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婚活魔術師と不思議なダンジョン  作者: 冬空さんぽ
9/11

第九話 死闘の火曜日②

シュバ剣を集めてて・・・・・・

いえ、仕事が忙しくて更新が遅れてしまいました!本当に申し訳ない。

 ゴブリン兵セドリックは激昂していた。


 コボルト王曰く本日行われた七魔王会議で我らがゴブリン王が緑龍の王に殺害されたという。

 セドリック達はその一報を聞くやいなや装備を整え不本意ながらもコボルト王に率いられる形で巣から出兵する、子供も女も関係ない決死の戦である。


 今回の事件の発端はゴブリン王が骸の王と緑龍の王、二人の王が主戦力を戦争に投入していなかった事を指摘した事がきっかけであった。彼らニ種族の王は「貴様ら劣等種族と共に本気で戦うはずが無いだろう、身の程知らずが」とゴブリン王を罵倒した後ゴブリン王を殺害した。

 その際残りのコボルト王・石種王・巨人王・蜥蜴の王は護衛を盾に命からがら逃げ延び、兵を集め「巨龍の間」を決戦の地として号令を出す。


 当初は5対2という倍の数の種族が束になっての戦。いくら主戦力を放出しなかったとはいえ勝てるはずだという見込みだったが・・・・・・やはりスケルトンとドラゴンという魔物の中でも最強の一角を成す強豪相手に戦況は芳しくなかった。

 

 リッチの集団が繰り出す炎の魔法で第一盾兵部隊が甚大な被害を受けた、ゴブリンにも魔法使いはいるが数と質が彼等には及ばない。

 リッチのスケルトンライダー部隊がいつの間にか背後から奇襲していてコボルトヒーラー部隊に被害を受ける、その圧倒的な機動力を潰す為の策を我等は持ち合わせていなかった。


 次々と立ち上がった勇士達が肉塊と化した、数の上ではむしろ優勢であったが質があまりにも違い過ぎた・・・・・・勇気や怒りで種族の差は越えられないのだ。


 遠目に微かに見えるのは緑龍の王と巨人・石種・リザードマン達の戦い。

 彼方の戦いは均衡を保っているように見える、見えるだけで実際は酷い戦なのかもしれないが。

 セドリックは神に祈った、彼らの信仰する日の王に対してだ、そして決意した、どうかこの命尽き果てようとも必ずや仇敵の首を我らが王の墓前に据えて見せると。

 


◇◇◇◇◇



 「・・・・・・それでどうします?」


 リリィがそんな事を言い出すがそれを決めなきゃいけないのはリーダーであるキミなんだよなあ。

 どうにも未だにリーダーとしては頼りない子である。


 「任せろ、俺に考えがある」


 「・・・・・・正面から突っ込んで片っ端から倒していくとかいう作戦とも呼べない作戦はダメですよ?」


 「あー・・・・・・バルさんなら言いかねないですね」


 失礼ですねぇ!この子達は!確かに面倒になってきたからその方法も考えたけど!

 俺がただの剣士ならそのように提案したかもしれないが俺は「魔術師」だ・・・・・・。

 ちょっと顔と魔術の腕がいい魔術師なのだ、イケメンにはスマートな戦略が似合う。


 「ここは俺の魔術師としての本領を発揮して軍勢を作り上げ第三勢力としてこの戦場を蹂躙するのだ」


 「・・・・・・もしかしてこの地に溢れる死体を利用してアンデッドの集団を作り上げるとか?」


 「まあ似たようなものかな、リリィちゃん、この作戦でどう?」


 「うーん、正直あまり真正面からこの軍勢と戦いたくないですが他に妙案も浮かばないですし。最悪バルさんに暴れてもらって何とかしてもらいましょう」


 「・・・・・・自分はあまり戦う気無いのね」


 「回復術師ですからね、殲滅は私の仕事ではないのですよ」


 ジェシカとコレットが溜息を漏らすが実際問題リリィにこの軍勢を打ち倒す力はないのだから仕方がない。それはともかく俺は承認を得たのでさっそく魔術を開始する。

 魔力を操り魔法を行使する、「天の川」の魔法だ・・・・・・薄暗かった部屋の天井から星々の輝きが生まれる・・・・・・ここまでが準備段階だ。次にその星を模した魔法の光を編み、魔法陣を組む。

