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フィア─帰りたい者達の異世界旅─  作者: ミリオン
"グレー"編
19/21

2



────とある世界。

壁全面にコンピューターが埋め込まれ、空中にすら様々なスクリーンが表示されている部屋の中に、白衣を着た白髪混じりの中老の男がいる。

その男を訪ねて来たのは、白銀の毛並みを持ち、民族風のターバンを頭に巻いた、長身の獅子姿の獣人だ。

二人共、両耳にそれぞれ異なるデザインのピアスを付けている。


「──♤J(ピック・ヴァレ)のクリュプトン氏の居所を、儂に探れ、と?」


右耳にダイヤ、左耳にKのピアスを付けた中老が、綺麗に整えた顎髭を撫でながら問うてみる。


「"元"だ。今はアリなんとかが♤J(ピック・ヴァレ)だろ」

「アリステア・ディーノ、な」

「どうやってピアスを外したのかは知らねえが、裏切り者の抹殺任務を俺が請け負う事になったのは、アンタも知っての通りだ。出来るならすぐに追いたい。アンタならアイツの行き先を、今までの行動パターンなんかで計算できるんじゃないか?」


右耳にクローバー、左耳にはAのピアスを付けた獣人は、腕を組みながらそう返した。

すると中老は「ふむ⋯」と言いつつも、直ぐに手元にバーチャルキーボードを出現させ、数回片手で弾いた後に獣人の前に、とあるデータをオープンさせた。


「先の御前会議での御神託とあらば、断る理由は無いのう。では、それが我が叡智が算出した、背信者の行動予測パターンだ。其処に表記した座標の世界に行き給え」

「⋯⋯ココにアイツがいるのか?」


目を凝らして猫背になりながら、懸命に画面を睨んでその内容と、文字列をインプットしていく。


「正確には、“此処に来る”確率が92.8%と出ておる。彼奴は今頃、神の子御一行と接触を測っておる可能性が非常に高い。その一行が次に飛ぶであろう世界が、其処に表記された場所よ」

「なるほど。数字だけ聞くには悪くねえな」


服から出している尻尾を一度だけくねらせると、獣人は直ぐに踵を返して部屋にある装置の下へと進む。

その後ろ姿を見送るつもりでいた中老は、ふと思い出した事があり、少しばかりの嫌味のつもりでその話を投げかけた。


「ところでしかし、君とクリュプトン氏は旧知の仲で、親友だと聞いていたのだがねえ。いやはや、大変面白い事になったものだのう」


それを聞いて、ピタリと歩みが止まった。

獣人は軽く振り向きつつも、牙をちらつかせ、唸りながら、その眼光を鋭いものにさせていく。


「⋯それも、"元"だ。アイツとは色々あった。だから俺があの喉元に喰らいついて、絶対ヤツの息の根を止めてやるって決めたんだ。この捕食者の役は絶対に、誰にも譲らねえ⋯!」


そう言い残すと、気分を害したとばかりに足音を立てながら装置に乗って、さっさとその場から消え去っていってしまった。

明らかに殺気立ったものの、何故だかその腹のうちを見損ねたと感じ、中老はまたもや髭を撫でて少し思案する。


「見目が獣のわりに、何処か掴みにくい男よのう。獅子のクセしてあまり尾で表現せぬから、顔色を伺うのも一苦労だわい」


まあ、要、観察対象という事で。

滅多に会う人物でもないからとそう胸で締め括ると、さっさと仕事の続きをする為、自分が背にしていたディスプレイに別のモニターを映し出す。

そこに映ったのは、中老の男率いる研究チームが現在のプロジェクトを進める際に、新たな研究対象としてスポットを当てているとある世界だ。

その世界の状態をじっくりと観察しつつ、幾つかの計画立案を脳内で組み立てていく。


「神の子と直接接触した怠け者が、これまでの定説を覆して目覚めた、か⋯⋯。であれば、今回のサンプル候補には、少し趣向を変えたアプローチを試みる価値がありそうだわい」


人選、時期、影響、成功確率、諸々の算出は(カロー)の得意とする分野である。

そして普段ならば(カロー)のトップである自分の一存で研究を進めるのだが、この映し出している“世界”については、計画内容を進言した上で許可を得る必要があると判断する。


「前回の【空のひび割れ(スカイ・ブレイク)】は、はてさて何年前だったかのう。少し立て続けであるから、無事に御前の承諾が得られれば良いが⋯」


そう独り言ちてまた、中老の男は自分の自慢である顎髭に手を添え、何度もその指で感触を楽しみながら思案を続けていくのであった。





ところかわって、ニナーナ達は未だ逃走中である。

もう何度も追跡を振り切ろうとしたのだが、逃げても逃げても直ぐに特定され、ひたすら追いかけ回されている。

ならば先程の様に魔術で応戦しようとすれば、「僕たちが悪いことしたんだからこれ以上いじめちゃダメ!」とクゥフィアに強く叱られ、致し方無しに逃げの一手を強要されてしまっている為、どうしようもない状況なのだ。


