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なりたい職業ランキングで『冒険者』が一位から陥落した  作者: ミソネタ・ドザえもん
第二章:英雄候補生

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10.インタビュー

 エリスの呼んだインタビュアーの到着は、予定より三十分以上後のこととなった。


「いやー、遅くなってごめんごめん!」


 しばらく待ちぼうけを食らった俺達の目の前にやってきたのは、一人の女性。俺達へ向けた対応的に、恐らく彼女が今回のインタビュアーなのだろう。


「遅いよ、パラボラ」


 エリスの口調が、俺に接する時のようなかしこまったものではないことに気が付いた。


「ごめんごめん。うっかり寝坊を……」

「まったく。あなたの寝坊癖も相変わらずね」

「えへへ。エリスが良かったら、また前みたいに起こしに来てよ」

「嫌よ。もう子供じゃないんだから、一人でちゃんと起きて」

「えー? 相変わらず厳しいなぁ、エリスは」

「あの……」


 エリス達が二人で盛り上がったせいで、俺はすっかり置いてけぼりを食らっていた。


「あ、カイルさん。ごめんなさい。彼女の紹介が遅れました」


 エリスは少し申し訳なさそうに頭を下げた。


「彼女の名前は、パラボラ。職業は冒険作家です」

「冒険作家か」

「はい。彼女は冒険者ギルド発行の情報誌のコラムも担当していて、あなたには今日、そのコラム用の取材を受けてもらうことになります」

「よろしくね、カイルさん」

「よろしく」


 挨拶も程ほどに、俺達は早速取材を始めることにした。

 俺とパラボラさんは、向かい合うように椅子に腰を下ろした。


「ふふっ」


 対面したパラボラは、意味深に笑い出した。


「ああ、ごめんなさい。まさか、こんな有名人に取材させてもらえるなんて、光栄で」

「有名人?」

「ええ、有名人です」


 パラボラは頷いた。


「あなたは、あの崇高なる希代の英雄、ナイル・ドゥランの実の息子。この冒険者ギルドが長らく探し求めた、次世代の英雄候補生ですもの」


 俺は難しい顔を作って黙りこくった。


「しかも、先日は冒険者ギルドに登録するや否やのタロー村での大活躍。あなたの名前は、早速王都でも轟き始めています」

「タロー村での惨劇にも目も暮れず、活躍だなんて表現はやめてくれ」

「あ……。なんかすみません」


 タロー村は、今や存続さえ危ぶまれるような状況だ。

 生き残った村長は、その状況を憂いて、俺に救われた意識なんて一切ない。いや、村長以外だってそうだ。あの惨状を目の当たりにして、それでも俺の功績を称えてくれたのは、セレスティアの両親だけだった。


