず距離のあった俺を捉えられた視界の広さと暗闇でも利く目。

 そして、一瞬で俺の目の前に迫ってきた人間の比ではない身体能力。

 ……爆炎も、ノーモーションで放つことが出来るとは思っていなかった。


「こいつを、一日足らずで討伐しないといけないのか」


 ……まったく。面倒なクエストを受注してしまった。


 俺は苦笑した。

 しかし、そんな苦笑をしている暇はなかった。

 俺から見てニトロコングの奥の林が、ガサゴソと揺れ始めたのだ。


「カイルさ……っ!」


 全身の血液が沸騰していくのがわかった。



「エリスッ!!!」



 俺は全速力で駆け出し、ニトロコングの脇を抜けて、エリスに迫った。


「きゃっ!」


 彼女の悲鳴は、俺が逃走するべく彼女を抱きかかえたため。


「ぐっ!」


 俺が悶絶したのは、背中に衝撃が走ったため。

 ジンジンとする痛みだった。火傷ではない。打撲の痛みだ。


 恐らく、ニトロコングに殴られた衝撃で……俺はエリスを抱えたまま、数メートル吹っ飛ばされた。


「ごほっ! がはっ!」


 咳。吐血。


「か、カイルさん! 大丈夫ですか、カイルさん!」


 大丈夫だ。声にはならなかった。


 ……背後から風を感じた。

 ニトロコングが迫っている……っ!


「きゃあっ!」


 俺は再びエリスを抱きかかえて、右方向にダイブをした。

 途端、背後でとてつもない熱量を感じて……俺は爆風に吹っ飛ばされた。


 一体、どれくらいゴロゴロと転がったのか。


 最終的に俺は、背中から木に激突した。


「……大丈夫ですか?」


 エリスの声は掠れていた。彼女も直接ではないが、ダメージを負ったらしい。


「骨が折れたかもしれない」


 俺は立ち上がった。


「大丈夫だ」

「骨が折れたんじゃないんですか?」

「ああ、でも骨が折れたくらいなら大丈夫だ」

「大丈夫の基準は人間の基準に合わせてください」

「……立てるか」


 俺はエリスに手を差し伸べた。

 彼女は俺の差し伸べた手を見た後、地べたに手をついて立ち上がった。


「その手はセレスティアさんのものなので」

「は?」

「ヒーリング魔法は要りますか?」

「不要だ」

「そうですか」


 エリスは泥がついたスカートを手でパッパッと払った。


「弱りましたね」


 エリスはいつになく弱気の声を発した。


「ニトロコング、想像以上です」

「確かに、あの爆風は厄介だ」

「やっぱり正攻法通りの攻め方をしますか?」

「……いや、わかったことがある」


 俺の言葉を聞いて、エリスは目を丸くした。


「え、もしかしてカイルさん。何か作戦を思い付いたんですか?」

「ああ……」


 俺は口についた鮮血を指で拭った。


「それじゃあ、反撃開始と行くか」


 俺はエリスと手短に作戦会議を行った。

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