「かといって、わざわざ捕まる様な無様を晒す訳にもいかねえぞ?」

「捕まれば確実に分断されてしまうでしょうからね。それに、この国の政治に異神の軍隊が関与しているかどうかも、定かではありませんし」

「もし奴等が潜んでいるなら、アリステアみたいな策を張り巡らす可能性も十分に有りうるな。良し。やっぱり偉そうな奴を数人とっ捕まえて、残りは捻り殺し⋯」

「ぜっっったいにダメー!!」


クゥフィアの強い一声に、大人二人は渋々魔力を引っ込めた。

そしてまたもや数多の警官隊に取り囲まれ、遂には銃口すら向けられて、「両手を上げろ!」という怒号が狭い路地裏に響き渡る。

素直に従うつもりが無いなら射殺も辞さない、という気概すら感じられる。

たかが食い逃げでそこまでするとは考えられないのだが、腕輪を身に付けていないというのはこの世界の彼等にとって、余程良くない事だったのだろう。


「大人しく投降しろ!貴様ら、腕輪を所持していないという事は、レジスタンスの一員か何かだな?」

「レジスタンス?」

「しらばっくれるな。何処の組織の工作員なのか、牢屋で洗いざらい吐いてもらうぞ!」


どうやらそういう事らしい。

嫌に執拗に追いかけ回されているなと思えば、いつの間にやらこの数時間足らずの間で、反政府組織の疑いをかけられていた様だった。

違う、と声を上げても今のこの状況では意味を成さないだろうし、やはりこの場は武力行使で切り抜けた方が良い、とニナーナは判断する。


「ゼンティウヌス」

「御意」


みなまで言う事無く、ゼトが無数の雷撃を四方に放射した。

それはその場に居た警官隊だけでなく、銃や乗り物、あまつさえ至る所にあった監視カメラも全てショートさせ、あっさりと再起不能にしていく。

一瞬で片が付いた現場には、屍⋯とまではいかないものの、黒煙を燻らせている人々と、完全に壊れた機器が無数に散乱する事態となり、数秒後には先程までの騒々しさが嘘のように静まり返っていった。


「ああ、あれだけダメって言ったのに⋯!」

「銃口まで向けられたらもうどうしようもねえだろ。身の安全が第一だ。諦めろ」


顔を覆ってしまうクゥフィアに対して、全く悪びれる様子もないニナーナと、涼しい表情で背中で腕を組み姿勢を正すゼト。

優しく幼い子供では、やはり無慈悲な悪魔達の手綱を握るなんて難易度が高い役回りは、荷が勝ちすぎる様であった。

そんな彼等に、唐突に物影から、人一人分の乾いた拍手が注がれる。


「いやあ、お見事。貴方達ほどの力があれば、この程度の科学文明なんて足元にも及ばないのだね」


その声に、全員が瞬時に身構えた。

先程の警官隊とは類が違う、丁寧ながらも軽快な話し方。

そして抑圧さはないものの、まるで自分は只者ではないと周知させるかの様に、あからさまに放出された神力のオーラ。

量は少ないが、アリステアのモノよりも精錬されたその力の質を肌で感じ取り、そんな得体の知れない者を強く警戒して、声がした方を鋭く睨みつけるのは当然の反応と言えよう。