 ……俺でさえ、タロー村の惨状。そして、その惨状を招いた張本人が俺であることを鑑みて、気軽にあの話を振ってほしくないと思っているくらいだ。


 だから、パラボラの言い振りには、素直に気分が悪くなった。

 俺の反論のおかげで、場の空気は悪くなった。


「……あの、カイルさんは、どうして冒険者を目指したんですか?」


 気まずい雰囲気の中、パラボラは職務のため、俺に質問を投げかけた。


「……その場の流れだ」

「え?」

「断り切れなかった。それだけだ」


 セレスティアとの関係は、初対面の相手に無闇に語りたくはなかった。茶化されるのが嫌だった。


「……じゃあ、お父さんのことはどう思っているんですか?」


 俺はパラボラの質問を聞き、少し悩んだ。

 思えば、父を亡くして以降、父に対する感情を自らに問いかけたことがなかったのだ。

 父が生きている頃には、俺にとって父は、ただの憧れの存在だった。目指すべき存在だった。

 ……しかし、今は。



「愚かな人だったと思う」



 父は英雄と呼ばれた男だった。そんな男に向けて言うには、酷い言葉かもしれない。

 でも、仕事を優先するあまり、自らの命を落として、家族である俺の生死さえ危ぶむ事態に陥れた。

 そんな父の状況を客観的に分析したら、内心でふつふつとした感情が沸き始めてきた。


「そうですか。……お父さんのことは、尊敬していないってことですか」

「そういうわけじゃない」


 俺は首を横に振った。


「……いや、やっぱりそうかもしれない」


 自分の気持ちは、どうにも上手く言葉には出来なかった。


 しばらく重い空気の中、俺達は取材を続けた。

 取材の形は、序盤と同様、パラボラの一問に、俺が一答していく形で進行された。


 正直、仕事とはいえ、自分の近況や考えを、見ず知らずの人に根掘り葉掘り聞かれる状況は、あまり気分の良いものではなかった。


「すまない。取材はまだ続くのか?」

「そうですね。もう少しですかね」

「……一度、トイレに行かせてくれないか?」


 俺は、少し気疲れしてしまっていた。


「わかりました。どうぞ」


 パラボラの了解を得て、俺はトイレに向かった。

 そして、ため息を吐きながら用を足したのだが、気疲れを快復するためにトイレに寄っただけのため、トイレからはすぐに出ることになった。


「エリス、どうするの、これ」


 トイレの外に出ると、酒場の方からパラボラの不機嫌そうな声が聞こえてきた。


「あなたの要望でカイル・ドゥランを取材させてもらったわけだけど……こんなの誌面に載せる気?」


 パラボラは、恐らく俺がこんなにも早くトイレから出てくるとは思っていなかったのだろう。


「冒険者を目指した理由は成り行き。偉大な父のことは愚かだと思う。理想とする冒険者像は特にない。……まったく、時間を無駄にしたわ」


 如何にもな愚痴を展開していた。


「まあまあ、そう言わないでよ。パラボラ」

「エリス。あたしは、あのナイル・ドゥランの息子で英雄候補生だと言われる男だと聞いたから、今回の取材に応じたの。それが、何よこれ。こんなの……美談でもなんでもない。誰だって言える発言のオンパレード。あたし、仕事には実直なんだよ? こんなつまらない話をコラムに書いて、この枠を別の人に取られるわけにはいかないの。あたしだって生活がかかっているの」

「……気持ちはわかるけど」


「……そもそも、さっき彼が語った内容なんて、この国の人間が誰一人として望んじゃいないわ」


 パラボラの愚痴を遠くから聞きながら、俺は彼女達の元に戻る選択肢を取れないでいた。

 パラボラの発言がショックだったわけではない。


 いや、少しは堪える部分もあったが……ただ、わかりきっていたことだった。

 今の俺の考えが、英雄には相応しくないことも。あまりに、受動的すぎるということも。


 だから、今俺が、この場を動けず、俯いている理由は、パラボラの発言がショックだったから、というわけじゃない。


 むしろ、考えこんでしまっているのだ。

 パラボラの言うことは、正直一理あると思う。


 国民は。

 パラボラは。


 ……エリスは。


 今回の取材、ここまで俺が発するような言葉の数々は、一切求めていないのだろう。


 ……なら。

 なら、この国の人間が望む、俺へのインタビューとは、一体何なんだ!?


 偉大なる父の後を継ぎ、誉れある英雄を目指すとでも言えばいいのか?

 救える保証もないあまたの人の命を、この身一つで救ってみせると、声高らかに宣言してみせれば、気が済むのか?

