談話室にて
「シ、シャル?随分お二人と仲がいいみたいだけど⁇」
サラに尋ねられ
「お兄様と一応幼馴染です」
「シャル、一応って酷くないか?」
「そうでしょうか?気にしたら負けですよ?」
「シャルが酷い…」
「じゃれ合うのはそれくらいにしてね、二人とも」
お兄様に注意されたし。じゃれてなんかいないよ?
「お、幼馴染とお兄様?じゃあ、シャルはあのアニス宰相の娘なの?」
「『あの』がなにか知りませんがお父様は宰相ですよ?」
「じゃあ、公爵令嬢ってこと?」
「はい。」
「申し訳ございません。いままでのご無礼お許しください」
3人が頭をさげる。
「なんでですか?私が公爵令嬢だからですか?もうさっきまでみたいにお友達として接してくれないの?」
せっかく出来た友達なのに。目をウルウルさせてからうなだれて顔を俯けた。
「シ、シャル⁈泣かないで?ちゃんと友達だから。さっきまでみたいにするから」
「本当?」
「本当だ。だから泣くな。」
ぱっと顔を上げ笑みを作る。
「よし。言質は取りましたからね。またあんな態度になったら怒りますわ。」
リュークはチョロイけどサラも引っかかるとは思わなかったよ。マルクルまでは引っかからなかったけど多分大丈夫かな。
「「なっ‼」」
「っぷ」
マルクルが吹き出すとその場にいたみんながつられて笑った。
「シャル泣いていたんじゃなかったの?」
「サラ、涙は女の子の武器なのです。ここぞと言うときでないと泣きませんわ」
私の言葉にサラとリュークは唖然。
「シャル、一体どこでそんなこと覚えたんだ?」
「勿論、お母様ですわ」
マルクルったら。ほかに誰が居るとでも?家での最強は天然なお母様だよ。
「女の子怖いんだけど…?女の子怖いと思ったのはじめてかも」
顔をひきつらせながらリュークが落ち込んでいた。
「シャルだけよこんなの。私は違〜う‼」
「え?みなさんこんな感じでしたよ?」
「っちょと待った。『みなさん』って誰だい?」
「お兄様、そこは聞かぬが花ですわ。」
「それ、使い方違うだろ‼」
珍しくツッコミはリュークだね。
「シャル、相変わらずだな」
私達をみていたフィルベルト殿下がニヤニヤしながら見てきた。
「そうでしょうか?誰でも演ってますわ」
「普通はそれを認めないさ」
「確かに王宮にくるような女性はそうでしょうね」
「はぁ〜」
ちょっとため息つかないでよ。
ちなみに私が王宮にいかないでもこのことを知ってるのはアンのお陰。この1ヶ月情報収集の練習と称して王宮で飛んでもらった。そしたらアンがフィルベルト殿下の前とその他で態度などが全く違う令嬢が多かったって聞いてたんだよね。アン、いい仕事してるね。
「そういえば3人はお兄様達に自己紹介しないでもよろしいのですか?」
3人は忘れてたようで顔色を変えるとすぐさま跪き自己紹介をした。
「カッター子爵家長男マルクルと申します」
「同じく長女サラと申します」
「カルーラ伯爵家次男リュークと申します」
「ランドル国第一王子フィルベルト・セレ・ルーナ・ランドルだ」
「シャルネーゼの兄ラルフェス・アニスです」
フィルベルト殿下そんな正式名称でしたね。国王になったらまた長くなるから覚えるか微妙だけど。というより正式名称で呼ぶこと無いから覚えなくていいよね?めんどくさいしさ。
「で、シャル。どうしてカルロとの2度目の勝負を受けることにした?」
自己紹介が終わったと思ったらフィルベルト殿下が突然聞いてきた。
「再戦のきっかけを作った人がなにを言うんですの?」
「言い方を変えよう。カルロとの勝負なぜ受けた?本だけが理由か?」
さすがフィルベルト殿下。核心を突いてくるね。
「まさか。本が1番の理由ですけどそれだけじゃあないですよ?」
「違うの?」
ほかのみんなはわからなかったみたい。
「ディア、おいで」
ディアが咥えて物を持ってきた。
「さっきこれが飛んできたのです。誰が誰を狙ったのでしょうか?」
それはナイフだった。
「これって…」
「触らないほうがいいです」
リュークがナイフに触れようとするのを止めた。
「刃の部分には毒が塗ってあります。ディアは精獣だからたいしたことはないですけど人間には猛毒ですわ。触るだけでも危険ですわね」
「ちなみになんの毒かわかるか?」
「死道」
みんなの顔つきが変わった。まぁ、少量で死に至る毒ならそうか。
「うわ、すごいのきたね」
「まだ分かりやすいからマシですわ。これがわかり難くされたらもっと厄介です。例えば、自害用の毒とか盛られたりしたら自己防衛があまり出来ませんし」
自害用の毒は複数あるがほとんどは無味無臭で死に方も苦しまない。だから盛られたあとに自覚症状までいくとまず手遅れになる。
だから自己防衛がしにくい。
「投げられたのは水蒸気で視界が悪くなったあと。そこを考えると1番可能があるのは私ですわ。なら派手に動けばなにかしら反応はありますわ」
「なるほど。だがそれだとお前が危なくないか?」
「そんなこと今更ですわ」
フィルベルト殿下は私の返事を聞くと苦笑しながら私の頭を撫でた。
「お前はそういうヤツだったな」
それってどういうことさ。お兄様も頷かないで。