「なんだ、貴様は」


トーンを落としたニナーナが、敵対心を露わにしながら問う。


「なんだも何も、私がさっきから貴方達をずっと観察していた事は、とうにお気付きだったのではないのかい?」


それに臆する事なく応えた者は、あっさりと物陰から三人の目の前に姿を見せた。

現れたのは、長めの羽織を揺らし、煙管を左手で(くゆ)らせた、少し小柄な痩せぎすの男である。

その顔には少々異質な、右の額から鼻筋を通り、左頬にまで伸びる大きな刀傷の様なものを付けている。


「初めまして、魔皇帝ニナーナ。神の子とその従者君については、二度目ましてかな?」


男は、相手に警戒をさせないように笑みを浮かべて、穏やかな声で挨拶をしてきた。

しかし、それがニナーナ達にとっては逆に、猜疑心に油を注ぐ結果となる。


「知っているのか」

「はい⋯。お察しの通り、異神の軍隊の一人で御座います。確か名は、クリュプトン」


クゥフィアを背後に隠しつつ、ゼトが男を睨みつけながら返答した。

だが男は特に気にする事もなく、煙管に口を付けると一吸いした後、意味深に長く煙を吐いてみせる。


「その名前なんだけどもね⋯⋯捨ててきたよ」

「⋯⋯どういう事だ」


スルーしづらい発言に思わず問い質す。


「此方も少々ややこしい事情を抱えていてね。だからこうして単身で、貴方達に会いに来たのさ」


淡々としつつ、男はもう一度吸口を咥える。

たったこれだけの会話ではあるが、人当たりの良さげな空気を纏っているわりに隙はなく、まるで得体の知れない曲者という印象を与えていった。

決して味方ではないのだろうが、此方と戦う気も無さそうな体を装うものだから、尚掴みにくい。

そして何より気がかりなのが⋯⋯その男の両耳共に、あの特徴的なピアスがぶら下がっていない事だ。

アリステアやグスタグノフ、そしてラララは、各々が異なる風貌をしていたにも関わらず、多少のデザインは違えども共通して統一感のあるピアスをしていた。

恐らくそれが異神の軍隊所属の証明であり、位階の明確化の役割も担っているのだろうと、ニナーナは薄々勘づいていた。

ならばこの男の耳にも何かしらのマークがある筈なのだが、撫で付けた髪に隠される事なく露わになっているその部位には、何の装飾も飾られていない。

だが、もしかすれば例外となる立場の者もいるのかもしれない。

そういった可能性も考慮して、決して油断する事なく訝しんでいれば、その僅かな間の後すぐに、遠方から此方へと向かって来る複数の足音が全員の耳に届いてきたのだ。


「⋯込み入った話は後にしよう」


どうやら警官隊の増援がまた、今四人の居るこの場所へと向かって来ているのだろう。

状況を悟った男が先にそう切り上げると、空いていた右手で羽織りを軽く払い、腰に着けていたベルトホルダーから何かを取り出す。

それに反応したゼトが咄嗟に臨戦態勢に入ったが、ニナーナは身動きせず、男が息を吹きかけてばら蒔いた物の動向を静観した。

それ等はよく見ると、ヒトの様な形を模した複数の紙であった。

紙は宙に舞いながら、その表面に突如不思議な力を帯びた文字を浮き上がらせて、それぞれが意志を持っているかの様に方々に飛んでいく。

数枚は増援が向かって来ているだろう方へ、残りは各々が建物の間を縫っていき、離れた場所にある破壊されていない監視カメラを塞いでいく様に⋯。


「目眩し程度だけども、これぐらいでも十分やり過ごせるだろう。隠れられそうな場所を見つけてあるから、ついておいで」


何ともない風にそう言うと、男はこれといった説明はせずに、監視網を麻痺させたのだろうルートを堂々と歩き出した。

あっさりと背中を見せるその姿勢は、やはり自分は戦闘意思が無いとアピールしている様にも受け取れる。

だが如何せん、油断は禁物だ。


「如何致しますか?」


思わずゼトが指示を仰いでしまうのも無理のない選択である。

しかしそれに応えたのは、背後に隠されていたクゥフィアであった。


「ついて行ってみようよ。あの人なら大丈夫そうな気がする」

「根拠は?」


お人好しとも取れる発言にニナーナが鋭く詰める。


「根拠ってほどじゃないけど⋯前にあった時も、あの人だけ、僕を捕まえる気なんて全然なさそうだったんだ。それどころか⋯」

「おーい、呑気に相談している時間は無いからね。早くおいでー」


その呼び声で言葉は遮られ、全員で少し距離が離れた男を見遣る。

確かに呑気に話をしている時間は無いのだろう。

罠である可能性は高いが、この男は恐らくニナーナ達が欲しがっている情報を相当量握っており、とても貴重な鴨である事は間違いない。

それに今の時点で強引に戦闘に持ち込むメリットは少なく、ここはクゥフィアの言う通りに、素直に男の誘導に従った方が良さそうだとも思えるのだ。


「先に教えろ。貴様は何の為に、俺達の前に現れた」


念押しとして、ニナーナがそう問いかける。

すると男は、煙管の先端を軽く揺らしながら。


「私は【ノブデュレス】を抜けてきたんだ。だから貴方達の旅に同行させてもらいたく、遠路遥々やって来たのだよ」

「ノブデュレス?」

「貴方達が"異神の軍隊"と呼んでいた、【破壊神】を崇拝する集団さ」


さらり、と、今まで秘匿していた情報を暴露したのだった。






そして四人が移った先は、文字通り、瓦礫まみれの廃墟ビルの中である。

たまに誰かがたむろ場として利用しているのか、所々に落書きやゴミ等も散乱しているが、古びた簡易ベッドにテーブル、ソファなんかも快適になるよう配備されている。

顔も知らぬ浮浪者のそんな隠れ家らしきこの場所には、勿論監視カメラといった物は取り付けられておらず、ニナーナにとっては椅子に腰掛けてふんぞり返り、真正面に立たせた謎の男を、時間をかけて値踏みしていくのに適した環境となっている。


「ちょっとお·····私は対等な取引を所望したいのだけども·····」


ニナーナに睨まれている男の方は、自分の足元に突然展開された黒渦と、既に足首まで沈んでしまっている己の身体を視界の隅で捉えながら、情けない風を装った声を出していた。

