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「はぁ……」
光の差さない塔の地下。
一切の魔法の使用が許されない、外界が拒絶された施設。
たくさんの人の前で、偽物の精霊使いであることを暴かれた私は、極悪犯罪者を監視するための部屋に閉じ込められていた。
時計もなければ、外の様子も分からない。
食事は必要最低限のみ、上から吊るされて降りてくる。
入ってからおそらくまだ数時間しか経っていないにも関わらず、どんどんと自分の精神がすり減っていっているのを感じていた。
「まぁ、精霊使いを騙ったのだもの。このくらい当然よね」
衣服はそのままでこの部屋に放り込まれたので、胸元にはまだ例のネックレスもついている。
しかし、このネックレス自体、どうやら偽物だったようだ。
これをうっかりつけてしまったことから、人生をかけた嘘が始まったのに、そもそものネックレスが偽物だなんて……
私の口から乾いた笑いが漏れた。
ネックレスだけではない。
偽物だと知っていたのに、逃げる直前まで手放せずにいた、オリヴァンからの愛も……もう完全になくなってしまった。
暇だし、彼の幻影でも作って、現実逃避の妄想に浸ろうか。
妄想の彼は、私が本命で……ずっと隣にいてほしいと、本気で私にすがってくるような……
頭の中で鮮明にイメージしながら、魔法で光を集め、幻影を作り出そうとするも、この地下では魔法など使えないことを思い出した。
「はぁ……」
その事実に気が付き、またため息をつく。
そもそも、幻影を作るような高度な魔法は、黒魔術を使うのでなければ、魔力を多く消費する。
だから魔力量の多い私だけれど、偽物の精霊を幻影で作り出し、精霊使いであることの信憑性を増すようにする、という方法は取れなかった。
そんなことをしてしまったら、過度な魔力使用で一生魔法が使えなくなってしまう。
それでも、魔法が使えなくなってもいいから……今の私は、私を愛してくれるオリヴァンの幻影が欲しい……そんな気分だったのだ。
することもないので、真っ暗な天井を見上げながら、今後のことを考える。
精霊使いを騙るなんて重罪、おそらく死刑だろう。
お父様とお母様には、結局とても迷惑をかけることになってしまったな。
私のせいできっと、侯爵家は取り潰しだ。
でも家の取り潰しより、あの二人は私のことで悲しみそうかもな……
あと、悲しんでくれる人と言えば……ミリエット。
彼女はあの後どうなっただろうか?
私をかばってくれようとしたせいで、良くない立場になっていないといいのだけれど。
まぁ彼女にベタ惚れなエドガーがどうにかしてくれるか。
そんなことを考えていた時、どこかで私が施した加護が破壊される感覚に陥った。
ここでは魔法を使えないけれど、過去にかけた魔法は反応するのだろう。
この加護の感覚は……
神経を集中させ、いつどこで誰のためにかけた魔法なのかを、感じ取る。
「これは……マントにかけた加護だわ」
図書室で遅くまで勉強をしようとして、寝てしまっていた時、誰か優しい人がかけてくれたマント。
返す先が分からなかったから、お礼に加護をかけて、落とし物ボックスに入れておいたのだ。
その人は相当強い攻撃を受けているようで、今にも加護が破られそうな気配を感じる。
「さようなら、オリヴァン様」
頭のなかに流れ込んできたのは、酷く底冷えしたコレットの声。
彼女の言葉が意味するのは……オリヴァンが彼女から攻撃を受けているということだ。
そうだとしたら、あの時私に優しくマントをかけてくれたのは、彼ということになって……?
もう何もわからない。
もしかすると、これもまた彼の策略なのかもしれない。
でも、私が気づかれないように、私に優しくする理由なんて、オリヴァンにはない。
だからきっとあの時の優しさは、他意はない本物で……
そんな風に優しくしてくれた彼を助けたい。
たとえ私のことなんて好きじゃなくても、彼の力になりたい。
なのに……魔法の使えない私は無力だ。
「……この部屋を打ち破れるくらい、魔法が使えたら! あぁ、私が本当に精霊使いだったら!!!」
その瞬間、私はあまりの眩しさに驚いて目を閉じる。
瞼すら貫通してくるその光は、どうやら私のネックレスから出ているようだ。
「やーーーっと、私たちの力を使いたいって思ってくれたわね!」
「そうですよご主人、なんでも1人で解決しようとしすぎです!」
「僕たちの方は、何年も前からずっと君に力を貸す準備ができていたのに、遅すぎるよ!」
子供とも、大人ともとれないような、そんな不思議な声。
彼らの声が聞こえた次の瞬間、私は奇妙な浮遊感を感じた。
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