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マリア視点



なんの救いも無い。


これが私のこの世界に対する感想だ。

生まれつき手と足が無い私は生まれて間もなく両目を抉られた。

多分両目が病気になったんだと思う。

凄くお金が無かったから、そうするしかなかったのかな?

でも、その時は家族に囲まれて幸せな日々を送っていた。

笑い声の絶えない家だったと思う。

でも、それが続いたのは短い期間だった。


私の住んでいた村が魔物に襲われたのだ。


私達家族は必死で逃げた。私を抱える父が全力で森を駆けた。

どう考えても私は足手まといだ、


『私の事は捨てて!』


そう懇願したが父は『黙ってろ!』と言い。

私の事を決して手離さなかった。


そして、魔物に追い付かれる。


一人、

また一人と、


家族が減っていく。


そして、街道まで何とか逃げ出した時には私とお父さんだけになっていた。


お父さんは、道を走る馬車を無理やり止めると、

出て来た人に私を託した。


「え?!私と一緒に来てくれないの?!」


と叫んだのだが、


「生きてくれ」


そう言い残すとそのまま恐らく死んでしまったのだと思う。

『ドサッ』っと音がするとお父さんの声は聞こえなくなった。

この時の事をずっと後悔する事になった。

何であの時私は死なせて貰えなかったんだろうと。


家族を失った悲しみから日々泣いて過ごしていたら、『うるさい!』と、声帯を潰された。

それから私をやしなってくれた家族は、私を小さな部屋におしこめ、私はそこで家畜の様な暮らしを強いられた。

何回日は登り。

何回新しい年が何回明けたのか全く分からなくなった時。

大きな変化が訪れた。

私の住んでいた場所が再び魔物に襲われたのだ。


私は建物の奥閉じ込められていた為助かったのだが、

それをまた後悔する事になる。


そこでの暮らしは、

幸せでは無かったが、

ましだった。


その後自分に降りかかる出来事に比べて遥かにましだった。


私は回りから物音がしなくなるのを待っていた。

誰かが助けてくれるのをずっと待っていたのだ。


魔物が徘徊する音が無くなって二三日経って、

人が歩く音を聞いた。


私は喜んで、物音を立てて自分の存在を伝えた。

そして、全く私の異図は通じる。私を見つけた人は、私を乱暴に馬車に乗せたのだった。

それから馬車に揺られどことも分からない場所へと連れていかれると、


私は売られた。


その人は奴隷商だった。

それからは生きている事を後悔する日々だ。


私を買った男は私が痛みに体を捩ると喜んだ。

暴行を早く止めさせる為に、あまり痛くない時に痛い振りをしたら、怒った男は、私の両耳を切り落とし、顔に熱湯をかけた。


『ヴヴヴ!!』


と声にならない悲鳴を上げると。

男は『ケタケタ』と笑って喜んだ。


傷付けられ、そこに薄めたポーションをかけられる。

これの繰り返し。


何回も、

何回も繰り返され、


やがて、痛がる力すら無くなった時、

やっと男は私を捨てた。


私はやっと死ねる。

そう思った。

だが、甘かった。


私は殺される事無く、元の奴隷商の所に戻された。


そしてわこんなボロボロの私を買う人間が現れた。

良く分からないのだが、かなり上の身分の人の様で、奴隷商人が下手な敬語を一生懸命使っていた。

その男は私に向かって、


『良かったな。おまえはついてるぞ。私は『エクストラヒール』が使える、だからお前を治してやれる。精々私に尽くす事だ』


優しそうな声だった。

そしてその男が『エクストラヒール』を使って私の体を治す!

体が温かくなって、体が弛緩する!

やっと助かった!


やっと助けてくれる人が現れた!!


喜び、私はゆっくりと目を開けて目が見える様になった事にも感動し、喜んだ!


目の前にはとっくに忘れていた色が、物が動く様が見る事が出来る!


しかし、喜びもつかの間。

男が私の腕と足が治らないのを見て、


『どういう事だ?なぜ治らない?もしかして。腕と足の欠損は生まれつきか?!』


男は声の調子を低く落として言った。

私は正直に、久しぶりに声を出す感覚に戸惑いながら、


『はい。私は多分生まれつき腕も足はありません』


そう言うと。

男は烈火の如く怒った!


『ふざけるな!!こんな不良品!!誰が買うというのだ!!』


そう言って、

治った私の喉をもう一度潰し。


私の両耳を尻尾を切り落とし。


顔や頭を焼くと。


私の両目をくり貫いた。


そして大きく殴られ地面に転がった。

それでも私の受難は続いた。


再び買われては傷付けられての繰り返し。

ただただ、苦しみにのたうち回る毎日。


もうダメ。

本当に死なせて。


何度なのか数える気にもならない位、奴隷商の牢屋に入れられたある時。

私を見た奴隷商人は、


『もうダメだなこりゃ。ゴミ箱行きだな』


そう言って私を別の牢屋に入れた。


あぁ、やっと死ねるのかな?

そう思った時、フツフツと怒りが込み上げてきた。


何だったんだろ、私の人生。


何度も何度も殴られ、


苦しみを味わって!


良い事なんて一個もなくて!


ただただ、死にたいと願う毎日!


あそこで死ねば良かったなって!


あそこでも死ねたかなって!


そんな事ばっかり考えて!


そして!


そして!


今!『やっと死ねるのかな』ってホッとしてる!!


何だったんだよ!!


何が悪かったてんだよ!!


どうしろって言うんだよ!!

私の人生は何だったんだよ!!


クソ!クソ!


怒って体を動かそうにも1つも血からは入らない。

その慟哭の中、


なんなんだよ!!

ミンナ、ミンナ、ミンナ!