眉をハの字にして困ったという表情を作ってはいるが、本当に追い詰められているような様子ではない。


「これ、一体何なんですか?私の身体が沈みかけている感覚があるんですが」

「俺の“闇”だ。貴様が嘘をつくたびに沈んでいって、最後には奈落の深淵に堕とす。そして堕ちれば最後、俺の意思なしでは決してその深淵から脱出する事など不可能だ。一生涯を“無”の中で過ごしたくなければ、こちらを欺こうなどとゆめゆめ思うんじゃねえぞ」

「えっ怖い。さらりと「俺の闇」とか「奈落の深淵」とか言うなんて⋯⋯流石は魔皇帝と呼ばれるだけの御仁だ。大層な厨二病を飼っておいでで、とても怖い」

「それはまさか誹謗じゃねえだろうな?貴様さえ良ければ今すぐ堕とす事も出来るが?」

「失礼。思わず本音が漏れてしまった様だよ」


軽く咳払いをして、自分の失言を無かった事にしようとするが、全くカバーしきれていなかった。

素なのかワザとなのか、とても判断しがたい態度である。

そんな状況に気が気でないのは、ニナーナの近くでそれを傍聴しているクゥフィアである。

性根が優しい子供は、目の前で始まろうとしている尋問の光景にかなり戸惑いを見せており、ゼトに制止されながら成り行きを見守っている。


「分かった。聞かれた事には嘘偽り無く答えると宣言しよう。但し、場合によっては黙秘権を行使させてもらう」

「ほお?この期に及んでまだ自分の置かれている状況を理解しきれていないのか」

「理解しているとも。だからこその黙秘権じゃあないか」


持っている情報全てをすぐに渡してしまえば、自分の有用性が下がってしまう。

それを見越した上での、臆する事のない最初の駆け引きだ。


「その代わりに、私を貴方達の仲間に加えてくれるなら、此処では伝えられないような情報も小出しで提供できるだろうね。それに私、体力はないけども、こう見えて強いんで。きっとお役に立てると思う。こんな優良物件、そうそう飛び込んで来ないよ。いや本当」

「·····ならまず名乗れ。貴様は何者だ」

「ノーコメント」


答えた瞬間、男の身体が一気に腰まで黒渦の中へと沈んだ。

流石に驚いた様で、何処から出たのかわからない悲鳴のような音が喉から飛び出していたが、青筋を浮かべたニナーナからしてみれば知った事ではない。


「ふざけているのか?この不明瞭野郎」

「ちょちょっ!話を聞きなさい!私は実名を捨てた身で、名乗れる名前を持ち合わせていないんだよ!さっきそこの従者君が言っていた“クリュプトン”という名も、ノブデュレスに加盟してから適当に付けられた呼称だ!そういう事情を説明しようとしたのに、いきなり半分も堕とすなんて⋯心臓が飛び出すかと思ったじゃないか!」

「五月蝿い。貴様の事情などどうでも良い。なら、そのノブデュレスというのは一体何なんだ。貴様はそこで何をしていて、どういう経緯で俺達に接触してきた。さっさと答えろ」

「お、横暴·····いや!わかった!出来うる限り答えるから、これ以上沈めるのはやめてくれ」


自由の利く両手で待てのポーズを取りつつ、男は一呼吸置いてから、色々と話し出した。


「話せば長くなるから簡潔にいこう。ノブデュレスとは、先程も伝えた通り、とある破壊神を崇拝して自らも同じ頂に立とうと画策している、とんだ思想を持った信望者組織だ。残念ながら一枚岩ではないけどもね」

「信望者組織とは言うがな、貴様等は宗教集団なのか?俺達はてっきり軍隊組織だと思っていたんだが?」

「貴様等って言わないで。私は抜けてきたんだって。⋯まあ、色んな所で暗躍もいっぱいしているし、ノブデュレスの中で軍の様な部隊編制を取り入れているのも事実さ。“異神の軍隊”という名も、あながち的外れではないんだよ」

「じゃあさっき言ってた“破壊神”って何?なんで壊しちゃう神様を大事にして、同じところに行きたがるの?」


ニナーナの傍に控えていたクゥフィアが思わず話に割って入る。

それを誰も止める者はなく、男はクゥフィアに視点を代えて、その質問を質問で返した。


「破壊神といっても、文字通りの概念しか持たないわけでは無いだろう?破壊の先には何がある?」

「⋯⋯またつくる?」

「正解。創造、或いは再構築だ。その破壊神について行けば、無尽蔵にある世界は剪定されていき、その導きによって自分達の望む世界が与えられる⋯そして、神の涙(ヘブンスフィア)を使って自分自身が真の神になれる、なんて、本気で信じているんだよ」


