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18限目

『あ、気絶するの禁止な』


 消える直前の意識の端に、そんな剣の声が引っかかった。全身が焼けるように痛んで、意識が引き戻される。指先から燃え上がるみたいな感覚に、一瞬全身の感覚が吹き飛んだ。肩の痛みもだ。

 だけどそれは一瞬だけで、意識がはっきりすると燃えるような感覚は消えて、肩の痛みがまたすぐ戻って来る。何となく感触でわかる。踏みつけられっぱなしだったから痛みが消えなかったわけじゃ無い。本当に砕かれて、踏みにじられて、そのままの痛みがあるんだ。《完全物理耐性》が効いてないってのは本当らしいな。

 というか何だこれ。剣が何かしたのか。その割に他人事みたいな口調だけど。

 いや、他人事は他人事なのか。あれ、剣から見て他人のこと言う時も他人事でいいのか? いや、何考えてるんだ俺。

 そもそも剣にとって持ち主って他人でいいのか? 剣に他人と思われてる持ち主って……


『いや、他人とは思ってないけど……ダメだな、こいつ集中力が足りて無い』


 それは昔っからよく言われるけど……あー、肩が痛くて動ける気がしない。左肩だったから剣を握る握力には問題無いけど、どうやって体を起こせばいいのかわからない。なぜかディスケロスは見えないけれど、追撃があった時どう動けばいい? 右に転がって回避しようとしたら左を思いっきり打ってしまうし、左側に転がろうとしたら相応の体重が砕けた左肩にかかる。どっちも想像したく無い。

 じゃあ、起きあがれるかっていうと……左手をついたら無理だし、右手をついたら一瞬だけど左肩に体重かかるよね。それもやだなぁ。とりあえずその中で可能性があるのは右回転か、右手をついて起き上がるか。回転だとその後も続くから起き上がる方がいいか。


『しかも、危機感も足りて無い……』

「いや、危機感っていうか、もう無理かなーって」


 ディスケロスにとどめを刺して、ドラゴンもどきを一回ぶっ殺したらそこで俺の人生絶頂だったんじゃ無いかなって思うんだよね。もう一回ディスケロスとか絶対無理だって。


『えー……お前そのうちドラゴンともっかい戦わされるんだぞ? 多分』

「いや、絶対無理……っていうかディスケロスは?」

『もう消した』


 ……どういうこと?


『いいからこのダンジョン抜けてその怪我治してもらえるところいこうぜ』

「いや、ちょっと動けそうに無いし、このまま詳しく教えてくれんね」


 そもそも起きあがるのきついんだって。逃げたり戦う必要無いならこのまま寝たいくらいだ。

 ……いや、痛くて寝るのは無理かな。


『うーん、しょうがないか。お前思いの外根性無しだな』

「正直、お前の性能のせいで気が緩んでたのは認める。ただ、この試験競技場 ダンジョンに途中退場の手段は無いんだ。攻略 クリアするためには体力を回復させるのも必要なことだぞ」

『わかったよ。何から話そうか』


 ……と言っても何から話せばいいのか、何を聞けばいいのか、一周回ってさっぱりわからない。

 いや、細かいことは後でまとめるとして、今はとりあえず一番の問題を片付ければいいのか。


「さっきのディスケロスは」


 ……。


(さっきのディスケロスはもう襲ってこないのか?)

『おう……どうしたんだ?』

(何が?)

『いや、辛いみたいだから、今回は声を出しててもよしとしようかと思ったんだけど』

(声出す方が肩に響く)

『なるほど……それでさっきのディスケロスなんだけどな。お前の言う殺印とやらがあれの正体だ』


 それは、殺印に引き寄せられてここに来たって意味でいいのか。いや、だとしたら消したとか、心配する必要が無いのがわからないな。例えば『殺印』を《連結》と《覚醒》で強化して……うーん?


『おお、すごい正解に近い。限りなく正解に近いぞ。でもちょっと違う。あれはな、オレが《連結》経由で《覚醒》させたディスケロスの『殺印』そのもの……つまり魂だな』

(つまりの前後が繋がらないぞ。それだと殺印が魂みたいだ)

『そうだぞ。要するにその『殺印』とやらは、倒した幻獣に取り憑かれて呪われてる状態のことだ』


 その情報は初耳だな。いや、初耳っていうか……ええ? 驚くべきポイントが多くて困るな。


(魂って……実在するんだな)

『微妙なところだけどな。肉体は同じでも魂が違えば別人にはなるから、一面として実在するのは確かだな』

(……もしかして『殺印』で取り付いてる魂の目的って、取り殺して入れ替わることとか)

『いや、単に殺すことだな。どっちがいいかは知らんが』


 他人に迷惑かける心配が無い分殺すだけの方がいいんじゃ無いか。いや、まあ殺印に引き寄せられたのに襲われる時周りにいる人には迷惑かかるけど。

 ……っというかさ。


(じゃあなにか、今回ディスケロスに襲われたのはお前のせいだと)

『そういう見方もできる』

(違う見方って?)

『オレがお前の特訓相手になってやった』

(……その考えはなかったな)


 というか用意してやったじゃなくてなってやったなのか。どういうつもりだったのかがわかる発言だな。受け入れるかどうかはともかく。


『いや、お前があれを倒すのは今後のために重要なことなんだって』

(どういうことだ?)

『お前の《完全物理耐性》な、取り付いてるあいつを《覚醒》させて得てる能力なんだよ』

(倒したらだめじゃ無いか)

『いやいやどっちみちあいつの魂が限界になったら無くなっちまう能力ってことさ。だから取り付いてるあいつを倒して、完全に屈服させて、契約するんだよ。お前の能力として作り変えるんだ』

(……展開が派手すぎて意味がわからん)

『幻獣倒す、幻獣の能力を一時的に得る、取り付いた魂を屈服させる、完全にお前のものにする。OK?』

(最後の一言以外は理解したけど、何? 『わかったか?』みたいな意味?)

『その通りだ。『OK!』って元気よく返すのがルールだぜ』


 ルールもわかんねーよ。

 あと、何をしたらどうなるとお前が思ってるのかはわかっても、その仕組みは全くわかってないからな。

読んでくださってありがとうございます。

今明かされる主人公の能力の真実……なんかこんなもどっかで見たな。とか思ったら教えてください。参考にします。

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