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十四話 変貌したまえ姫

 昼の特訓場にて。華はまえ姫との決闘に勝利した。


 そんな華の元に菜乃家の家族は手放しで褒め、特訓場に来ていた武士や術師、大名の子も華に声をかけてきた。


「すごい! ほとんど攻撃を受けずに勝つなんて!」


「威力はまあまあだけど……魔術の発動速度がとんでもなく速いみたいね。中々やるわね」


「俺とも手合わせしてほしいです!」


 菜乃家側が賑やかになる中、華に敗北したまえ姫はワナワナと震えていた。



「こんなの、認めない……!」



 祝われる華を、まえ姫は恨めしい表情で睨みつけている。


 そんな彼女からは、何とも言えない悍ましい魔力が溢れ出していた。


「華姫……!」


 恨めしい声がまえ姫の口から溢れ、その言葉を耳にした華はまえ姫の方を振り向いた。


「まえ姫……?」


 明らかに様子がおかしい。まえ姫からは、人とは思えない妙な気配が漂ってくる。


「お前さえ……いなければ……!」


「ちょっ! 姫、流石にその物言いは……」


 まえ姫は従者である白夜の呼び止めに耳を一切貸す様子はない。


「姫、お疲れでしょうから……」


 せせらぎ家の術師である四十は、様子のおかしいまえ姫を回収する為に動いた。



 刹那。まえ姫から凄まじい閃光が放たれた。




「なっ……!」


 格闘場内なら魔法は使えないが、まえ姫は外に出ていたので、魔法は何の抵抗もなく発動された。

 閃光は空へと飛んでいき、華を目掛けて真っ直ぐ飛び込んできた。



「……!」



 華の周りには人が集まっているので、下手に動けない。強引に動いたら誰かが怪我をする恐れがある。


 華はその場に留まり、膨大な魔力により身を固めた。まえ姫の閃光を受け止める為だ。



「華姫!」



 閃光がぶつかる寸前、聞いたことのある声が全力で華を呼んだ。




「……あれ?」


 気がつくと、華の周りにいた人は全て消えていた。


 ……いや、全て消えはていなかった。


「此処はどこだ!?」


「あっ! 貴方は!」


 華の隣で叫んだのは、少し前に華と手合わせしてくれた紅乃焔だった。


「あっ! 華姫! ご無事でしたか!」

「えっと……焔様……?」

「名前を覚えていただけて大変喜ばしい限りです! あと様は必要ない!」

「焔さん……?」

「ありがとう!」


 華に名前を呼ばれ、焔は大声で感謝の言葉を述べながら話を続ける。


「実は華姫に閃光がぶつかる瞬間、私も咄嗟に閃光の光に飛び込んだんだ!」


「閃光……あの閃光のせいで、私達はこんな場所に?」

「そうだ。そして此処は……まえ姫が咄嗟に創り上げた結界の中だ」

「結界……」


 焔の言葉を聞いた華は、改めて冷静になって周囲を見回す。


 特訓場の景色はそのままだが、世界がやけに暗い。


 華は、この暗闇は夜よりずっと暗いと感じた。唯一の明かりは、周囲に置かれている街灯のみ。

 しかし、その街灯の灯りも、どういうわけか頼りない光を発していた。


 この空間は、誰がどう見ても違和感を抱くものだった。


「……ここが、結界の中……」


 華は勉強で知っていたが、実際に結界の中に入ったのは初めてだった。



『お前さえ、いなければ……!』



「!」


 結界の中を眺めていた華の頭に、恨み言が降り注いできた。


「えっ……!?」


 華は慌てて空を見上げ……空に浮かぶ存在に思わず目を見張った。



 華の見上げた遥か上空に、異形の存在が浮かんでいた。



「……まえ姫?」


 蝶の姿をした異形は、まえ姫の持つ扇子と同じ柄の翅を持っていた。


「なんで……あんな姿に……?」

「あれは……」


 扇子と同じ柄の翅と、先程と同じ恨み言を発してきたことにより、空を浮かぶ異形がまえ姫だとすぐに判断した。


 目の前の異形は、悍ましい声で叫び散らす。


『お前さえいなければ! 私は名門魔法学園に通えていた!』


「何を言って……」


『お前がそれを台無しにした! 全て台無しにした!』


 まえ姫は、八つ当たりに近い恨み節を華にぶつける。


「何であんな……」

「華姫」


 困惑する華に、焔は冷静に声をかける。


「逃げる準備を」

「……!」



『華! お前を此処で潰してやる! お前を潰して四季魔法学園に入って! 誰よりも強い術師になるんだぁー!!』



 空高くに浮かぶまえ姫は、恐ろしいほどの叫び声を上げると、扇子の翅を大きく広げながら輝かせた。


 そして広げた扇子の翅から、輝く閃光弾を無数放った。


「!」

 

 華と焔は即座にその場から飛び退き、閃光弾から逃げるように全力で走り始めた。


『ぎぃいいいいいい!!』


 まえ姫は悍ましい叫び声を発しながら空を飛び、無数の閃光弾を華に向けて飛ばしていく。


「キリがない……!」

「私に任せて!」

「華姫!?」


 華はその場で即座に振り返った。立ち止まった華に無数の閃光弾が降り注ぐ。


「はああっ!」


 華は飛んできた閃光弾をまとめて薙ぎ払った。辺りに閃光弾が散らばり、一際強い閃光を発生させて消滅した。


 その中で、薙ぎ払った閃光弾の一部がまえ姫の顔面に命中した。


『ギャッ!?』


 まえ姫が怯む中、華は残りの閃光弾もまとめて薙ぎ払った。

 上手く弾き返せたのか、先程より多くの閃光弾がまえ姫の全身に命中した。


『ゲェェエエッ!?』


 まえ姫はその場で激しく叫び散らし、浮力を失って地面に落下してきた。


 それと同時に、世界が大きく歪んだ。


 落下するまえ姫との距離が急速に開き、地面から木造建ての建築物が不規則に飛び出してきた。


「ああっ!」

「まえ姫は身を守るために、結界内を大きく歪めたらしい……!」


 華のそばに焔が駆け寄る。


「華姫は、あのような存在との戦いは初めてか?」

「はい。人間があんな存在になるところ、初めて見ました」

「よし! ならば作戦会議も兼ねてあの存在について教えよう! その前に安全な場所を探すとしよう!」

「はい!」


 華と焔は魔力を消し、まえ姫がいるであろう外から建物の中に入り込んだ。

 次回の投稿は未定です。もしかしたら、一から大幅に書き直すかもしれません。

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