 乱雑に配置されていた魔力の光は、やがて一つの巨大な模様となり意味を持ちはじめる。

 すると星々の輝きが白から銀へ、そして銀から黄色へ変化した後この地で失われた血肉・魂・霧散した魔力を贄に我が軍勢が召喚される。


 それは一見邪悪に見える集団だった、漆黒の全身鎧を身に纏い巨大な槌と大盾を手に持った巨人。

 しかしその巨人はただの巨人とは少し違うように見える、背から神々しくも恐ろしい羽が生えている。そう、彼らこそ「天使」と呼ばれる存在だ、神の命を受け時に人を時に魔物に罰を与える一般人からは空想の生き物のひとつであると思われている者達だ。そんな天使が四体バルの背後に横並びとなって現れる。


 「雑兵は殺せ、周りと違い身分の高そうな者は引き摺って来い」


 バルが命令すると同時に天使達が戦線の真上に突然姿を現す、「空間転移」と呼ばれる魔法だ。

 唐突に現れた来訪者に相対する魔物の軍勢はまぬけな顔で上を眺めていたが天使達が槌を振るうと同時に悲鳴を上げて撤退し始める、ここが死地だと覚悟していたにも拘らず本能で逃げてしまった。

 しかし天使達も「天の使い」の名に恥じぬ優秀さでぶちぶちぶちぶちと魔物を潰していく、そこに慈悲は無い・・・・・・あるのはただ獲物を殺害せよという命令だけだ。


 しばらくすると天使が三体の魔物を引き摺ってくる、その足取りはどこか誇らしげで歩調も軽快だ。まるでねずみを捕らえた家猫の様だ・・・・・・全然可愛くは無いが。

 一体はコボルトだ、毛むくじゃらで顔だけ犬になってしまった人間のような格好をした魔物だ・・・・・・この個体はやや大きく腕に金ぴかな腕輪をつけている、コボルトの王だろうか?


 二体目は紫檀色の外套を身につけたスケルトンだ、その全身から放つ殺気だけで只者ではないという雰囲気を振り撒いている。大分抵抗したのか両腕と左足が欠けていた。


 三体目は鉄の鎧を身に纏ったゴブリンだ、毒々しい緑色の体色をした小人で残忍そうな目を見開いてこちらを見つめている。


 「ふむ・・・・・・ご苦労、後はこちらでやっておくから敵の殲滅へ戻れ」


 再び命令を下し天使を戦線へ向かわせつつ地に這っている三匹を見下ろす。

 こいつらの中に王がいると話が早いけどそう上手く話が運ぶかどうか・・・・・・。そもそも人と会話が出来るかどうかすら定かではないのでそこの確認からだ。


 「お前らの中に魔王はいるか?俺達は魔王を狩りに来たのだ」


 「そこの!そこの骸骨野郎が魔王です!私達は裏切られて怒り戦っていたのです!」


 「何だと貴様!お前も魔王の一人だろうが!」


 問うとコボルトはスケルトンが魔王だと主張しスケルトンはコボルトも魔王だと叫び始めた。

 とりあえずこのスケルトンは魔王と呼ばれているうちの一人らしい。


 「そこのゴブリンも魔王なのか?」


 「・・・・・・我らの王は殺された、私のような未熟者は王とは呼ばれない」


 「はあ」


 どうやらゴブリンは王ではないようだ、彼らの王は殺されたらしい。

 何だかややこしくなってきたな・・・・・・。とりあえず整理すると今回の戦争を起こした七人の魔王のうちゴブリンの王は死にコボルトの王とスケルトンの王は今床に転がってる奴ららしい。

 という事は・・・・・・あと四人の魔王はどうしたのだろうか?


 「お前達以外の四人の王はどうした?」


 「ひっ・・・・・・向こうで戦っています、あ、後私は王ではありません!ただの下っ端コボルト兵です・・・へへへ」


 「この卑怯者が!王としての意地や誇りは無いのか!」


 「・・・・・・そこのゴブリン、正直に答えてくれればお前をこれ以上害さないと誓おう。そこのコボルトはコボルト達の王か?」


 「・・・・・・いいえ、コボルトの王はこのような背格好をしておりません。そいつはただちょっと体格がいいだけの普通のコボルトです」


 「貴様!ふざけおって!!」


 またスケルトンが騒ぎ出したので今度こそその身を粉微塵に斬り裂く、コボルトとゴブリンは軽く治療をした後この戦いに今後一切関わるなと脅した後解放した。魔物と戦うより話す方が疲れるな・・・・・・。


 「それでは向こうで戦ってる魔物達の様子でも見に行きましょうか~」


 リリィが散歩デートでも提案するかのような雰囲気で提案する。もうこの戦いが終わったものと考えているんだろうなあ・・・・・・正直俺もほとんど戦いなんて終ったようなものだと考えてるけど一応命のやり取りをしている以上油断してはいけない、ダンジョン内での油断は死に直結するのだ。

 コレットとジェシカの二人はリリィと違って油断は無い、張り詰めた表情で隊列を組み始める。

 リリィが一番真剣にやらないといけなかった筈なんだけどね・・・・・・何故いつも慢心してしまうのか。もともとリリィが天啓受けたから魔王討伐に来たはずなんですけど?!