苦笑しつつ、男は続ける。


「ノブデュレスの傘下に下っているその他大勢も同じ。フィアを持っていなくても、フィアの適合者である【神候補】の信徒にはなれるし、最終的にはその神の使徒に栄転して共に楽園へと行きたがっている。おめでたい思想だと思わないかい?そんな都合の良い話があるもんかと鼻で笑ってやりたい気分だが、これが実はあながち嘘ではなくてね。それに“神候補”達の間では、世界どころか多次元空間規模の話が、当たり前の様にぽんぽんと出てくるんだ。恐ろしい話だよ」

「他人事だな。貴様もその一員だったんだろうが」

「そうだけども、私は別に神などどうでも良いしなりたいとも思わない。不幸な事に、生まれた時から体内に神の涙(ヘブンスフィア)を宿していたがばかりに、連中に目を付けられて祭り上げられただけさ」


困ったものだと肩を揺らして、場の空気をほぐそうとしつつ男はニナーナの反応を様子見る。

眉間に力が入り、鋭く睨み付けてはくるが、こちらの言い分には素直に耳を傾けてくれている。

恐らく腹の内で内容を精査されているのだろう。

聞く姿勢を持ってくれているのであれば、このまま喋り続けるべきだとすぐに判断した。


「私には、連中とは違う別の目的がある。それを成す為に大人しくノブデュレスに加盟していたが、不都合が生じたので無断で脱退してきた。かなり重要な情報を入手出来る立場に居たから、お陰様でもう既に追われる身さ」

「⋯⋯そして一人で逃げるよりは、俺達に加勢した方が貴様にとってはメリットになる、と?」

「その辺りの利害は一致していると思うのだけれども?」


こちらの腹を見透かされているかの様な物言いに、ニナーナは内心不服でありながらも、確かに手駒が増えるのは喜ばしい、と一巡する。

ヒュードラードが離脱した今、いくらニナーナの呪法の結び目が解け、ゼトにも多少の魔力を供給出来る様になったとはいえ、人数面でも情報量でもいろんなものが圧倒的に不足しているのは言うまでもない。

目下の悩みであった箇所を突かれた事は面白くないが、男の確信的質問にはとても否とは応えられないのが事実だ。

であれば、使えるモノは使うに越したことはないのだろうが、この程度の情報ではまだまだ信用に値するには足りないのも、悪魔側の本音である。


「こちらはただでさえ多勢に無勢の状態だ。貴様が加わる事で、更に貴様の追っ手にも攻撃されるリスクを抱えなきゃならなくなるが、その辺りはどう対処するつもりだ」

「そこはほら、皆の絆パワーで何とか乗り越えてみせようじゃないか。私達全員でさ」


絆など微塵もない相手によくそんな事が言えるものだ、と、静聴していたゼトは思わず呆れた。

彼がふざけるたびにニナーナの気分を害さないかとヒヤヒヤしてしまうし、得体の知れない男の言葉を何処まで信用するべきかと、口には出さないが勘ぐってしまう。

そして黒渦に沈み込んでいない以上嘘は言っていないのだろうが、男にとっては自分の存在が、ニナーナやクゥフィアにとって如何に有益かをアピールしておくチャンスだというのに、よくふざける余裕があるものだと感心もする。

良いふうに言えば、肝が据わっているのだろう。

そんな評価を受けている男はというと、ようやっと真面目な雰囲気を取り繕い、今更ながらに真剣な表情をしてみせるのだった。


「正直なところ、ノブテュレスを敵に回してしまった今、私一人ではあまりにも無力だ。悲願を果たすどころか、次の世界に渡る手段も限られていて袋小路状態なんだよ。だから、力を貸してほしい」

「⋯それが本音ってわけか。狙いは戦力増強よりも、クゥフィアの能力だな」

「一応私の神の涙(ヘブンスフィア)にも時空移動の力は備わっている。だけども、神の子みたいにそう何度も使える代物ではないんだ。座標がわかっていて一発で飛べるなら兎も角⋯」

「今迄はどうしていた?と言うよりも、ノブデュレスの連中は全員、任意の時空移動が出来るのか?」

「それはピアス持ちか、(カロー)の用意した転移装置を使った者だけさ」


そう言って意味深に、今は何も着いていない右耳を指さして、その耳朶を軽く突いてみせた。


「ノブデュレスの加盟者はまず、四つある派閥のうち何処か一箇所に所属する事が義務付けられて、その派閥のシンボルマークを模したピアスを着用するルールだ。そのピアスに通信能力と、回数制限付きの時空移動能力が備わっている。それとノブデュレスでない者や物質等は、特定位置に設置されている転移装置を使えば、設定された世界に飛ぶ事が出来る。奴等の主な移動手段はその二つに限定されるよ。だけどもどちらも足がつくから、少しでも時間を稼ぐ為に、今回私は自分のフィアの力を使ってこの世界に飛んできた。貴方達が此処に来る可能性に賭けてね」

