表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
怪奇討伐部Ⅵ-Star Handolle-  作者: グラニュー糖*
24/47

お風呂回

第二十四話 面狐の依頼




 手洗いうがいを済ませ、廊下の一番奥に位置する和室で四人、四角く茶色い机を正座で囲んだ。

 剣一さんはいつものグレーの着物とは違ううぐいす色の着物を着ており、いつもよりピシッと着こなしている。きっと面狐さんが着付けているのだろう。僕も学ばなければ。


「……で。お話とは何でしょうか」

「キミたちの力を認めての依頼だ。報酬は用意する」

「人助け……でしょうか。なら報酬なんかいりません!僕は警察なのですから、それがお仕事なのです」

「警察……町奉行みたいなものか」


『町奉行』の名前を聞いたとき、剣一さんの体はギクッ!と跳ねた。この人、お尋ね者だから……。いやいや、気にしちゃダメだ。職業病が出てしまっている。

 頭の中がフル回転していながらも、僕は一生懸命に落ち着きを取り戻しながら答えた。


「はい。それに、もう報酬はいただいております」

「……剣一のことかい?」

「そうです」


 僕と面狐さんで剣一さんの方を見る。彼は「なんだよ……」と悪ぶりながらも立ち去ろうとはしなかった。


「わかった。それで仕事なのだが……」


 ……町に現れた妖怪、鬼たちを祓ってほしい。だそうだ。手段は何でもいい。物理でもいいらしい。



 話を聞き、さっきとは別の町に向かう。どうやら依頼は面狐さんの患者さんの家族に聞いた話のようだ。


「……着きましたね」


 少し寂れた町だ。家の数は半分くらいだろう。もちろん人通りも少ない。


「今日は遅いから明日にしよっか」


 桜花さんが腕を絡め、頭を僕の方へと倒す。僕は微笑み、首を縦に振った。


「えぇ。では、どこか泊まれる場所を見つけないといけませんね」

「ならあそこがいいんじゃない?お風呂もあるみたいだし。お兄さん、お風呂入りたいでしょ?私だって薬のにおい嫌いだし」

「あ、あはは……そうですね」


 面狐さんは医師さんだ。なので屋敷が薬のにおいで充満していた。現代のコーティングされていたり、液体だったりしている薬ではなく、『ザ・薬の中身』が置かれていたので、苦いにおいで僕でも顔をしかめていたのだった。あれはどう見ても漢方だ。


