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どのくらいの時間がたったのだろうか?

長いように思えるけれど、案外短い時間だったのかもしれない。


何はともあれ、周りには意識を失った黒服の人たちが倒れており、それは私たちがこの戦いに勝利したことを示していた。


私と共闘してくれた、この顔の見えない人は、大きく深呼吸して剣を腰に戻す。


「あ、あの! ありがとうございました!!」


私は頭を下げてお礼を言ったものの、返事は返ってこない。

それどころか、いきなり私の手を掴むと、そのまま路地裏の奥へとズンズン歩いていく。


……え、助けてくれたし、悪い人では無いよね?


不安の気持ちは広がるものの、恐らく話しかけても何も答えてくれないだろうから、私も無言で後に続く。


そのまま10分ほど歩いたところには馬車が止めてあり、前を歩くその人はそこで立ち止まると、これまた無言で馬車のドアを開けた。


「……」


「……」


こんな不気味な人についていくなんて、リスクが大きすぎるけれど、乗らなければ一生このままな気がした。


うん、無理矢理乗せようとしてくるわけじゃないし……なんて考えて、心を落ち着かせる。

そして私は意を決して、馬車に乗ることにした。


私が乗ると、続いてその人も乗り込み、御者はすぐに馬車を出発させる。


私、どうなっちゃうんだろう……


そんな不安を覚えていると、目の前の人は馬車のカーテンを閉めた後、不意に被っていたフードを脱いだ。


その人物の姿に、私は唖然とする。

そしてその数秒後には、背中に冷や汗が伝うのが分かった。


「2日ぶりだね、クラリーズ」


目の前の人はそう、私が1番逃げたい相手……オリヴァンだった。


「お、お久しぶり……です」


逃げるように視線を横へ逸らすと、彼は私の視線に映りこむように覗き込んできた。


「で、どうしてこんなところにいるの?」


怒っている。

明らかに、その笑顔は怒っているときの表情だ。


「あー、たまには1人で留学に行きたいなって思って……」


「それは知っているよ。たまには1人を楽しみたいときもあるよね。僕が聞いているのは、どうして到着した日の夜に、あんな危険な路地裏にいたのかってこと」


「そ、それはあなたにも同じことが言えるのでは?」


「僕は、怪しげな動きをする人たちを追いかけてきたら、ここにたどり着いたんだ。君は?」


怪しげな動きをする人たちって、私が雇った人たちのことだろうか?

それとも、先ほど私を襲ってきた人たちのことだろうか?

前者と後者が同一人物の可能性さえある。


「……」


無言の私に対して、オリヴァンは更に笑みを深めた。


ひぇぇ……

私が偽物の精霊使いだから、わざと行方不明になって逃げようとしたことなんて、全てバレているのではないか、という錯覚に襲われる。

いや、錯覚では無いかもしれない。


きっと、私をこうして助けてくれたのも、コレットの精霊使いとしての覚醒に必要な、ネックレスを取り戻すためだろう。


こんなことになるなら、オリヴァンが見つけられるところに、このネックレスを置いてくればよかった……!


でもそれはそれで、今みたいな状況になった時のことを考えたら取り返しがつかないし……


えぇい!

こうなったら、オリヴァンがどこまで知っているか知らないけれど、黙秘権を行使しよう。


「……」


「……」


「はぁ、言うつもりは無いんだね、わかったよ。ただ、これには答えて欲しいんだけど……」


ゴクリ、と私は息を呑む。


「今日襲ってきた人たちとクラリーズには、何も関係は無いね?」


痛いところを突いてくる。

正直に言えば、「よく分からない」が正解だ。

でもここで頷いたら……間違いなく、今後の人生が終わってしまう。


私がブンブンと首を横に振ると、彼は、


「やっぱりそうか」


と難しげな顔をして考え始めた。


もしかして、私が偽物ってことには気がついているけれど、私の計画には気がついてない!?


それなら、私の作戦は続行可能。

今回は失敗してしまったけれど、次はもっと綿密に計画を立てて……証拠を取られないうちに、彼の元から、そしてこの身分から逃げ出すのだ!


そう思って、私が今後の計画や、立ち回りについて思案している間、オリヴァンもまた何やら考え込んでいるようだった。

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