武器は持っておけとあれほど
第十三話 スカウト。それは悪く言えば引き抜き
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ムジナたちが地下に向かって半日が経った。
子供たちだけで大丈夫なのかと心配でのんびり泳いでもいられない。
だが、あの宇宙での活躍を考えると俺より上手くいっているのではないかと少し凹む。
「あーあ……暇だ」
せっかく『檻の外』という自由を得られたのに、なんなんだ、この気持ちは。
「ムジナたち……大丈夫かな?あのレインってのも、あまりしっかりしてなさそうだったし……」
ナチュラルにディスりつつも、ブクブクと泉の水に沈む。
「……!」
ガサガサという音が聞こえた。誰かがここに来たのだろう。ムジナ、ヘラ、レインは地下にいるし、メリアは反対の方向だ。
……じゃあ、一体誰が?
「ここか」
「!」
バシャッ!と足で音を立てて威嚇する。
草むらから出てきたのは、ヘラヘラした緑髪だった。
「……」
「見知らぬ魔力を感じたと思えば……宇宙人が入り込んでいたとはねぇ……」
俺のほうをじっと見て、手のひらサイズのマジックアイテムとかいう丸い水晶をポケットに仕舞い込んだ。
「イリスが辺境と呼ばれるのは、そういうのが住み着きやすいからだ」
「……お前、誰だ?何しに来たんだよ?」
「話せるのか。ふぅん……これは楽そうだ」
何が楽かわからないが、帰っていただきたい。ここはヘラの家がある。家にいるメリアにも迷惑はかけられない。
「質問に答えろ!」
叫ぶと共に、泉から出て『奴』に殴りかかる。
だが……。
「まだまだだね」
「____ぐあっ!?」
勢いのついた腕を掴まれ、そのまま前に引かれる。水揚げされた魚のように地面に体を打ち付け、痛みで声が出た。
トドメとばかりに腕を後ろで組まされ、背中に座られた。
……俺はマグロじゃなくてジンベエザメなのに……。
え、違う?そこじゃない?そっか……。
「攻撃が真っ直ぐすぎる。そんなんじゃいつまで経ってもお兄さんにダメージは与えられないぞ」
「くそ……何が目的なんだよ!」
「そりゃ……お前をスカウトしに来たんだよ。イレギュラー」
「おま……!」
俺をイレギュラーと呼ぶのは少ない。
まず俺が『イレギュラー』だということを知らないからだ。
こいつは一体何者だ……?
「お兄さんのこと、誰だと思ってるでしょ?当たり前だよな、宇宙人だもんな」
「……その通りだよ。さっさと教えな」
「キミ……立場わかってる?まぁいいや。俺はヌタス・メラク。今の魔王の兄だ」
「……。魔王……そうか、魔王か……そうだもんな、魔界だもんな。魔王とかいるよな、そりゃ……」
俺は遠い目をして『魔王』の言葉を繰り返す。
「わかってもらえたかな?……わかってもらえたみたいだな」
「……それで?何のためにスカウトしに来たんだよ?内容によっては____」
「キミは俺より弱い。なら何をするかわかってるだろう」
腕の締め付けを強くされる。
……今、肩から変な音がしなかったか……?
「ぅ、ぐ……無条件降伏ってやつかよ……!」
「わかってるじゃないか。それで、内容なんだが……こちら側に来てもらおう。武装はこちらで用意する」
こちらのことはムジナとヘラに聞いた。……ということは、そういうことなのだろう。
てか武装て。今商人ちゃんが貸してくれたジャージじゃないんだけど。
「……そういうことかよ……。……なら一つ言っておこう」
「何かな?」
「……俺さ……このアイテムがないと、水の外に出られないわけよ」
「それくらい持っとけぇい!」
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「うぅ……」
「どうした?」
寒気を覚え、身震いする。
隣にいたヘラが心配そうに声をかけてくれた。
「なんか嫌な感じがして……」
「あの天狗でも出たか?!」
「違うんだけど……嫌な予感がするんだ……」
「……進まないとそれが何か確認できない。行こう、ムジナ」
「うん……」
ヘラが差し伸べてくれた手を握り、並んで歩く。
それをレインは頭の後ろで手を組みながら、細目で見ていた。
「……何か思うことでもあるのかい?」
「いや……」
「言いたくないなら言わなくてもいい。でも抱え込みすぎるのは良くないよ」
「わかってるよ……」
(確か全部で関門は七つだったはずだ……だが、おかしい。こんな簡単なものなのか……?)