「⋯⋯色々と制約があるのか。それに、賭けたって事はクゥフィアの動向を、完全に把握している訳では無いんだな」


恐らく何らかの方法で此方の思考や行動パターンを予測し、確率の高そうなところで布陣を張り、策を廻らす手法を取っているのだろう。

ランダム移動を繰り返している小さな旅人達を常に監視しているのかとも疑っていたが、そうでないのであれば、場合によっては此方から不意をつけるチャンスも巡ってくるかもしれない。

出来るならば極力戦闘は避けるに越した事は無いのだが、先日の死闘を振り返れば恐らくこれからも、頻繁に襲撃を受ける事にはなるだろう。

ならば、此方も少なからず相手側の出方を予測しながら動く必要があると思考を廻らす。


「右側のピアスが通信と移動目的の物⋯デザインも統一されていたから、派閥マークってやつか。となると、もう片方のピアスはやっぱり階級か?」

「ご名答。でも今そこまで話すとキリが無くなるから、そっちは後で説明するよ。ともかく今の私は自力で移動したおかげで神力が底を尽きかけていて、回復するまでの当面、他の世界への移動は不可能なんだ。その間にノブデュレスに居場所を特定されてしまえば⋯⋯どんな目に合うか想像したくもないね」


という事は、彼なりに覚悟を持ってこの世界にやってきた、という意味なのだろう。


「そんなに必死に逃げているなら、貴様はそのノブデュレスではさぞお偉い立場だったんだろうな」

「まあねー。これでも♤J(ピック・ヴァレ)というかなり上位の席に居たから、幾つかの世界の管理とか任されていたよ」

「は⋯?」


俺ですら持っていた世界は魔界一つだけだというのに、こんな胡散臭いのが複数の世界を?

不意打ちでプライドを刺激されたニナーナだったが、話が逸れてしまうので毒突くのを思い留まり、代わりに思案した。

今の僅かながらの情報で、ニナーナには大まかにノブデュレスの輪郭が見えてきたらしい。

神候補という言葉から、神の涙(ヘブンスフィア)を所持した上で栄転すれば、人神の様な存在になれるのだろう者が複数在籍していると仮説を立てていく。

そして傘下に下っているその他大勢の規模は、国単位どころか場合によっては一世界丸ごとであり、自分達を偶像神のように崇めさせて思想統一を図る事で、管理下に置いているのだろう。

その場合、今後も無作為に移動を繰り返した結果、敵中のど真ん中に飛んでしまう可能性は大いにありうる。

只の有象無象程度なら造作もないが、もしアリステア以上の実力者にその場で待ち伏せでもされてしまえば、先日の大進撃などは児戯にも感じられてしまう程の甚大な被害が出るであろうし、それが徒党を組んでともなれば流石のニナーナでも、例え解呪が終了し、全盛期の力を取り戻したとしても、無事に突破出来るかは怪しくなってくる。

それでなくとも、悪魔族の中では辛うじて上位に食らいついている程度のゼンティウヌスと、力の出力が多少上がった程度でまだまだ未熟なクゥフィアだけでは戦力が心許ないのだ。

文字通り神クラスの適合者達が、世界規模の勢力をもって襲撃してこようものなら、今の三人では一網打尽にされてしまう可能性が著しく高いだろう。

せめて魔神の加護を再び享受できるのであらば、話は変わってくるのだが⋯。


「⋯⋯最後の質問だ」


埒が明かない。

聞きたい事、聞かなければならない事があまりに膨大だと悟ったニナーナは、絞りに絞ってそう口を開いた。

それは即ち、この男をこちら側に引き込み、時間をかけて情報を搾取する事に決めたのと、同義である。


「何故、クゥフィアが奴等に狙われている?創造神の生まれ変わりとはいえ、その類の神は他の世界にだって存在するだろう。何で、此奴なんだ」

「⋯⋯その質問は、絶対に聞かれると思っていたよ」


そう意味深に呟いた男は、唐突に自由に動かせる両の手を、自分の半身を呑み込んでいる黒渦の上に置いた(・・・)

その何気なくされた所作に、ニナーナは柄にも無く動揺を見せる。

本来ならニナーナの意思無しでは、ぬかるみのように沈み込む一方で、脱出不可能の闇の渦なのだ。

()()()()()()()()()()()()()()()()()というのに⋯。


「破壊神からの【神託】なんだ。『神の子を我が傍に』ってね。理由は知らない。ただそれだけだけども、ノブデュレスにとっては主神として祀っている破壊神の神託は、絶対だから」


