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 ただ理由を言わずに甘える俺に対して、何も言わず理由も聞かずにただ黙ったまま、俺を甘やかす秋和に俺は思い出した“前世での死の記憶”でダメージを被った心に、まるでじんわりと染み込むような秋和の優しさを感じていた。

 そんな秋和の優しさが俺の涙腺を崩壊させ、涙を流せと誘うかのような秋和の俺の頭を撫でる仕草に、目が渇かないかと心配になる程、俺は涙を流すことを止めることが出来ない。

 今は何も聞かずに甘えさせて欲しい、……そんな俺の願いを秋和は感じ取っているかのように、彼は俺を包み込むように抱きしめ、俺の髪をすくうように丁寧に優しく撫でる秋和。

 そんな秋和の仕草に、溜め込んでいた彼に抱いていた我儘を、心に留めておくことが出来なくなってしまった俺は、秋和にただひたすらに乞うように、

「秋和死なないで、側に居て、置いていかないで、独りにしないでッ……!

兄様は大好きだけど、俺が心から信じることが出来て、隣に居て心から落ち着くことが出来るのは、俺には秋和しか居ないのッ!」

 と、秋和の首筋に埋めていた顔を勢い良く上げて俺は、彼を“失う”と言う恐怖で声が震えるのを感じながらそう言うと秋和は、はにかむように微笑みを浮かびながら、……秋和は優しく柔らかい声で、

「側に居るよ、今はお前の側に……」

 秋和はそう言った。

 躊躇いもなくそう言い切った秋和に俺は、秋和の背中に手を回し、……力強く彼を抱きしめ返す。

 兄様のことは大好きだ。……だけど、自分が抱いている秋和へ対する友愛感情は、歪んでいると自覚する程に、俺が依存をするのは秋和だけ……、と俺はそう考えていた。

 確かに秋和に、俺は病的だとたまに思う程に彼を依存はしてるけれど、俺はけして恋愛感情は抱いている訳ではない。

 ……それは秋和も同じだと思っているし、彼との友情に、時に周りが見えなくなってしまう程、この関係に対して異様な程に依存しているのは、自分でも良く理解しているつもりだ。

 秋和もまた、俺達が“友愛感情”に異様な程に依存し合っていることを自覚しつつも、誰に言われようと聞く耳を持つつもりは全くないだろう。

 どんなに秋和ではない“誰か”に想われようと、俺は一度依存してしまったこの友人関係を、止めることなんて不可能に近いのだから。

 そんな俺達が抱く感情は、“俺”の娘だと言う女の子が抱えている、歪んだ感情とは違うと思っていた。……形は違えど、俺は歪んだ友愛感情を秋和に抱いていて、誰かの愛情に依存をしているのは、彼女も俺も同じだった。


 秋和は俺にとって“空気”のような存在だ。生き物は息をしなくては生きてはいけないように、俺は秋和を失えば“生きているだけの屍”となり、全てを拒絶するようになるだろう。

 病死の場合を除き、……無理矢理秋和の人生に幕を閉じさせた、その世界の全てを俺は拒絶する。

 誰に止められようと、例え大好きな“兄さん”に必死に止められようと、星和としての四度目の人生での“俺”が自ら死を選んだように、現世の俺もきっと再び、同じことを繰り返してしまうのだと思う。

 それはもう、秋和以外の誰も見えなくなってしまったかのように、依存しきっていた友人で幼馴染みである彼を失った俺の目には、この世界は輝いて見えることは二度とこない。

 俺は全てに無関心になり、息をすることすらも億劫となるのであろう。

 俺達には自分自身の未来を見ることは出来ないけれど、俺にとってまるで生き物に必要不可欠な“空気”のような存在である秋和を失えば、俺は一つの選択肢を必ず選ぶと言うことだけは、俺はわかっていた。

 今ならわかる、……“兄さん”が何故、『ブラコン番長』と呼ばれていた時に、舎弟である不良達を俺達に欠かさず、護衛につけていたのか。

 “兄さん”は感じ取っていたのだろう、……俺達がお互いに依存し合って生きているということを。

 どちらかが離れてしまえば、今にも消えてしまいそうになることを、“前世”の自分達でさえも気付いていなかったその事実に、勘の鋭い“兄さん”は感じ取っていたんだと思う。


 そんな俺達の関係は、

「純粋な友情じゃない」

 俺は言う、そして秋和は続けるように、

「そんなことわかってる、……依存し過ぎた友情だと言うことくらい」

 秋和はそう言葉にし、俺の髪をすくうように優しい手付きで再び撫でる。

 そして俺は、

「それでも構わない。誰に何を言われようと俺はこの友情への依存を、止めることは出来ないのだから」

 と、そう言った。


 そんな俺の言葉に秋和は、柔らかく優しい声で、俺の耳元で囁いた。

 秋和が俺の耳元で囁いたこの言葉は、俺だけが知ってれば良いことだ。

 ……この言葉は、例え兄様であろうと教えることはない、秋和がくれたこの言葉は俺の心の内に大切にしまっておこう。

 と、そう考えた後、俺は返事の代わりに口元を緩ませるような笑みを浮かべて見せるのだった。



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