次のところが見えてきた。
部屋と部屋の間はそのまま繋がっていたり、松明が等間隔に壁に設置されている廊下が挟まっていたりしている。今回は廊下があったのだ。
「どんどん狭くなってきてるね」
「並んで歩くのも少しキツいか……?次は手を放すかもしれないな」
「えー?……じゃあ、その時はヘラが先頭ね」
「……考えておく」
「いやいや、先陣を切るのは保護者の仕事でしょ」と月光さんがぼやく。
そうこうしているうちに、開けた場所に来た。
どこかのホールなのだろうか。洞窟の中という息苦しさは残るが、綺麗に整えられた場所だった。魔界にはない……まるで人間界のようだ。
「わー……!」
左右に並んでいる、いくつもの大きな白い石柱を見て声を上げた。
席は無いが、扉の前にポツンと大きな何かが置いている。
そしてピアノの奥……真ん中にはいつもの扉だ。
「グランドピアノ……!」
「知ってるの?ヘラ」
「当たり前だろ。あれは人間界のものだ」
「どうしてそんなものが置いてあるんだよ?」
「俺に聞くなよ」
とりあえず一人で紺のグランドピアノに近づいてみる。
フタを上げてみると、白と黒のボタンがいっぱい付いていた。
「ぽち」
押してみると、ボーンと音がした。
「おおっ!」
「一個飛ばしで三つ押してみな」
「こう?」
月光さんに言われた通りに三つ押してみる。すると……。
「綺麗な音!」
「和音っていうんだ。ムジナ、楽器は触ったことないのか?」
「んー……お兄ちゃんのカスタネット!」
「音を狙って出せるものじゃないな……貸してみろ」
月光さんにピアノの椅子を譲る。
ピアノの椅子に座った月光さんを見てヘラが驚いた。
「弾けるの?」
「オジサンをナメんな」
音が広がりやすいように上の大きなフタを開け、着物の袖を肘まで捲り、深呼吸し、両手を鍵盤に乗せる。
すると楽譜が手の上に落ちてきた。
「これを弾くのか」
「……プレートがあったぞ」
「何て書いてあった?」
「『魂を奏で続けろ。さすれば道は開かれん』だって。奏でろってことはピアノだろうな」
ヘラが石柱の一つを指差す。
どうやらプレートはくっついていたようだ。
「ねぇ、さっきの紙は?」
「楽譜だ。……モーツァルトの『レクイエム』の一部だな。破れている」
「これを弾くとクリアだね!」
「よし、一肌脱いでやろう。若者にオジサンの力を見せつけてやる」
「一言余計だぞー」
ケラケラ笑うレインをよそに、静かにかつ力強く弾き始めた。
曲を知っているからこその弾き方になるのだろうが、それはあまりにも怒りに満ちていた。
「ヘラ、この曲なぁに?」
「モーツァルトの『レクイエム』の中の『怒りの日』だそうだ」
「……?モーツァルトさん、怒りながら作ったの?」
「いや知らないが……。だが、なんでこんなところにあるんだろうな」
「……もしかすると関門に関係するのかもな。ヘラ、ここまで何か感じられたか?」
「だから俺に聞くなっての」
レインの問いに、顔をしかめるヘラ。
曲はどんどん激しさを増す。
「大丈夫かなぁ……」
「力を見せてやるって豪語したんだから、弾き切ってもらわないとな」
「あっ!扉が!見て!!」
ゴリゴリゴリゴリッ!と重い音が聞こえたのでその方向を見てみると、扉がジワジワ開いていっていたところだった。
どうも、グラニュー糖*です!
現在、「怪奇討伐部完結直前・pixivと同じところまで進める祭り」を開催しております!
こっちでは表紙を載せられないことが本当に残念ですが、楽しんでいただけると幸いです。
本当はイラストを見て読むほうが良いんですけどね!
なお、pixivからそのままドンしてるのでルビやら何やかんやがpixivのコマンドのままになっている場合があります。それを見つけた際はお手数ですがお知らせしていただくととても嬉しいです。もちろんコメントなどもお待ちしております!
ではでは〜