 そんな出来もしないこと、無責任に発言出来るわけがないではないか。


 皆が、一人の人間であるように……俺もまた、ただの一人の人なのだ。


 出来ることは限られているし、出来ないことは積極的にはやりたくはないのだ。


 ……どうして人々は、英雄に対して、無償の奉仕を求めるのだ。


 英雄の最期、あなた達は何一つとして彼らに、何も与えない癖に……。


「すまない。遅くなったな」


 パラボラの愚痴が止んだタイミングを見計らって、俺は彼女達の元に戻った。

 それからしばらく、俺達はまた、退屈な取材の時間を進めていった。


「はぁ……」


 取材後半、パラボラはメモ書きをしながら、あからさまなため息を吐き始めた。

 遅刻もそうだが、この人は結構、態度に出やすい人間なのかもしれない。


「もうそろそろ、取材から二時間ですね」


 俺達の取材の成り行きを見守っていたエリスが、声を発した。


「あー、本当。もう良い時間ですね」


 パラボラは、俺に微笑みかけた。


「カイルさん、今日はありがとうございます。とても貴重なお話が聞けて、正直、とても楽しかったです」


 丁寧な口調は、わかりやすいお世辞だった。


「こちらこそ……」


 大した話が出来なくて申し訳ない、と言いかけて、止めた。

 俺は自分の主張を曲げなかっただけ。

 自分の意思を貫いただけ。

 謝る必要が、どこにある。


「……んー。すっかり体、固くなっちゃった」


 パラボラは、酒場の窓から外の風景を眺めながら、体をほぐしていた。


「……あれ」


 リラックスしていた様子のパラボラは、異変に気付いた。


「ねえ、エリス?」

「何?」

「あれ……火事じゃない?」


 火事と聞いて、エリスは血相を変えて窓の方へ向かった。

 俺も、彼女に続いて窓辺に近寄った。

 王都では至るところで色んなものを燃やすため、街中には常にすすの黒煙が薄く立ち上っている。

 その中に一か所、いつもよりも十倍……いや、それ以上に濃い黒煙が上っている場所が、視認出来た。


「……ありゃあ、あの辺は最近、集合住居を建てたあたりじゃねえか」


 酒場の店主も、話を聞きつけ窓辺にやってきていた。


「あの辺は地方からの家族を受け入れる住居がたくさん建っていたはず。小さい子も焼け死ぬだろうなぁ」


 小さい子、と聞き……全身の血が沸騰するような感覚に、俺は襲われていた。


 所詮、他人の子。

 見ず知らずの子を助ける義理は、俺にはない。


 しかし、どうしても脳裏に過ってしまった。


「か、カイルさん!?」


 小さい頃、死にかけた自分の姿を。


「ここ四階だよ!?」


 背後から、エリスとパラボラの驚嘆の声が響く中、俺は酒場の窓を開けて、飛び降りた。

 地面に降り立つと、両足に着地の衝撃を感じて、顔を歪めた。

 ジーンとした痛みを感じつつ、まっすぐに黒煙の方を見定め、俺は走った。


 全力で走り抜けた。


 あまりに全力で駆け抜けたものだから、途中、道は合っているか。幾ばくの不安に駆られた。

 しかし、火事現場に近づくにつれ、全身に熱気を感じて、間違っていないと確信した。


「ユーリー!」

「おかあさん!」


 全焼寸前の家屋。

 二階のベランダに、一人の少年が取り残されていた。

 泣き叫ぶ母親。

 熱さのあまり、母に助けを求める子。


 まさに、地獄絵図だった。


「速すぎますよ、カイルさん!」

「水をくれっ!」

「えっ!?」


 追いついたエリスに反応もせず、俺は彼女を手でどかし、見つけた井戸からバケツ一杯に水を汲んだ。


「カイルさんっ!?」


 パラボラの驚きの声を聞きながら、俺はバケツの水を頭からかぶった。


「下がってろ!」


 そして、子供に向けて泣き叫ぶあまり、火元に近づく母親を制して……。


 俺は、火に包まれた家屋に飛び込んだ。


 今にも燃えてしまいそうな程の熱量だった。

 汗を掻いては一瞬で蒸発して、皮膚は徐々にチリチリと焼けていく。