「受付してくるから、お兄さんは後ろで座ってゆっくりしてて!」

「で、ですが桜花さんを頼るわけには……っ!あぁ、行ってしまわれました……」


 ぽつんと残された僕は、のんびりかつ気を付けながら宿屋を目指した。


 ____ この町には鬼や妖怪がいる。


 それが本当なのだから、面狐さんは僕と桜花さんを寄越したのだろう。

 確かにここには人間が少ない。だが、それでもどうにかと頑張っている。だから……僕はやらないといけない。


「……あれですか」


 古めかしいが、明かりが灯っているのを見る限り、営業はしているようだ。中に入ってみると、桜花さんが受付をしていた。


「あっ!来た来た!」

「桜花さん!」

「お兄さんはどうなさいますか?」

「どうって?」

「そりゃあ……」


 受付のお姉さんが急に耳打ちで話しかけてきた。その言葉に、僕の顔はどんどん赤らめていった。


「どっ、どどど、同室ぅっ!?ダメ、ダメですっ!!」

「どうして?ここはあの噂のせいであまり客が来ないので、……遠慮する必要はありませんよ?ふふふ……」

「そういう問題ではありません!!」


 意味ありげにニヤニヤとするお姉さんを優しく突っぱね、僕は頬を膨らませた。


「お兄さん……そんなに私のこと嫌いなんだ……」

「え゛っ?!」

「お兄さんは気を詰めすぎてるから……だから落ち着かせてあげようと思って、ここの人と結託したの」

「桜花さん……」


 桜花さんと受付のお姉さんがニコニコしている。そして僕は小さく息を吸い、口を開けた。


「ダメです」


 __________


「もー!もうちょっと気を緩めてもいいのに!」


 座布団の上で正座して色々考えていたが、ダメだ~っと大の字になって床に転がる。


 頭にチクチクとした畳の感触がある。

 座布団だって少しだけだが、ザラザラしている。


 備品はまぁ……こんなでも、この宿屋はそこそこだし、珍しく温泉まであるようだ。もうちょっとくらい人がいてもおかしくないのに……。


「お風呂行って、頭サッパリしてこようかな……」


 ノソノソと動き始める。

 ここの温泉は人員不足なので露天風呂の方がマシだろう。大浴場なんてものはあったとしても、管理する人がいないかもしれない。


「♪」

「あら、お客さん、今から浴場ですかい?」

「あっ、受付の……。そうなの」


 受付のお姉さんと廊下で出会った。


「ふふ、ここの温泉は源泉掛け流しです。どうぞ、楽しんできてくださいね」

「ねぇ、どうして温泉があるの?結構珍しいと思うけど……」

「近くに温泉が湧くところがあるんですよ。川から温泉が湧くこともありますしね」

「へー」

「昔はお客さんもたくさんいたんですけど……やっぱり妖怪が出てきてから来なくなったんです」

「……」


 ここのためにも一刻も早く倒さないと。

 私は別れを告げ、早足で温泉に向かう。


「ここね」


 誰もいない脱衣場で服を脱ぎ、布を巻いて扉に手を掛ける。

 すると……。


「……っく……ひっく……」


 ……泣き声が聞こえてきた。

 いやいやいや、冗談よね?妖怪が出たってわけじゃないわよね?


 ……ここって、幽霊、出ないわよね?


「……」


 考え直してしまう。足がすくんでしまう。

 もし幽霊と鉢合わせしてしまったらどうしよう……!


 ぶっ倒れる予感しかしない!!


「ええいっ!その時はその時だー!!」


 バァン!!と勢いよく開く。

 そこには……。


「ひ、ひええっ?!お、おおお、桜花さんっ!?」


 女の人のように髪の毛を後ろでお団子にまとめ、涙目のお兄さんが……。


「お兄さん……泣いて……?」

「えっ……あ……なんでも、ないです」


 バシャバシャと顔を洗うお兄さん。

 でも見てしまったものはしょうがない。


「……」


 お兄さん、ものすごく悲しそうな顔をしている。私、お兄さんのこと何も考えずに行動してた……!

 こうなったらトキメキも何もあったもんじゃない。私が、私がお兄さんを元気付けなきゃ。


「お兄さん……入るね」


 受付の人、混浴だとか言ってなかった。もしかすると驚かせるためだったのかもしれない。でも、こんなことになるなんて……。


 私は軽く体を流し、お兄さんの隣に入る。

 お兄さんはポタポタとお湯を滴らせながら水面を見ていた。


「………………僕は」


 ポツリと呟く。

 本来はとても優しくてキリシタンの人たちが言ってる『聖母』のような人間なのだろう。しかし今は人殺しと同じような依頼を半強制的に受けてしまっている。

 こんなこと、許してはいけない。


「本当はこの時代の人間ではありません」

「知ってた」

「!!」


 びっくりしてこっちを見る。

 薄々は気づいてた。元の時代に帰さないといけないことも。

 だから……離したくない。


「だからお兄さん、変な気は使わないで。お願い」

「……わかりました」

どうも、グラニュー糖*です!

現在、「怪奇討伐部完結直前・pixivと同じところまで進める祭り」を開催しております!

こっちでは表紙を載せられないことが本当に残念ですが、楽しんでいただけると幸いです。

本当はイラストを見て読むほうが良いんですけどね!


なお、pixivからそのままドンしてるのでルビやら何やかんやがpixivのコマンドのままになっている場合があります。それを見つけた際はお手数ですがお知らせしていただくととても嬉しいです。もちろんコメントなどもお待ちしております!


ではでは〜

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