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8限目

目を留めてくださってありがとうございます。

 剣は喋らない。


 多分だけど、それが当たり前のことだと思うんだ。

 もちろん、そう言う物語やうたを聞いたことが無いとは言わない。だけど、そういうのはそういうお話の中の存在であって、現実には存在しない……と言うか誰も見たことが無いと言うことになっているはずな訳で。授業で見せてもらった武器にエルフやドワーフが作ったものや魔獣や幻獣の身体の一部が使われたものもあったけど、意思を持って喋る……会話する能力がある武器と言うものは存在しなかった。せいぜいきまった音を鳴らすとか、持ち主が唱えた呪文を補足する程度の機能だ。それだって、とんでもない代物らしいけど。



「って、しみじみ考えてる場合じゃねー」



 相変わらずのっしのっしとドラゴンが迫ってきている、やたらゆっくりと。

 この野郎、俺が弱いと見て余裕見せてやがるな。俺の後ろには一応校長先生もいるんだぜ? さっきから全く動かない上に気配すらないから、正直俺自身いるのかいないのか不安なくらいだけど……っていうか倒せなくていいんじゃなかったのか。俺もう軽く死にそうなんだけど、どうなったら試合終了の鐘は鳴るの? この剣喋るくらいだから重要なものなんでしょ? それともこれ、この剣を手に取った瞬間にドラゴンにぶっ飛ばされた俺が見てる夢とかなんだろうか。喋る剣とか現実味が無いし。



『夢じゃねーぞ? あと、心の声だだ漏れだから、しんどいなら声ださなくても大丈夫』


(おいおい、そこは眠っても良いぞとか、喋んなくても良いぞじゃないのかよ)



 現実逃避するなと、まさかとは思うけど戦えと、そういいたいのかこの剣は。俺に、ドラゴンと。さっすが校長先生が用意した剣、揃って無茶なことを言いやがる。



(どうしろって言うんだよ、身体動かないぞ? 俺)


『だいじょぶだいじょぶ。お前歴代で類を見ないくらい才能あるから。二代目には劣るけど』


(いや、二代目って誰だ。つか才能だかなんだか知らないけど、身体が動かないのはどうしようもないだろ。もしかしたら骨とかも折れてるんじゃないか?)


『いやいや、お前すごい防御力能力あるから大丈夫だって』



『どんなに痛かろうが苦しかろうが、俺を持ってる限り物理属性なぐるけるじゃ絶対損傷しないから』



(損傷って……なにそのいやな防御能力……っていうか竜の吐息 ほのおは?)


『喰らったら死ぬな』


(痛くて動けないんだけど)


『今は根性で動け』



 動けないって言ってんだろ……もういっそ死んだふりでもしたいところだけど、息が詰まって呼吸が苦しいせいで勝手に身体が跳ねる。損傷しないとは言うけど、痛さのあまりびっくりして死ぬことだってあるらしいし……っていうか損傷って生きた人間に使う言葉じゃないだろ。くそ、どこから処理したら良いのかわかんないけど、とにかく動かないと。


 ダメ元で身体をよじると、意外なことに痛みでどこかが突っ張るとか、力が入らないとかは無い。本当に、ただひたすら痛いだけみたいだ。いやでもただひたすら痛い。めちゃくちゃ痛い。


 だけど立ち上がる。立ち上がれる。



「い、いたいいたい、いたいいたいいたいいたいいたいいたい、いたいぃぃぃぃいぃぃいぃいいいいいぃいいいいぃぃぃいいぃいぃぃぃいいいいいいいいいいいい!!!」


『おー。元気じゃねーか』



 ああそうだな、こんだけ叫べりゃ肺も万全だろうよな。くっそ痛い。めっちゃ痛い。死ぬ程痛い。死んでないけど。


 出来ればまた倒れて痛みでのたうち回りたいくらいだ。だけど、頭の片隅のちょっとだけ冷静な部分が、そんな暇はないのだと告げている。立ち上がって叫びだした俺を見たドラゴンが警戒を強めて足を止め、同時にさっきまで引っ込めていた殺気を再びあらわにしたのを見て取ったからだ。ついさっきまでの余裕が純粋な殺意に取って代わったのは……余裕が無くなったと判断したからだろうか。


 つまり”殺印”が他の魔獣や幻獣に促すのは、単なる興奮状態とか殺意と言うよりはより嗜虐的な……あるいは人間がもつ復讐心とか見たいな理屈に合わない感情なのかもしれない。


 ……つまりどんなに殴られても痛いだけで死ねない俺は……想像したくないな。


 ドラゴンはしっぽが届くよりも少し遠い距離から俺を睨んでグルグルうなっている。俺が刃物を持ってるのを見て……握り直してちゃんと使えるように持っているのを見て攻撃してこないんだろうか。だとしたら炎を吐きかけて攻撃してきたりしそうなものだけど。



『というかそれを警戒してもう少し動くべきだと思うね。オレぁ』



 うるさいよ。変に動いて刺激するのも怖いだろうが……と言いたいけど、実際その通りなんだよな。というかなんで吐いてこないんだ?


 もしかしてだけど、このドラゴンの『竜の吐息 ほのお』は既に何らかの手段で封じられていて、絶対に死なないことがわかってるから校長先生も手を出さないんだったりするんだろうか。倒せなくて良いってのはとりあえずの建前みたいなもので、死なないことを前提にした上でドラゴンを倒すまでは帰れないとか……なんとなくありそうでいやだ。そうやって今後もこんな感じに格上とばっかり戦わされるとか。グリフォンとかバジリスクとかケルベロスとか……もっと大きいドラゴンとか。このドラゴンとそれらのどっちが難敵かはわからないけど。



『なぁ、そろそろ退屈なんだけど』


(どうしろって言うんだよ)


『そろそろこいつ殺して、話を進めようぜ?』


(どうやって?)


『それはまぁ、オレに任せろ。お前の力はオレと喋ることや、単に固いってことだけじゃないぜ?』



 お前と喋れるのも俺の能力なのかよ……?

剣の声は人の声……っていうか自分で言ってれば世話ないですよね。もう少し展開早く出来るようにがんばります。

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