 体当たりして目の前の扉を突き破ると、俺の全身を炎が覆った。


「……っ」


 痛みはあるが、耐えられた。


「くそっ! 階段はどこだ!」


 炎が立ち込める住居の中では、視界不良で、階段が中々見つからなかった。

 埒が明かない。

 俺は天井を見上げた。

 両足に力を込めて、思い切り飛び跳ねた。

 途端、両腕に熱気と痛みが走った。

 苦痛に悶絶しながら、目を開けた。

 目の中の水分も沸騰しているのか、薄目を開くのがやっとだった。

 窓が見えた。


「……あさん」


 窓の外から、微かに声が聞こえた気がした。

 窓を突き破ると、ベランダには少年がうつ伏せに倒れていた。


 俺は少年を担いで、ベランダから飛び降りた。


「カイルさん!」


 エリス達の声がした。


「大丈夫ですか」

「……俺のことはいい」

「何言ってるんです。そんなに疲弊して」

「その子を、先に」


 未だ炎が立ち込めているのか、背中からは凄まじい熱気を感じた。

 その後、俺は冒険者ギルドお抱えの医療班により、少年ともども治療をされた。

 少年は、一命を取り留めた。


「あと一分でもあの場にいたら、死んでいただろう」


 後ほど、医療班がそんなことを教えてくれた。


「熱かっただろう。しかし、ほぼ無傷だ」


 俺の治療も、粛々と進められた。


「水を被る判断も良かったし、その類まれなる身体能力のおかげかな」


 医療班は、目を見張っていた。


「さすが、英雄の息子だね」

「どうも」


 その肩書は、どうにも素直に受け取れない。

 治療の後、俺は帰路に着くため、冒険者ギルド本部を後にした。


「待って」


 しかし、本部の入り口で一人の女性に止められた。


「……凄かったね」


 パラボラだった。


「どうも」

「さすが、英雄の息子だね」

「……」

「ごめん」


 突然の謝罪だった。


「一体、何の謝罪ですか?」


 頭を下げるパラボラに、俺は尋ねた。


「それは言えない」

「はあ」

「これは、けじめだから」


 ……まあ、なんのけじめか聞くのは、野暮か。


「カイルさん、一つだけ質問してもいい?」


 パラボラの質問は、あまりに唐突だった。


「……取材はもう終わったはずだろ」


 正直、今日の取材は散々だった。出来れば当分、この仕事は御免だった。


「一つ。本当に、最後に一つだけ」

「……なんですか」


「どうしてあなたは、あの子を救ったの?」


 パラボラの眼差しは、今日の取材終盤時の態度とは異なり……真剣そのものだった。


「正直、意外だった」

「何が」

「今日、取材をさせてもらって感じたあなたの印象は……理想の英雄像とはかけ離れていたから」


 まあ、そうだろう。


「あなたに抱いた印象は、口下手で、自己中心的で、家族さえ蔑ろにするような発言をする、どうしようもない男、というものだった」

「さすがにそれは言い過ぎでは……?」

「だからこそ、意外だった。驚いた。あんな……炎の中、自らが死んでもおかしくない中、少年を助けるため、飛び込むだなんて」

「……」

「どうしてあの少年を助けたの?」


 俺は、目を瞑った。


「あの少年を助けて、ポイントを稼ぎたかったの?」


 今日一日、俺はパラボラの問いに、真剣に応じたことはなかった。


「……心の奥底では、誰もが望むような英雄になりたいと、思っていたの?」


 ……今も、その選択肢を取ることは出来た。

 取るべきだと思った。

 だって、今の胸中を語るのは、少し……気恥ずかしい。


「俺は、国民の望む理想の英雄になるつもりはない。それだけは断言出来る」

「……だったら」

「ただ……俺は、今日助けた少年くらいの年齢の頃、父を失い、路頭に迷っていた」


 ゆっくりと、俺は目を開けた。


「帰る宛もない。食べるものもない。金もない。何もなかった……」

「カイルさん……?」

「世界を呪ったよ。世界は、英雄だった父の息子である俺を蔑ろにしたんだ。呪って当然だろ」

