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魔人教授の怪奇譚【連載停止中】  作者: 泥陀羅没地
第九章:かつて神で在った者達
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天上は灰に消える

――ズドォォォンッ――


空を爆ぜさせて、魔と神の〝一矢〟は四散する…空は四方に焼け焦げる様な熱風を散らし、その熱風は周囲に芽吹く僅かな命の足掻きさえ灰に帰した。


「――チッ、流石に一筋縄とは行かんか」


そんな結果を見て尚、魔人クレイヴは余裕綽々に彼方空の神を見つめ呟き…口端を笑みに歪める…一見して、その戦局は〝互角〟の様相に見えただろう…しかし。


「…と、威勢を張ったは良い物の――」


うぞうぞと〝鋼の波〟が揺れ動くその最中…その姿を晒し出すかの様に、陽光は強く〝輝く〟…。


――〝キュィィィンッ〟――


「流石に神だね…的確に嫌な所を突いてくる」


――ドボォッ!――


鋼の波が幾重にも重なり、層を形成しながらクレイヴを護る…そして、そよ防壁が完全に天上を閉ざした瞬間。


――ズドォォッ――


凄まじい衝撃と、熱が鋼を赤熱させ…燃え上がらせる。


――ジュウゥゥゥッ――


「チッ――此方の兵装では、奇襲だけで精一杯か…威力は申し分無いがコレじゃ駄目だな」


自身の腕にまで伝播した熱に、皮膚を焼かれながらクレイヴはそう舌を鳴らし、溶けて消えてゆく鋼の繭を操りながら、微かに覗く空を睨む。


「――〝決定打〟には成り得ない…ならばせめて、後一発…無理をしても放っておきたい…!」


その視線の先には、既に弾倉を取り替えたヘファイストスの銃器が、赤熱の唸りを上げて…今にも駆け出さんとしていた。



○●○●○●


「――凄えな、彼奴…!」


収縮し、変化を繰り返す〝鋼の波〟を見て、自らの得物に指を掛けながらヘファイストスは感嘆を漏らす。


「魔力を食って増える金属、液体の性質を持ち、そんじょそこらの鉱物とは比較にならない〝硬度〟を誇る…指先一つで操作でき、精密な設計も可能とは…とんでもねぇ、世紀の大発見じゃねぇか!」


そんな彼の目は興奮にギラつき、ただでさえ人相の悪い顔が更に凶悪に歪み…彼の口からは、その〝偉大なる発明品〟への欲求が綴られる。


「是が非でも〝欲しい〟…!――アレで〝武器〟を作ってみてぇ!」


その欲求は、強く…ヘファイストスの目は獲物を定める様に男を捉え…引き金に掛けた指に自然と力が籠もってゆく。


そして…その引き金が引き切られんとした…まさにその時。


「グルァッ!!!」


不意に、神を運ぶ竜の1羽が…警鐘を奏でるが如く叫ぶ…その叫びにヘファイストスの身体が止まり、一度熱の籠もった脳髄がピシャリと冷水を掛けられたかのように冷めてゆく…その冷静がヘファイストスに警句を告げ、異常にヘファイストスが気がついた時――。


――ゴウッ!――


遥か下…神と竜の真下には…延々と広がり燃え盛る〝焔の華〟が拡がっていた…。


「ッ――次から次に…!」


その焦げ付く様な魔力が発する〝殺意〟に、ヘファイストスがそう言葉を口にし、標的を直下に移す…その華の中心には――。


「気付かれたわ、九音!」


二人の巫女と、一人の少女…そして、其れを守る様に囲う人々の姿が有った。



●○●○●○


「クレイヴのお陰で充分〝魔力〟を溜められた…!」

「フレア、何時でも〝行って良い〟わよ!」


焔の中心で少女達は魔力を束ねる…その魔力は緋色の髪を靡かせた少女に注がれ…その焔を纏いながら…少女は自らの手に〝魔力〟を集める。


「〝傲れの硫黄〟、〝地の底より湧き出す憤怒〟、〝灰の上で踊る乙女よ〟――〝その一切を棄却する〟」


少女は粛々と、自らの口から手の内に秘めた焔へと祝詞を紡ぐ…その祝詞が紡がれる度、焔は揺らめき…その身を大きく拡げてゆく。


「――〝此処に成されるは滅却〟…〝天上の民よ〟…〝不変に病まれし燃え滓よ〟…〝我が焔はその全てを焼き払わん〟…!」


――キィィィィンッ!――


そんな魔力の昂りに、空の神は〝誅罰〟を与えんと空に〝焔〟を浮かべる…天と地に生まれた焔は、互いに互いを滅ぼさんと燻り…その抑圧を解き放つ時を待つ。


「〝喪却せし灰燼の業フレア・エンドフィールド〟」


そして、不死鳥の少女が自らを触媒に増強した〝焔〟を空に打ち上げた…その瞬間。


――カッ!――


空の焔は、不遜にも空を昇る焔を打ち砕かんと振り注ぐ。


既視感、極短い間に二度邂逅した似た戦局…ヘファイストスは一度目の経験から、その神器に余剰の焔を込めて対抗の焔を放つ…。


誰もがまた、〝拮抗〟を始めるかと考えた…だが。


――ガチャンッ――


現実はその想定とは異なり…数奇、否…それは〝必然〟の結果として、数多人の考える結果を裏切る事となった。



○●○●○●


――ズドンッ!――


「「ッ――!」」


二つの〝焔〟が衝突する直前…そんなくぐもった砲声を上げて、何かが焔の間に挟まり込む。


「〝ヘファイストス〟――君はつくづく〝鍛冶師〟だな…!」


その言葉には天上で驚く彼への〝呆れ〟が宿り…クレイヴは今まさに焔へと消えた〝ソレ〟を見て、薄らに笑う。


「…〝二兎追うものは一兎も得ず〟―半端に手負わせた獣の危うさを知らぬ男では無かろうに」


クレイヴがそう言うと同時に、その瞬間…焔の中に〝影〟が浮かぶ。


「〝神を喰らえ〟」


そして、その影は焔の中を好き勝手に駆け巡ると…遂にその姿を世界に晒す。


――ドバァッ!――


ソレは〝赤熱した鋼の群れ〟だった…半ば溶けて融合を始めた其れ等は、その性質が変化する僅か数秒の内に焔を喰らい、増殖するを高速で繰り返す。


その行為は神の焔を確かに陰らせ…その隙を突くように、衰えた焔に大地から放たれた炎熱が牙を剥く。


その攻防は一瞬の内に趨勢を決し…ヘファイストスの火柱を人の焔が烈火の如く食い潰す…その勢いは衰えを知らず…遂には神と竜をその範囲内に捉え…避ける防ぐの暇を与えること無く飛び掛かった…。



その光景は、確かに……〝人の勝利〟を予感させるに十分な代物だった…。

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