そう言って腕に力を込めた男は、まるでプールから上がるかのように、黒渦からあっさりと脱出してしまった。

軽く裾を叩き直して何事もなかったように振る舞う男と、不意打ちを食らって閉口しながらも無意識に睨み付けるニナーナ。

今この瞬間、二人の現時点での力量差が互いにはっきりと認識された。

その証拠に、ニナーナの全盛期をよく知っているゼトが先程の光景を見て、尋常ではないぐらいに驚愕しており、狼狽の為か浅い呼吸をしだしている。

気圧された訳でもないのに、直感で微塵も敵わないと察してしまったのだ。

それに気付いたクゥフィアが心配して、汗をかき出している手を握る事ですぐに我に返ることが出来たが、それでも虚勢を張って背筋を正すのがやっととなっている。


「さて、圧迫面接はここまで。勿論私は合格だろう?」


男は再び裏を見せない笑みを浮かばせながら、慣れた手付きで煙管を構えた。


「⋯⋯【グレー】だ」

「ん?保留ってことかい?」


絞り出したような声音での返答に、小首を傾げる。


「とりあえず付いてこい。そしてこれから貴様の事は、【グレー】と呼ぶ事にした。今の貴様にピッタリな呼び名だろう」

「⋯成程、そういう。良いよ。私は全然構わない」


あっさりと了承の意を伝え、新しい名を得た男は面白げに少し笑ってみせ、新しい火種を放り込んだ煙管を器用に咥えてみせた。

そして躊躇なくクゥフィアの方へと足を向けると、大きな瞳で見上げてくる子供に向けて、手袋をはめた右手を差し出す。


「前はごめんね。表立って助けてあげられなくて。これからよろしく、クゥフィア」

「⋯⋯うん。よろしく。僕はお兄ちゃんって呼んでも良い?」

「ははっ、良いよ。お兄ちゃんっていう歳でも無いんだけれども」


まだ成長途中の手で握り返し、クゥフィアはグレーという新たな名を付けられた男を、あっさりと受け入れた。

それとは対照的に、ゼトの方は困惑したまま和やかに笑い合う二人を見、そしてチラリと、ニナーナの様子を伺う。

ソファに腰掛け腕と足を組んだまま、少しばかりグレーの動向をねめつけつつも、複雑に思考を巡らし続けている。

己の力を誇示して上下関係を明白にさせる為の尋問であった筈なのに、逆に押し返され、圧倒されてしまう形となったのだから、だいぶ的が外れてしまったのだろう。

グレーがノブデュレスの中でどの程度の地位に居たのかはまだ定かではないが、確実にアリステアやグスタグノフ等では足元にも及ばない高みに座していた筈なのは容易く推察できる。

そして、そのグレーがかなり必死で逃走しているのだから、グレーと同程度以上の実力者が、恐らく複数人は存在している。

となれば、このままではニナーナですら、ノブデュレスの上位者と刃を交える事など不可能である⋯。


(ニナーナ様、申し訳ありません。やはりあの方をお連れするべきでした⋯)


いたたまれなくなり、ゼトはテレパシーでニナーナに謝罪した。


(⋯⋯済んだ話だ。それに連れて来ていたとしても、もうアイツの体質を利用する気は無いって言っただろう)

(ですが)

(それよりも、【ムーリース】を探すぞ。アイツも今頃何処かの世界で、俺を探しまわってる筈だ)

(!⋯心得ました)


名前が出た瞬間にその算段を察し、声に出さないまま了を唱えた。

悪魔達の間で勝手に次の目的が決まると、ニナーナも漸く立ち上がって、三人の傍に足を向ける。


「で?」

「ん?」


未だに威圧的な態度をとるニナーナに、グレーは物怖じせぬまま反応する。


「これからは持ちつ持たれつの関係になるんだ。手土産の一つや二つは勿論あるんだろうな」

「おやまあ、抜け目の無いお方だこと。それともがめつい?」

「次は一思いに堕としてやろう」

「冗談。ちゃあんとあるよ。とっておきの土産がね」


そう言ってグレーは自身の側頭部に指を当てて、糸状に伸びる粒子を引っ張り出した。

それを宙で三つに分散させると、不思議そうに見ている全員の額に溶け込ませていく。


「私の記憶をプレゼント。まずは君達の世界、デュアル・ファン・エディネスの座標だ」


瞬間、頭の中でデータが認識化された。

長年求め続けていた故郷。

コールドスリープに入った後、先代創造神の力で秘匿された事で、クゥフィアですら行方が分からなくなっていた帰るべき場所。

その場所をようやっと知る事が出来て、クゥフィアだけでなくゼトとニナーナですら、懐郷の念を禁じえなくなりそうになる。

⋯⋯が、それも束の間のぬか喜びで、その座標を理解した三人の表情は、一瞬にして曇り模様となってしまった。


「⋯⋯場所は、わかりましたが⋯」

「これ、どうやって飛べば良いの?何ていうか⋯箱に入れられてるような感じ?」

「成程な。こんな状況じゃあ、今のクゥフィアでは手に負えねえ。それに、辿り着くまでの手順も面倒そうだ」


まず、座標が以前の場所からかなりずれている。

正確に言えば、強引にずらされたのだろう。

それだけであれば秘匿目的なんだろうと強引に納得するのだが、何故か今も常に動き続けている様子で、座標の数値が数刻毎に変動しており場所が特定しづらくなっている。

そして、世界を覆う様に結界でも張られているのか、強大な力のオーラが付近から漏れ出ていた。

これでは今の座標を目安に強引な時空移動を行っても、到達した時には虚無の空間になっているだろうし、捉えたとしても妙な壁に阻まれて侵入できず、時空の狭間に取り残されて彷徨い続ける羽目になってしまう。

