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押し問答を続けていると、次の授業の教師が来たので、しぶしぶと席に戻っていく。
「じゃ、また後でね……」
ゆかは体を引き裂かれているのではないかというほど悲痛な面持ちで二人を手放し、さりげなく頬に唇を当てて行った。教室中から怒号が聞こえたが、当人はそれどころではない。俯いて顔を隠していないと、恥ずかしくて死にそうだ。
「天沢と南田はどこだ?」
出席を取っていた教師が、普段なら必ず居る学級委員長と保険委員が居ないことに気づき、尋ねてきた。前回の授業ではちゃんと出席しているので、疑問に思ったのだろう。
さっき二人で連れ立って出て行ったことを誰かが言うと、教師が出席簿にしるしを書き込んだ。
それと殆ど同時にドアが開き、薫だけが入ってきた。
「すみません。遅くなりました」
小さく礼をして、手に持っていた在室届けを渡す。
「これ、三浦先生からです。南田さん、体調が悪くなったみたいなので、保健室に連れていきました」
「そうか。授業を続ける」
淡々とした授業が再開されて、教師が黒板に例文を書く音だけが響く。
「次の問題を」
生徒の方に向き直ると、美鈴が音を立てて立ち上がった。
「なんだ?」
教師が怪訝な顔で美鈴を見ると、なんと真面目な学級委員である薫や、私生活に問題はあるものの優秀なゆか、そして転校生のシャルロットまで立ち上がって、険しい表情を作っていた。
「伏せて!」
薫が叫び、直後に建物が激しく揺れた。美鈴は咄嗟に隣の席のクラスメイトを押し倒して、残りの三人も机の下にもぐり込む。
窓ガラスが飛び散り、全員が悲鳴を上げた。
「ゆか連絡! 美鈴城壁!」
悲鳴の中でも聞こえるように、普段の十倍以上の大声で薫が叫ぶ。
薫の隣の席であるゆかは、携帯電話の緊急ボタンを押す。美鈴は一瞬で魔装具を装備し、学校のグランドに面した壁すべてを覆う、世界を手に入れた王の都を守る大城壁を顕現させた。室内が一瞬で暗くなる。
「なにが、どうなってる!?」
衝撃で転んだらしい教師は、流血する頭を抑えながら立ち上がった。
「テロ、ですよ。先生、皆をC棟の家庭科室にでも非難させてください」
さっさと机の下から出てきた薫は、すでに黒衣に身を包んでいた。制帽をなおしながら、凛とした声で教師に命じた。
「わ、分かった。でも、天沢はどうするんだ」
頭を打って少し朦朧としているのだろうか、あっさりと命令を受け入れた教師は、さすがに教師らしく生徒の身を案じた。
「私たちは、やることがあるんです」
薫は微笑を浮かべて、屋上に高射砲を呼び出し、偵察機を出撃させた。
同じく魔装具を装備したシャルロットは、血の臭いからけが人を見つけ出して手当てを始める。
そして教師は戸惑いながらも、美鈴たちを除く生徒を全員避難させていく。隣のクラスにも同じように避難指示を出していった。




