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空城剱(クウジョウツルギ)視点



聖子(セイコ)(コズエ)は機嫌が悪い様で決して僕の方を見なかった。

この原因は、

俺が聖子と杪の部屋に行かず、彩の部屋に入り浸っているからだ。

だから最近は彩としかしていない。


ちなみに。

聖子と彩には俺としたければ彩の部屋に来るように言ってあるのだが、二人は彩の部屋に来ることは無かった。


おかげで、俺は体も軽く体力に満ちている。

毎晩何人もの女性の元を個別に訪れるのも疲れるものだ。


しかし、体力に余裕があるというのは良い。

戦闘の訓練にもまともに参加出来る。


俺の隣に座る彩が俺の手を強く握るので彩の方を見ると、彩が窓の外を見ていた。

窓の外には魔物と見られる生き物の死体がごろごろと転がっている。


「凄いな」


「ええ。なかなか腕が立つみたいね」


彩が誉めた。


「分かるのか?」


「何となくだけど」


彩はほとんど戦闘の訓練には参加していないのだが、分かるものなのだろうか?

確かに一撃で魔物は殺されているような気はするが、

そんな事を考えていると、俺達が窓の外を見ているのを見て、俺達の正面に座る聖子と杪が窓の外を見る。


「ウッ」


聖子と杪が口を押さえる。

魔物とはいえ、人形の生き物の死体を見るのは確かにあまり気の良いものではない。

しかし、ここにゲロ袋なんて無い。


「吐くなら窓を開けてくれよ?」


俺がそう言うと、二人とも下を向いて口を必死で押さえている。


俺達は今、この国の近くにあるという迷宮を目指して進んでいて、そんな四人で同じ馬車に乗っているのだが、聖子と杪はこんな様で、しかも、俺達と目も合わせない、『ならば来なければ良いだろう』そう言いたくなるのを堪えていた。


しかし、結構な魔物が殺されている。

人間と体の構成も変わらないのか、脳ミソや腸みたいなものが見てとれる。


でも、豚や牛だと思えば殺せないことも無いか。

こんなことを気にしていたら魔物なんて殺せないし、レベルなんて上がらないし、王女とも距離が近付かない。


迷宮を探索して成果を出し、何とか王女との距離を詰めたい所だ。

なかなか王女はガードが固く近付けないのだが、王女と勇者の称号を持つ俺とが親密になるとこは絶対にこの国の為になる筈だった。

その事を彩はよくよく理解してくれたが、聖子と杪は分かってくれなかった。

もしかして、迷宮にわざわざ付いてきたのは俺の足を引っ張る為か?

そんな考えすら頭に浮かぶ、それぐらいに二人が付いてきたのが意外だった。


「しかし、なかなかレベルが上がらないな」


今回の迷宮探索に出た理由が先程の王女がらみ以外に一つある。

その一つは、俺達の馬車を護衛している人間に、出来るだけ俺達の近くで魔物を殺してもらう事で俺達のレベル上げてもらうのがこの旅の理由の一つだ。

戦闘に直接関与していなくても戦場にいれば少しずつだが経験値を入手出来るから、迷宮に着く前に少しでもレベルを上げられる予定だった。

しかし、戦闘は大分前方で行われているのか先程からステイタスをチェックするのだが、上がってはいない。


使えない奴等ばっかりだな。


安全を期すために戦闘前に異世界から来た俺達のレベルを上げておく必要性が理解出来ない様だ。

この世界の連中にはその程度の頭も無いか。

馬車の壁に付いている窓を開けて馬車の前方に座る御者に声を掛ける。


「おい!どうなっている?手筈が違うが」


「ギルドには『くれぐれも手筈通りに』と、依頼したのですが、もしかしたら魔物の量があまりにも多いので気を使っているのかもしれませんね。少しスピードを上げますか?」


俺の正面に座る二人を見るとまだ気持ち悪そうにしているが、


「頼む」


俺はそう言った。


『パシ!』


と馬を叩く音がして、馬車のスピードが少し上がる。

先頭を走る俺達の馬車のスピードが上がれば後続の馬車もスピードをあげるだろう。

迷宮探索には俺達以外のクラスメイトも一緒に向かっている。


程無くして、俺達の先を先行して魔物を殺している冒険者に遭遇した。

その冒険者は彩の言うとおり確かに腕が立つ様だった。

地味な装備を身に付けた二人は次々と魔物を倒していく倒していく。

そしてこの後を一人の女性が付いて周り、オークの胸の奥から魔石を取り出している様だ。

その女性は戦闘にはかなり向かない様だ、歩き方が、、、。


ん?


義手と義足を付けているのか?

両腕と両足がそれぞれ無い?


あんな状態で良く戦場に立つな。

どうせなら『エクストラヒール』で治せば良いものを、、、。

しかし、この距離でも良く分かる。

良い体をしているな、、、。

『ゴクリ』

と、唾を飲み込むと、


「あら?浮気?ダメよ?」


俺の心を読んだ彩に嗜められてしまう。


「違うよ、俺ならこんな戦場に義手と義足の女性なんて連れ回さないし、『エクストラヒール』で治して上げているだろうな。可哀想に」


「そうかもね。でも、この世界なんてこんなものかもしれないわよ?全ての人を助けるなんて無理よ?」


「それもそうだな」


それからその二人が魔物を倒したいくのを眺めつつ、何度かレベルが上がると、


一番最初に彩が気付いた。


「あの、ずんぐりむっくり、何か見た事有るんだけど、、、」


「ん?」


俺はそう言って休まずに戦っている二人を見た。

一人は長身で金色の髪の毛が兜の中から一束に纏められ後頭部から出ている。

もう一人は、確かに、ずんぐりむっくりで、そう言われてみれば何だか、『デジャブ』感が、、、。

なかなかこっちを見ない上に兜を被ってて、ほとんど顔が見えないが、がたまに見える大きな鼻に、、、!


「あ!田中君か!田中洋一君だ!」


俺の言葉に驚いた聖子と杪も窓の外を見る!

さっきから俺達の前を先行して魔物を倒していたのは、田中君だったのか!


俺達は一通り魔物が殺させると馬車を降りた。

魔物の死体を気持ち悪がっていた聖子と杪も降りる。

馬車から降りて一回吐きたいのかもしれない。

ちなみに彩ももちろん降りてくる。


俺はゆっくりと田中君の側に近寄った。

俺を見つけた田中君の顔が驚愕に包まれる。

俺達が居ると聞いていなかった様だな。


俺達が田中君の所に近付くと、

義手と義足の女の子が間に入って立つ。


「君は?」


その女の子に向かって俺がそう言うと、その子は腕を組んで言った。


「何者かと聞かれれば、『奴隷』と名乗るのが流儀だが!あえて名乗ろう!『性奴隷』だと!!」

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