28限目
「よし、腹減ったからなんか食いに行こうぜ」
「お前……傷がそう見えなくなった途端元気だな」
「オレはいつだっていつも通りだぞ」
「ああそう」
俺の希望で切り替えてもらった治療方法は、一切俺たちの目につかないように行われた。
なんでもこれは先生の秘密の技術だそうで患者にも治療の様子は見せられないんだとか。実際治ったからその辺のことはどうでもいいんだけどな。
ただ、治療の後遺症として肩の力があんまり入らないのと、ひどくだるいのが問題か。
……本当に力入らなくなるんだなぁ。
治ったのに力が入らなくなるって、なんか変な感じだ。すっごく理不尽な感覚。あらかじめ鍛え直しとは言われていたけど、これってどれくらいかかるんだろう? 半月くらいでなんとかなればいいけど、折れたのをゆっくり治したときは治りきるのに二月、そのあと元どおりに動くようになるのに一月と半分くらいかかったんだっけ?
で、繊細な動きとかができるようになるまではさらに一月。面白半分に虎挟みを作らされた結果手が挟まって大惨事になったりもしたか。さすがにそっちは魔法で直してもらったけど。
自力ではいまいち持ち上がらない腕を右手で持ち上げると、手首がくたりと折れた。いや、力を入れることはできるんだな。力が足りて無いだけで。感触とかもちゃんと返ってきてるから、座りっぱなしで足が痺れたりするのとも違うんだな。
と、背中に衝撃。重い……
「なあ、そんなこといいから飯行こうぜぇ」
うん、いや、無視したのは悪かったけどさ、やめろよ、普通に倒れるぞ俺。
「いや、俺は部屋帰るからお前オットーでも迎えに行けよ」
「あいつ多分もうどっかでなんか食ってる。オレにはわかる」
「双子の共感覚 とかってやつだっけ? 怪我したらわかるとか言ってたよな」
「いや、これはただの勘」
「えー」
「逆に言えばあいつは全然無事ってことだ。それなら確実にそろそろ腹を空かせてる。そして絶対我慢できない!」
「もう3時くらいだぞ」
「絶対腹を空かせてる!」
「……そうか」
まあ、俺も確かにお腹減ってるけどさ。なんかどっと疲れたから一回部屋に帰って休みたいんだって。
どうせ夕飯の時間になったら食堂開くんだから、そのとき食えばいいじゃんか。わざわざ食物を探しに行ったり、空店探しに行ったりするの面倒だよ……
「お前今、飯を調達するのが面倒だと思っているな?」
「……おう」
「ところでここにユーティエが作った包餅 があります。しかもなかみは肉と卵」
「お前口調が気持ち悪くなってるぞ」
「そこはもっと別に反応するとこあんだろ……」
そう言って襷のように肩にかけていた包を俺の前に突き出すモディエフ。なんか妙な包を担いでると思ったら、そんなものを持ってたのか。
いや、でもここまで匂いとかそれらしいのなかったぞ?
「なんでだよー。ユーティエの手作りだぞ? 食いたいって騒ぐところだろ」
「騒いだらお前値を釣り上げるだろうが」
っていうか半信半疑なんだが。その包に本当に食物入ってるのか?
「でも欲しいだろ?」
「いや欲しいけど、それ本物 か?」
「本物って……本物……」
お、こいつも鼻をヒクヒクさせだしたぞ。うんうん、顔が変になってる。
うん、何かに気づいたような表情になった。何か思うところがあったんだろう。真剣な顔で包を開いて……
「がっ!?」
おまえ、いきなり人の肩を、今もうあんまり痛く無いけどちょっとびっくりしただろうが!
「おいセイ、奢れ」
「どうしてそうなった」
「オットーに」
「うん」
「オットーに包をすり替えられてた……くそぉ!」
「……そうか」
なんでユーティエの手料理がそんなに大人気なんだよ。おかしいだろ。
いつも読んでくださってありがとうございます。
今週も遅刻ばかりで申し訳ありません。




