30限目
この冒険者学校の外観は、大まかにいうと9つの塔で構成されている。
中央にあるの最も大きな塔が、教職員がいたりなんらかの儀式が行われたり、集会を行ったりするための本塔だ。当然校長室も保健室も食堂もここにあるし、地下には闘技場 や迷宮 がある。この学校の施設の八割はここに集中していると思って良いだろう。
そしてそれを挟むように二本の塔があり、それをつなぐ環状の建物がある。昇没方 に立つその塔がそれぞれ男子寮と女子寮である……というか、環状の建物を塔で二分した陽方 が女子寮で陰方 が男子寮になる。塔自体の中身は、談話室や軽い運動ができる空間だ。生徒間の交流のためだろう。ちなみに夜に入ると魔法で拘束されて、翌朝吊るし上げを食らう。俺は食らったこと無いけど、オットーとモディエフが一回されてた。普通、そういうのされるのって男の方じゃ無いんだろうか? まあ、良いけど。
ともかく、最後がさらにその外周、この学校という空間を一区切りに仕切る塀と、その間に等間隔で立つ6本の塔だ。いわゆる教室はそれらの塔に入っており、塔ごとにいる管理人がその内装やなんかを全部管理している。それはもう教室単位で行われ、一々授業に合わせて変えたりしてくれるわけでも無いので、結果的に授業の担当をする教師たちは必要に応じて内装が適当な塔の教室を選んで授業を行うことになる。
ちなみにその辺の掲示を行うのは、本塔の掲示板だったりする。
んで、部室棟というのはその一番外周の塔と塔の間の塀にくっついて立っている建物群だ。
「部室棟なぁ……どこだっけか?」
「この場合は五月の……紫水の壁の方じゃ無いか?」
いや、そもそも部室ってのがなんなのかだな。
学校で教えてくれることは結構たくさんあるけれど、その内容は基本的な生存技術と踏破能力に偏っている。食べられる植物の見分けや解毒方法は教えてくれても、それらをおいしく調理する方法は教えてくれない。旅程に合わせた装備の見極め方や糧食の数え方は教えてくれるけれど、旅程の組み方は教えてくれない。いや、基本的な旅程の組み方は教えてくれたけど、その短縮方法とかはなんだかんだで先輩とかに教わることの方が多い。剣術等の武器術や魔法を教えてもらうことはあるけれど、戦う魔獣や幻獣ごとの個別の指導なんてものも無い。いや、それはまあ蒐集歌留多 で自習させられてるけど。
とにかく、そう言ったいろんなことを掘り下げて自主的に学生たちが研究する活動が研究部であり、部室とはそれが利用する部屋のことだ。
「なんで?」
「風向きと日当たりの関係で、食料が保管しやすいから」
「詳しいな」
「でもないぞ、知ってるだけで」
もっとも俺はそもそもの能力が高く無いからどうしても自習に割かれる時間が多くなり、特定の研究部には所属せずにいろんなところで先輩の世話になって成果を拾わせてもらっている。けれど、その中でも美味しい料理なんてものは優先順位が低いので、それ系の研究部がどこに部室を構えているのかはよく知らない。
ただまあ、保存食の作り方を研究しているところは知っているので、多分その辺にはあるだろう、という話だ。まあ美味しい料理を作る研究部はなくても、最悪干し肉とか煮詰めた野菜の塩漬け とかがあればつまみ食いさせてもらえるかもしれない。
「というか、お前らはなんか部に入ってないの?」
「ん? ら? ユーティエ?」
「いや、お前とオットー」
「無いよ。なんで?」
「狩人としての技術、欲しがってる研究部あると思うけど」
「めんどい」
えー……学内の活動に貢献しようぜ。研究部の研究内容って、なんだかんだで学校自体に知識として還元されて図書館に入ったり、教師や先輩から教えてもらえるようになったりするのに。
っていうか、お前がそういう部に所属してたらもうちょっとこう、食物 分けてもらったりするかもしれないのに。
「まあ、とにかく行ってみるか」
「うまいもん食えるといいな」
「……そういうのあんまり期待すんなよ」
今俺の中で主役 は保存食なんだぜ。
いつも読んでくださってありがとうございます。