まるで自分達の家が、巨大なコンテナ船に積まれて、大海原を航海しているかのような感覚だ。


「変動する座標は、ある程度近くまで接近できれば捉えられん事はなさそうだが⋯この妙なベールの壁は、神力か?」

「流石に私も詳細は知らないけれど、ノブデュレスのトップ達がそのベール状の結界を管理しているよ。全部で四箇所ある管理世界⋯【ゲート】と呼ばれていたね。そこのシステムを解除すれば、恐らく剥ぎ取れるだろう」

「となれば、否応にも敵陣に飛び込まねばならないのですか⋯」

「その管理世界(ゲート)とやらの座標も寄越せ」

「せっかちだなあ。勿論あげるよ。此処から一番近いところのが二つ目のプレゼント。だけども、これでも何度か別の場所を経由しないと届かないよ?」


そう言いつつもう一度記憶の粒子を分配すると、今度は別の世界の座標が皆に共有される。

確かに此処からかなり遠く、最短でも五、六回は移動を繰り返す必要がありそうだとは思う。

だが此方は完全に力不足の状況なので、今すぐ飛べたとしてもある程度の準備を整えてから向かった方が良いのだから、むしろ好都合ではあった。


「一先ずは旅をしながら、各々自分の戦力補強に努めろ。そして道中、運が巡って来た時には、神の涙(ヘブンスフィア)も回収していくぞ。将来的には何かに使えるかもしれねえ」

「適合者に巡り会えると尚良いよねえ。ノブデュレスも把握していない隠れ神候補が何処かに居るかもよ?」

「そんな事ってあるの?」

「よくあるよ。世界はいっぱいあるからね」

「そうなんだー。⋯ねえお兄ちゃん、もう一つ聞いていい?」


既に仲良くなりつつあるグレーに向かって、クゥフィアは純粋に感じた疑問を投げる。


「僕たちの世界って、どこに行こうとしてるかわかる?」

「んー⋯何処だろうねえ。私には何とも。御免よ」


笑ったままではあるが、申し訳なさそうに眉を下げられると、それ以上は何も言えなくなってしまった。

とりあえずは、一行が次へ向かうべき場所がこれではっきりと決まった。

グレーの話では、今居るこの世界では神の涙(ヘブンスフィア)の存在は確認されていないらしいので、つい先程辿り着いたばかりではあるが指名手配されてしまった以上長居は無用と判断して、早々に次へと飛ぶ準備をする。

広さを取る為にビルの屋上へと出て、クゥフィアが神聖力を練り上げている最中、下の道路からまたサイレンの音が聞こえてきた。


「おや。見つかってしまったかな?」

「放っておきましょう。我々にはもう関係ありませんもの」

「そうだけども、このビルを使っていた顔知らぬ誰かさんには、少し悪い事をしてしまったね。まあそれはともかく、これが神の子の力かあ。いやあ大したものだ」


徐々に形成されていく、厳かながらも純白な時空移動の扉を前に、グレーはわざとらしく捉えられる様な感想を述べる。

自分がトリップする時とは違い、短時間で創ったとは思えない程に術の完成度が高く、安定感も備わっているという。

短いスパンでこの術を連発出来るのも、神の子だからこその芸当だと褒めちぎってみせた。

それを背中で受け止めながら照れるクゥフィアは、いつもよりも気合を入れて扉を早く完成させてみせ、驚いたグレーが拍手喝采しながら更に大袈裟に褒め讃える。


「子育ての見本を見せつけられている気分です⋯」

「自信を持て。お前が頑張ってきたからあんな良い子に育ったんだぞ」


極めつけは頭まで撫でられて、ずっと敵対していたとは思えない程に一瞬にして懐柔されたクゥフィアは、凄く嬉しそうに笑っていた。

己の自尊心を満たしてもらった子供とは違い、逆に落ち込みつつも対抗心を燃やし出すゼトを、ニナーナが珍しく慰める。

そんな調子のまま、警官隊が屋上に辿り着く前にさっさと扉を潜り抜けた四人が次に降り立ったのは、雪と氷で覆われた寒冷の地だ──。






──────────


ついで話:廃墟ビルを溜まり場にしていたレジスタンス所属のチンピラ数名が、ニナーナ達のせいでお縄につきました。


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