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「……柚さん?」

 待ち合わせ場所に着き、呆然としていた私に対して彼は不思議そうに私の名前を呼んだ後、陽介は首を傾げていた。

「ふふっ、柚さんが研究以外でボーとしてるなんて珍しいね。どうしたの?」

 と、陽介は私にそう聞く。

 ……こんな陽介の笑顔を見られるようになったのは、何時の事だったかな。

 前までは私に対してだけは、照れからか素っ気ない態度ばかり見せていたのに、今じゃその事が嘘みたいに陽介は素直に表情を、言葉を表現してくれるようになってきた。

 君も大人になったって事なのかな?

 今じゃ見る事の出来ない、君のツンデレ姿も今思えば懐かしい事だな。

 私が君に対して、敬語を使うのを止めた時期からだったけな、……最後に君がツンデレをしていた姿を見たのも。


「……何でもないよ、ただ君も大人になったなって改めて思っただけだから」

 と、私は誤魔化す。そんな私の誤魔化しも、君は嬉しそうに笑いながら「そうかな? 柚さんがそう思うならそうなのかな」と、同性とは思えないくらいの上品な仕草で照れ隠しをする君を見て、再び君の成長を実感する私。

 陽介のお陰で、復讐をする事がなかったと言っても過言ではないくらいに、君は……君の貴重な時間を私にくれたし、研究の手伝いだってしてくれている陽介には感謝を言葉だけでは伝えきれないほどだ。

 私はそう考えながら、照れ隠しをする陽介の髪を壊れ物を扱うような丁寧な手つきで撫でた後、王城へと向かった。


「騎里くんも、秋和くんも久夜くん達の晴れ姿を見ていてくれるといいね、柚さん」

 そんな陽介の言葉に、

「……そうだと良いな、きっと秋和は……久夜をからかいに来るついでに、祝いに来るんじゃないかって前々から思ってはいたけれど、実際に当日になると、本当に秋和達が祝いに来るような気がしてる」

 と、私がそう言うと、王冠を見つめていた陽介は私の方を見て、「そうだね、柚さん。俺もそんなような気がする……」と、私の言葉を君は肯定してくれる。

 そんな君が私には必要だ。……ずっと、友人として君には側に居て欲しいと願うけれど……、私の妻である未来は何故かそんな私の考えを、望んでいることを嫌がっている。

 秋和達を失ってからは直ぐ、私から彼を奪わないでくれ、とそう嘆き、未来を困らせた事もあった。

 “今”の私は……意地でも陽介を恋愛対象として見るつもりなんてない。

 未来はそれを分かってはくれなかった。

 大切な人に理解されなかったのはとても悲しかったけど、理解出来ないと言うのも理由も何となくは私にもわかるから、彼女の意見を否定する事も出来なかった。

 でもね、どんなに誰かに否定されようといつか、何処かで陽介とはまた会える……そんなような気がしているんだ。言葉に出せばその想いが叶うような気がするから……。

 と、私は考えていると、久夜と……前代王与一様が舞台へと現れ、優雅で尚且つ威厳のある風格のある雰囲気をまとい、堂々とした態度で一礼し、同性でも惹かれるような動作で久夜は床に方膝をついた。


 前代宰相が王冠を与一様に手渡し、久夜の頭に乗せ、彼が立ち上がり、私達の方へと顔を向けた瞬間の事だった。

 寒くもないのに……、雪が降ったのだ。

 ……否、これは雪ではない。思わず雪と勘違いしていまいそうなくらいに真っ白な羽根が次々と空から舞い降りてくる。

 ……それはまるで、久夜が王位を継いだ事を天使が祝福しているような光景にしか思えなくて。

 誰もがその羽根を掴もうとしていたが、誰にも掴む事が出来なかった。

 そんな中、久夜の手のひらに数枚の羽根が乗り、彼はその羽根をしばらく眺めていた後……まるで崩れ落ちるように座り込み、顔を両手で覆いながら声を殺して、大粒の涙をしばらくの間流していた。

 そんな久夜の姿を見た数分後、スローモーションのように落ちてくる一枚の羽根があり、私達は何故かその羽根に目を離す事が出来なかった。

 丁度、私達の視線の高さまで羽根が舞い降りてきた瞬間………………。


“君に幸せが訪れますように”

 そう文字が書かれていた。……何故だろうか、これを騎里と秋和が書いたと言う証拠は何処にもないのに……、どうして君達が書いたと確信しているんだろうか……?

「……柚さんッ……。柚さんの言った通りだったね、きっと今回は二人してこれを企んでいたんだよ、きっと。……そうだと信じよう? こんな事するの、騎里くんと秋和くんくらいなような気がするの」

「……そう、だな……」

 俺はそう返事するのが精一杯だった。


 どうしてだろう?

 嬉しいはずなのに、

 悲しくもないのに。

 涙が止まらないんだ。

 と、私はそう考えつつも、涙を流しながら自然と微笑みが溢れていた。

 そして私は、

「……今も、君達を私は愛しています。秋和、騎里……ッ!愛しい弟達よ、君に幸せが訪れますようにッ……!」

 と、私は小声でそう言った後、久夜はタイミングをはかったかのように立ち上がり、叫ぶようにこう言った。


「君に、幸せが訪れますように。……私はそう祈り、生きて行く事を誓おう。

……そして国民の皆もこの世界の幸福を祈り、幸福を掴み取るために……この私に力を貸して頂きたい」


 眩いくらいの笑みを浮かべた後、先程の笑みが嘘だったかのように表情を一変させ、久夜は真剣な表情でその言葉を口にしたのだった。



 『主人公だけど傍観者で脇役だけど?』を最後まで読んで頂き、ありがとうございました。

 バットエンドだけど、ハッピーエンド……になったかは謎ですけども。

 そしてダークファンタジーだったかも、実際は微妙な感じでしたけど。

 これで完結です。

 最後まで読んで頂き、本当にありがとうございましたm(._.)m



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