 「天の川」を発動した時から遠くに見えていた戦線へは大分距離があり、最初は歩いて向かおうとしていたが結局「飛行魔法」を発動して戦線へ向かう。

 そこには砕け散った石の塊やつぶれたとかげ、命尽きた巨人が横たわるカオスな空間が生まれていた。

 この戦場で命ある者はバル達と天使を除けば緑龍ぐらいのものだった、身の丈数メートルの龍種の中ではやや小柄な龍達が天使達と必死に戦っている、もう二十匹程度しか残っていないが。


 「天使達だけに任せておかないで俺達も加勢するか」


 バルはそう提案するが・・・・・・。


 「反対です」


 「・・・・・・キミにはついていけないわ」


 「いってらっしゃい!」


 猛反対である、そう、人とはサボれる仕事は全てサボる生き物だ。

 実際天使達の猛攻で見る間に数を減らす緑龍達をリスクを犯してまで屠る必要は無い様に思える。


 「何か格好がつかないよなあ」


 自分でやっておいてなんだが召喚した天使に戦いを全任するのもどうなの?っていう気持ちがあったりする。

 龍ぐらいの相手になるとまともに戦えば怪我や最悪死が待っている以上気軽に戦おうぜとも言えないんだけどね。リリィはともかくジェシカとコレットは半ば強引に連れて来てしまったしこれで良かったの・・・・・・か・・・・・・?


 しかしそんな都合のいい展開で終るはずも無かった、早苗色の巨龍が天使の包囲網を抜けバル達に突撃してきたのである。


 「貴様らか!我らの住処を荒らす不届き者共は!」


 巨龍の咆哮が響き火が周囲を包み込む、〝陽光〟によって分断された火の海がバル達の両脇を真っ赤に照らし出す。コレットがリリィとジェシカを後ろ手に庇い大盾を突き出す。バルは剣に手をかけ呪文を紡ぐ。


 「巨龍を打ち倒すは英雄の一撃」


 『百合姫』の鞘が燐光に包まれ神速の一閃が繰り出される。

 その一撃を巨体に似合わぬ身軽さで回避しようと巨龍が後ろへ飛び退いたが━━咄嗟に身体を庇った右翼と右腕が消し飛んでいく。


 「ぐあああああああああ、貴様……本当に人間か?」


 血の海と呼ぶにふさわしい量の血液で床を染め上げながら巨龍が唸る。

 しかしそれ以上の恨み言を紡ぐ猶予は与えられなかった。

 巨龍の身体に大きな穴が穿たれる、ジェシカの十八番の『ピアッシング』の魔法だ。

 ただ対象を〝貫く〟という効果に特化された単純ながら凶悪な魔法が巨龍に死を与えた。

 巨龍は口と穴から血を吹き糸が切れた操り人形の様に地に倒れこむ、十m越の巨体が倒れた衝撃も陽光が生み出した障壁に阻まれバル達には届かない。


 「終った・・・・・・のかな?」


 「みたいですね、思ったより呆気なかったですね」


 呟くバルに答えるリリィ。

 どうやらやっと魔王討伐の仕事が終ったようだ、これで安心して村に帰れる……。


 「そういえば、地神の加護を受けた女の子。きちんと紹介してくれよな?」


 そう、このままじゃ村に帰れないのだ。

 別に帰れなくてもいいのだが明日中に地神の加護を受けた女の子と結婚しなければ水神の呪いを受けてまともに動く事すらかなわないかもしれない!

 俺の今後の幸せな余生の為にもリリィに明日中に婚約者を見繕ってもらわないといけないのだ。


 「も、もちろんですよぉ・・・・・・?ばっちり活きのいいのを仕入れておくんで・・・・・・へへへ」


 リリィが視線を彷徨わせながら呟く。

 こいつもしかして特に当てがないのでは・・・・・・?と若干不安になるが彼女の手を借りる以外に今は妙案が無いのだ。

 少し彼女の挙動を不審に思いつつもバル達は帰路につくのであった。


 


 


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