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「わたくしを殺したいのなら、世界を滅ぼすつもりでと、言ったはずですわ、お姉様」
彼女の右手の周りに溢れだし魔力が凝縮し、美鈴に向けて爆発的に膨張した。
「ぐっ!」
彼女の本能が強固な盾を、ひとつでは防ぎきれないと五つも顕現させて防いだ。その内の四つが砕け、余波だけで美鈴を鏡の間の奥へ叩きつけた。衝撃で鏡の間の鏡がすべて割れて散る。
「お祖父様も、手品ばかりですわね」
同じように急膨張した魔力が、宗孝に向けられ叩きつけられる。しかし、彼とてただの老魔術師ではない。原始的な分強固な魔装具が、自動的に強力な防御結界を展開、こと魔力や魔法を切断する事に特化した大太刀で魔力の固まりを切断した。
「俺を殺りたいなら、一回使った技なんか使うんじゃねぇや」
一方向に整流された爆発を飛び越え、打ち出す女王へ切りかかる。
「それは、大変失礼いたしましたわ」
婉然とした笑みを浮かべた女王は、同じ手を今度は全方向へ向け繰り出す。一瞬よけるにも値しないと見切りをつけようとした刹那、武人の勘が彼の体を突き動かした。
宗孝は自分の周囲の魔力を使い後方へ、体を無理やり吹き飛ばした。
轟音を上げて膨張する女王の魔力が、周囲の空気、こと空気中に含まれる極僅かな水素原子と共にその体積を数百万分の一まで超圧縮した。
そして引き起こされた核融合の閃光が一瞬にして鏡の間を飲み込む。
鏡の間の隅まで飛ばされ攻撃の機会を伺っていた美鈴は、すぐ目の前で圧倒的な魔法使いたちのもめ事におびえて動けずに居たシャルロットを抱き、無数の防壁を展開し、間一髪のところで美鈴たちを守った。
「さすがお祖父様ですわ」
そのすべてを砕く炎に包まれてなお、余裕の笑みを浮かべた女王は、さらに膨張しきった炎を同じ手段で再凝縮させ宗孝に向け発射した。
速度にして秒速二十万キロ。温度にして摂氏三万度を超える光線の直撃を受け、さすがの武人の結界も半分以上が吹き飛ばされた。即死しなかったというだけでも、彼の能力が度を超して高いと分かる。
なんとか自分の足で立つ宗孝は、火傷を追った皮膚を治しながら、女王を見据える。
一方聡明な笑みを浮かべた女王は、身につける豪奢なドレスに使われたレースに解れひとつ見あたらない。すこし暑いわと言わんばかりに優雅に扇を仰いでいた。
硬直。女王は扇を仰ぎながら、二人の動きを見る。
「それでは、お祖父様とお姉様。わたくしもそとそろ勘を取り戻してきたので、全力で行こうと思いますの。準備はよろしくて?」
にっこりと美鈴とよく似た顔で、微笑を浮かべた女王。
「へ、調子に乗るンじゃねぇや、小娘。辺境式の魔法を腹いっぱいまでくわせてやらぁな」
それを宗孝が笑いとばし、防御結界を再構成し生命の結界という自己を世界と隔絶し保存する、先ほど美鈴の攻撃を防いだ女王の技をさらに強化した魔法を展開させる。
美鈴は顔を引き締め、魔装具の形を変えず、神話上の不滅の鎧に変化させ、それをシャルロットにも装備させた。
もはや出し惜しみもせず最高の守りで、自身を保護する。それを見て、女王は笑う。
「その程度で、このわたくしの攻撃を防げるとお思いで?」
くすくすと上品な笑みを浮かべた女王の手元に、古びた本が顕現する。先ほどの『存在証明原本』によく似たその本は、しかし開きといわず、書かれたものすべてが左右反転していた。
「ふふ。それではご堪能くださいまし。『反存在証明原本より、原初の宇宙』」
本が開かれ、最初のページ。光玉が六つ飛び出し、遊覧するように部屋に散った。そして、光玉が割れた。
空白
何もない、ただの虚無。




