閑話② 朝露組の夜
営業終了後。
掃除も終わり。
今日も三人は温泉に浸かっていた。
「ふへぇ〜……」
ミアが完全に溶けている。
「今日も忙しかったですねぇ……」
エナが肩まで湯に浸かりながら息を吐いた。
「でも楽しかった!」
ドロシィは元気だ。
三人とも。
最初はかなり緊張していた。
だが。
今ではすっかり馴染んでいる。
「《湯けむり亭》で働けて良かったよね」
ドロシィの言葉に。
二人も頷く。
「ご飯美味しいし……」
「毎日温泉入れますし……」
「お家も楽しみ!」
その言葉に。
三人の顔が少し明るくなる。
皆で暮らす家。
まだ直すところは多いらしいが。
それでも楽しみだった。
「ミリナさんって、お姉ちゃんみたいだよね」
「分かります!」
エナがすぐ頷く。
「優しいし」
「ちょっと抜けてるし」
「頑張りすぎるし」
「分かる……」
三人同時だった。
「ルーナさんも、お姉ちゃんっぽいよね」
「いっぱい褒めてくれる!」
「元気!」
わいわいと盛り上がる。
そして。
「じゃあバルミナさんは?」
一瞬、静かになる。
「……お母さん?」
「でも怒る時、ちょっとお父さん」
「分かる!」
三人は笑った。
そんな穏やかな空気の中。
エナがぽつりと呟く。
「……こんな毎日、初めてです」
二人が静かにエナを見る。
「私達の親、みんな冒険者だったじゃないですか」
ドロシィも頷いた。
三人とも。
冒険者夫婦の子供だった。
だが。
ダンジョンで両親を亡くした。
だから《朝露の家》にいた。
「最初は怖かったけど」
「今は毎日が楽しい」
ミアがぽつりと呟く。
「うん」
「帰る場所があるって良いよね」
ドロシィの言葉に。
エナも静かに笑った。
湯気の向こう。
温かな温泉。
笑い声。
少し前までは、想像もできなかった毎日だった。




