19限目
『それで、お前いつまで寝てるつもりだ?』
(いつまでって言われてもな……単純に肩が痛くて体が動かせないんだけど)
『ふーん』
(淡白な反応をどうも)
と言っても、実際いつまでもここに寝てるわけにもいかない。何とかして立ち上がるか。
1.とりあえず剣を手放す。
2.右肩が下になるように少し体を傾ける(多分この時点で左腕の重みに引っ張られた左肩が痛むのは我慢する)。
3.右腕を胸あたりまで持ち上げ、肩腕立て伏せの要領で体を浮かせる。
4.膝を曲げて体の下に入れる。
5.立ち上がる。
よし、この手順でどうだろうか。
『いや、どうだろうかとか言われても……お前結構余裕あるだろ』
(死ぬほど痛いけどな、三回も気絶しかければさすがに慣れてくる)
『……気になるんだがな』
(なんだよ?)
『お前今さ、完全物理耐性戻ってるんだよ。オレ握ってるから』
(まあ……そうだろうな)
『自然治癒ってするのかな?』
なんかすごい怖いこと言われた気がする。
(え、いやでもあれだろ? お前、お前俺の能力を好きにつけたり消したりできるんだろ)
『無理言うな。そんなことできるわけ無いだろ』
気絶寸前の俺をたたき起こしたりどこからともなくディスケロス引っ張り出してきておいて、今更何がどう無理なんだかちょっと言ってみろ。
っていうか、もっとこう、なんかここから一気に挽回できるような便利なことできないの?
『せいぜい完全物理耐性のオンオフくらいだよ』
「そもそもはそれ出来りゃ充分だっつう゛う゛う゛う゛ぅ゛ぅ゛……!」
『おー、無理するなー』
まあ、こいつ手放せば済む話なんだけどさ。
さて、『オンオフ』とやらはどこで切れるのか。多分『オン』と『オフ』だろうけど、『オノ』と『フ』、『オ』と『ノフ』なんて可能性も捨て難い。あるいは『上中下』みたいに三つの言葉という可能性もあるな。八割型、有無の二言だろうけど。
まあいいや、とりあえず深呼吸。右手を剣から話して……よーし、がんばるぞー。
『お前やっぱ余裕あ——』
(おお、本当に……じゃなかった)
「本当に聞こえなくなるんだな……うづぅ゛」
……。
「手放してる間に俺が言ったことって聞こえてるのか……?」
何か、剣 が絶対知らなくて、聞かれても困らないことってあったかな。
例えばさっき聞かされたばかりだし『真名』とか……は、何かの拍子に他の人間にばらされたら困る事の代表みたいなもんだな。なんかこう、もっと普通の個人情報……例えばあいつらの経験の有無とか……は、ちょっと他人のことだし勝手に喋るのは無いな。それに、今まで剣を持ってる間に記憶を読み取られてる可能性は……いや、それを言い出したらあまり意味が無いし考えから省こう。むしろもっと単純に、今から俺の背後の地面に適当に数字でも書いて、それを読み上げるとか、その辺が妥当なんじゃ無いか。うん、それが良さそうだ。よし、なんか書いてみよう。
……もちろん、起き上がれてから。
「いっ! き゛き゛き゛き゛き゛き゛ぃ゛ぃ……」
よっし、何とか両膝をたたんで体の下に入れられたぞ。あとは屈伸の要領で立つだけだな。
「よいしょっ……と……がっ、あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛ぁ゛!」
い、痛い。痛い。痛い。どうしようもなく肩が痛い。重力に引かれた腕の重みでめちゃくちゃ痛い。叫ばないとやってられないな。これは何とかして肩を刺激しないように腕を固定する手段でも見つけないと、これをぶらぶらぶら下げたまま歩くとか正気の選択肢じゃ無いと思う。
「あ、立ち上がるときに剣拾うの忘れてた……」
……拾うとき気をつけないと、指が地面に当たってまた肩に響くんだろうなぁ。
見捨てたら、だめだよな。やっぱり。俺の身が危なさそうだし。
更新遅くなりました。いつも読んでくださってありがとうございます。
ちょっとドン詰まり気味です。




