表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR
50/82

47


「それでは、みなさん。わたくしを殺すつもりでかかってきてくださいね。少しでも手を抜くと、逆に危険ですよ」


 葉月はにこりと笑みを浮かべた。そしてその瞬間、跳ね上がるように突撃銃の銃口が美鈴を向いていた。そして何のためらいもなく、引き金は引かれ、強烈な発射炎と共に弾丸が吐き出されていた。


 本人が理解するよりも早く、盾が顕現化する。着弾の衝撃が盾に走り、火花が散る。同時に弾けた弾丸から、不自然なほど大量の煙が上がり、一瞬で視界すべてが覆われた。薫は舌打ちして偵察機を全機出撃させる。


『ゆか、ここから離れて、対象Aパッケージ・アルファを上空から観測して』


 念波で薫が指示を出す。薫の本当の趣味は、オンライン対戦の一人称視点シューティングゲームである。それも海外のプレイヤーとしかやらないというヘビーゲーマーである。薫の家に遊びに行き、勝手に部屋を探索する悪癖があるゆかだけがそのことを知っている。


『美鈴、とにかく情報が入るまでは守りに徹するわ。相手はM4だし、普通の盾でいいから沢山出して。ゆかの進路はふさがないようにね』


『分かった』


 煙幕の煙にむせながら、美鈴が正面に盾を顕現させ防壁を展開していく。その最中、どこからか先ほどのとは違う軽い銃声が鳴った。飛び立ったゆかが悲鳴を上げる。


『みーちゃん!?』


 見上げた美鈴と薫が見たのは、美鈴の出した盾にぶち当たるゆかの姿だった。


「なんで!?」


『ヴィエダー!?』


 薫が尋ねようとして煙幕が張られた直後まで居たはずの場所を見る。煙幕が濃くて見難いが、それでもそこに誰もいないのは分かった。


「どこ!?」


 思わず叫ぶと、背後から手が伸びてきた。その手には、ナイフが握られている。ぞくっと寒気を覚えたが遅い。


「はい、おしまいです」


 背後からの声。青ざめさせた薫が恐る恐る後ろを見ると、微笑みを浮かべたままの葉月に抱きしめられていた。


 徐々に晴れていく煙幕。それと同時に美鈴とシャルロットがしっかりと後ろ手足にタイラップで縛られ、寝転がされているのが見えてきた。何か小さなバトンが襟元に差し込まれている。そして完全に気を失っているらしく、ピクリとも動かない。


 ゆかはなんとか安全に着陸したが、頭の鶏冠が折れ曲がっていた。


「それでは復習しますね。天沢さんは、今回の敗因は何かわかりますか?」


 すっとナイフが引っ込み、葉月が前に出てくる。


 ゆかは転がった二人を見て、荒い息を吐いてにじり寄る。


 反省箇所の多さに、薫は眉を潜める。いくら奇襲とはいえ、これではずぶのド素人と何も変わらない。


「敗因しか、ないです」


 その答えに葉月がにこりと微笑み、薫の頬を手加減なしで叩いた。音の割に威力は凄まじかったようで、薫はよろけてたたらを踏む。


「つまり、今あなたは三人の仲間を殺したことになります。分かりますね?」


 叩かれた頬を押さえて、薫は悔しそうに奥歯をかみ締める。


「念波で会話なんて、ありえません。技術のある魔法使いからすれば、拡声器でおしゃべりしているようなものですよ。アッガレッシオンに聞かれなかったのは、彼が油断していただけです」


 そしてまた今度は反対の頬を叩く。気丈に堪えるが、それでも薫は痛みと衝撃、なによりも悔しさで目を潤ませた。美鈴とシャルロットを抱き上げたゆかが心配そうに見つめる。


「煙幕を張られた時点で、偵察機を出したのは正解です。でも、それだけです。煙幕を張るとは、即ち攻撃するための準備です。防御をお嬢様だけに頼った。そしてわたくしの罠にかかった」


 音を立てて薫の頬が叩かれる。視線を下に向けて堪えようとするが、そうすると雫がこぼれそうになるので、まっすぐに葉月を見上げるしかない。目に見えて赤く腫れているのがわかった。


「先ほど、ヴィエダーさんから魔力は術者から世界に向けて、流し込んで行使すると聞きましたよね? なら強制的に魔力を流れやすくさせる技術が確立されないはずが無い。それで技術面では素人であるお嬢様は、顕現させる位置を違えさせることができる」


 また叩かれる。ついに薫の目から雫がこぼれる。悔しくて睨み返してしまう。


「ふふ、いい目です……」


 葉月は妖しい笑みを浮かべて、赤くなった薫の頬に手を添える。


「魔法使いの戦闘は、狸の化かし合いです。いかに相手を騙して、こちらが有利になるように動けるか。それが課題です」


 薫は頬をさする葉月の手に触れて、悔しくて熱の篭った目でもう一度睨んだ。


「もう一度、おねがいできますか?」


 やさしい笑みを浮かべた葉月は、むしろ小首をかしげた。


「わたくしに負けたままで、帰れると思っていたのですか?」


 美鈴とシャルロットの拘束がはずれ、葉月がするりと薫から離れていく。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