「……」

「でもさ、だからこそ……さっき思ったんだ」

「何を……?」

「少年一人の命さえ救われないような世界は、間違っている……と」


 それが、俺があの少年を救った意味。


「確かに、あなたの言う通りだ。俺は多分……いつもの俺なら多分、視界不良になる程、火が立ち込める家屋に突っ込んだりはしなかった。自らの命を最優先に行動をした」


 でも、今回は違った。


「でも……今回、もしあの少年のことを俺が助けなかったら、矛盾しているだろ?」

「矛盾?」

「小さい頃の俺は、庇護対象であるはずの俺を守ってくれなかった世界を呪った。でも今回、もし俺があの少年を見捨てたらさ……俺は、自分が過去、世界を呪った思考を撤回しないといけなくなる」

「……なるほどね」

「そんなのはおかしい。俺があの時、あの絶望の中、世界を呪ったあの思考は、何も間違いではなかったはずだ。……だから俺は、あの少年を助けた」


 ひとしきり語り終えた後、俺は肩を竦めた。


「つまり、俺は自分のためにあの少年を助けたんだ」


 実に、くだらない話だ。


「だから、取材の時、あなたが感じた俺への印象。あれは全て正解だ。俺は、口下手で、自己中心的で、家族さえ蔑ろにするような、そんな奴」

「……そうですか」


 パラボラの声は、何故だか少し優しい気がした。


「そうだったんですね」


 俺は、ゆっくりとパラボラの顔を見た。


「……カイルさん」


 パラボラは……。



「あたし、今日、あなたに取材が出来て良かったです」



 優しく微笑んでいた。

 その笑みに、俺は……心に決めた人がいるはずなのに、いつの間にか見惚れていた。


「カイルさん、あたし、誓います」

「何を?」

「あなたを必ず、英雄にしてみせる」

「は?」

「あなたを英雄にさせられるよう、上司に掛け合います! あたしのコラムを、あなた専門のコラムに変更させてくれ、と!」


 パラボラは、熱意のこもった言葉で続ける。


「あなたへの取材は、必ず利益を生める、と!」


 彼女の熱意に、俺は気圧されていた。


「あなたには、英雄になる価値がある、と!」


「……そんなこと、ないと思うぞ?」

「いいえ、あります」

「ない」

「あります」

「ない!」

「あります!」


 俺達は眉間に皺を寄せ、にらみ合った。


「……とにかく、上に掛け合います」

「何故そこまでする?」


 俺は首を傾げた。


「あなたにそこまでする意味はないだろ」

「いいえ、あります」

「何故」

「だって……」


 パラボラは、ニカッと笑った。




「あたしが、あなたに英雄になってほしいと思ったから」




 正直、理解出来ない。


「だから、これからもよろしくお願いします」


 彼女がどうして、そう思ったのか。


「これからも……また、定期的に取材をさせてもらいます」


 でも、もしかしたらこれは、少し好都合かもしれない、と思った。


「これからも頼む」

「はいっ!」


 俺は照れ臭くなって、笑顔で頷くパラボラから、目を逸らした。

 こうして、パラボラは晴れて、俺の専属冒険作家となった。


 ……彼女の執筆した最初の俺のコラムは、俺の予想に反してそれなりに反響があったらしい。

 エリスに渡され、俺も彼女のコラムを拝読した。


「……エリス」

「なんです?」

「この……『自らの命を顧みず、凶悪な火柱から少年を救出した誉れ高き英雄候補生』って……誰のことだと思う?」


 パラボラのコラムの中の俺は、彼女の意向か、大幅な脚色が加えられていた。ただまあ、厄介なことに……プロパガンダとまではいかない、ギリギリのラインを攻めた構成だ。


「あら、わかりませんか?」

「……心当たりはないな」

「うふふ」


 エリスは微笑んだ。


「奇遇ですね、あたしもです」

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