第一章:(12)完
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この作品はロサンゼルスのギャングの世界の空気感を描くために、一部バイオレンスが描写が含まれておりますが、基本は主人公が偏差値30から東京大学へと進学していく過程ときっかけを描いたものとなりますので、楽しく読んで頂ければと思います。
それから暫くしたある日、いつも通り学校の図書館へと向かうと、ジョージのニュースが舞い込んできた。Jがバックパックを机に置く前にキングが口を開く。
「J、ジョージって奴知ってたよな?」
「俺の脇腹にナイフ突きつけた奴だぜ、忘れるはずねぇよ」
笑いながら答える。
「あいつがゴールドに属してたことは言ったよな」
「属してた?過去形か?」
「ああ、あの馬鹿こないだグリーンに寝返ったんだよ」
Jには驚きの話だった。つい先日ジョージが喧嘩した相手がグリーンのミックだったからだ。
この街の勢力図は複雑だ。キングが属するブルーやゴールドはロサンゼルス全域に勢力を持つ大きな組織だ。しかし、Jたちが住む街に限って言えば中堅組織のグリーンの方がゴールドよりも勢力は大きかった。この街に住み、この街で遊ぶジョージは、ロサンゼルス全域での勢力ではなく、この街でのみ勢力が大きいグリーンへと組織を乗り換えたようだ。
「おいおい、そんなこと許されるのか?」横にいたアーサーが口を挟む。
「いや、許されねえよ。だからゴールドはすぐに動いた。正式にグリーンにジョージを差し出すように申し入れてな。グリーンもゴールド相手に新入りなんかを理由に喧嘩したくはねえからゴールドの要請を飲んだ。そうなればジョージなんてすぐに終わりだ」
ある雨の日の夜、昔のゴールドの仲間にジョージは呼び出された。友人としての呼び出しと思ったジョージが現場に行くと、その場でゴールドの若手の襲撃を受けたという。
ゴールド側からの抗争にさせない条件は、その日、グリーンのメンバーが誰も街には出ないことだった。グリーンもその条件を受けてその雨の日の夜、誰も街には出なかった。ただ一人ジョージを除いて。ジョージは裏切り先の組織に切られたのだ。
灯りの無い裏路地、雨が降り続く中でジョージの身体は力なく横たわるだけだった。
淡々と語るキングの話を皆黙って聞く。
誰も同情なんてしない。裏の世界でも表の世界でも、裏切りがもたらす結果がハッピーエンドなことは稀だ。悪が栄える事例も多いが、裏切りは信用を無くす。
ジョージは自分の行動が何を生むのか、行動の次を予測することが出来なかった。だからギャンブルでも負ける。
その行動が得をもたらすのか損をもたらすのか、行動に対する天秤が無かった。そして、自分はどうなりたいのか、自分に対するビジョンが無かった。
負け犬になりたくない。見下されたくない。成功へのビジョン以上に、なりたくないビジョンを持つことは、人生で重要だ。Jがこの世界を見てきて最も感じたことだった。
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