ゼンブシネバイイ!

スベテスベテ!シネバイイィィ!!


そう呪おうとしたその瞬間、


何か暖かいものが私には触れた。

その瞬間体に緊張が走る!


『ヒール』だ!


ヒールを受けるのは、その後暴力を受ける前触れだ!


体を緊張させる!


私の身体は牢屋の中から出され、地面に転がされた。

チクショウ!私はまだ殴られるのか!!

そう思った時。

再び身体は暖かくなった。


それから数人の男が何やら話をして、

私は再び買われる事になった。


私を買うと言った男は私の耳元で、


『良く頑張った。もう大丈夫だ』


そう言った。

その言葉に体の力が抜けようとするが、

気を引き締める。

そう言っておきながら私を殴るなんて当たり前だから。


でも、

私が殴られる事は無かった。


何やら宿の様な場所へ私は連れていかれた私は、

まず、水に浸けられた。

水に浸けると言っても、その水は暖かかった。

暖かい水はとても気持ち良かった。


そして体を拭かれ柔らかい椅子の様な物に座らせられると、食べ物が与えられた。

その食べ物は今までに食べた事の無い物だった。

『口を開けて?』と言われて口を開け、食べ物が入ってくるのを待つ、唇にそれが触れた瞬間、その食べ物の暑さから口を思わず背けたのだが、私を買ったご主人という人は、


『ご!ごめん!熱かったか?』


そう言って謝った。

その後は、『ふー、ふー』と、冷ましながら一口一口、私の口へとそれを運んでくれた。長い糸の様な食べ物で、大変食べ辛いのだけど、柔らかく食べやすかった。

後に知ったのだけどこの食べ物は、『カップラーメン』というらしい。

他にも、ピラフやポテトチップスという食べ物を食べたりするのだが、私のお気に入りは『カップラーメン』になる。

私は、ご主人様が『ふーふー』しながら私に食べさせてくれるこの食べ物が大好きになった。

この日から私は幸せ者になった。

新しいご主人は私に優しかった。

私の体を撫で、優しい声を掛け、常に気遣ってくれた。


私はご主人様が大好きになった。


いつもご主人様の匂いを嗅いでいた。

良い香り、嗅いでいるだけで安心出来る。

背中に背負われてる時も、同じ布団で寝てる時も、いつもご主人様の匂いを嗅いでいた。

体をご主人様に擦り付け、ご主人様の体を口で啄んだ。


初めてと言って良いぐらい安息した日々だったのだけど、私が不安になる提案をご主人様はしてきた。


『エクストラヒール』の使用だ。

私を治す為に『エクストラヒール』を使うと言ったのだ。


『エクストラヒール』を私に使ったあの男が思い浮かぶ。

私の体を治しておきながら、再び同じ傷を私に与えたあの男が、、、。

ご主人様も私の体が、私の手足の欠損が生まれつきで治せないと知ったら、、、。

不安が大きくなった私は、その提案に首を振って答えた。


怖かった。


もう一度捨てられるのが、

ご主人様以外の人間に捨てられるのなら良い。

別に気にもならない。

でも、ご主人様だけには捨てられたくなかった。ご主人様だけには、、、。

どうか、どうか!

どうか!お願い!

捨てないで!!


エクストラヒールの使用を拒んだら、ご主人様が『じゃあ、エクストラポーション的なものを使う?それとも僕が『エクストラヒール』を覚えて使える様に頑張ってみる?』と、言って、これを断るのは流石に不自然なので私は小さく頷いた。


それからご主人様は『エクストラヒール』を習得する為に必要な金貨100枚というお金を貯めようとするのだけど。

その為にご主人様がした努力は凄まじいものがあった。


『強くなる』


そう言ったご主人様はレオンさんって人に訓練を受けるのだけど、その訓練の内容は常軌を逸していた。

私は目が見えないし、訓練なんて受けたことが無いけど気配や音から分かる。

レオンさんは当たり前にご主人様の体を傷付ける。骨を折ったり、切り傷を与えたり!

しかもその傷を治す事を禁じて、そのまま戦う事を要求するのだ。

骨を折られ、口から血を吐いて、

それでも、

それでもご主人様は立ち上がった。


私の為、

私の我が儘の為。


私が与えられた暴力となんら変わらない傷を何度も受けては立ち上がるご主人様。

血まみれになっても、

両腕が折られても立ち上がるご主人様。

私も、私も立ち上がる事が出来るかな?

ご主人様の様になれるかな?


いや、ご主人様の様に立ち上がろう!


ご主人様が『エクストラヒール』を唱えて下さったら、お願いしよう、『出来ない事ばっかりだけど、何でもします!頑張ります!絶対に私も立ち上がります!だから側に置いてください』って!


でも、

それでもやっぱり私の手足の欠損が生まれつきのもので、治せるものでは無いと知って、私を要らないって言ったら、、、。


その時は、

その時は、、、。


懇願して殺して貰おう。


きっと私は耐えられない。

ご主人様に捨てられたらきっと耐えられない。




そしてとうとう私に『エクストラヒール』を使う時がやって来た。

ご主人様は約束を果たした。


私に『エクストラヒール』を使うその時、不安で体が硬直する。

その私の体を優しく抱きながらご主人様は『エクストラヒール』を唱えた。

力が体の中から溢れる!

そして再び取り戻した視界!


『ごめんなさい!ごめんなさい!私!』


私がそう叫ぶと、


『良いんだ!大丈夫だ!分かってる。何の心配も要らない』


ご主人様はそう言った。

用意していた言葉は何一つ要らなかった。

全て分かった上で、私を受け入れてくれた。


『大丈夫だ。何の心配も要らない』


そう言って私の体を抱き締めてくれた。

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