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追放


 予定どおり全ての研修をこなしつつ、深い眠りを確保できた。


 終礼後には事務室へ行くように言われた。


 何の話かまったくわからなかった。

 だが、俺以外にも出喜流や間宮、その他たくさんの新入社員たちも事務室の前に集まっていた。


「おう……ユウ」


 なんだか出喜流は元気がなかった。


「どうしたんですか?」


「いや、まあ、な……」


「間宮さんは?」


「私も心当たりはないわね。強いて言えば消灯時間の12時を過ぎてもロビーで研究資料を読み漁ってたことかしら?」


「消灯時間、ですか?」


「ええ。たしか昨日の説明でも言っていたし、紙にも書いてあったわ。ロビーは12時以降は消灯するように、と」


 つまり、出喜流、間宮を含む新入社員たちは消灯時間を守らずに、その説教のために呼び出されたということか。

 だから、事務室に入るのを躊躇していたわけだ。


 俺は別に消灯時間には部屋にこもってゲームをしていたわけだし、怒られるやましいことなど何もない。


「じゃあ、僕、先に入ります」


「お、おお。この人、キモ座ってるなあ」


 周りの新入社員たちは感嘆したようにして俺を見ているが、別に俺に関しては、怒られに行くわけではないからな。


 すっと俺が事務室の扉を開けると、後を追うようにして出喜流たちが入ってきた。


「君たち、なんで呼び出されたかわかってる?」


 開口一番、横山とかいう事務職の女性がそう聞く。

 その隣には管理職を名乗る眼鏡の小太りのおじさんも呆れを態度に表していた。


 おいおい。

 なんで先に出喜流たちの説教なんだよ。

 たしかに俺一人に対して、出喜流たちは少なくとも二十人はいる。

 だが、俺が先に事務室に入っただろうが。


「なんで黙ってるん?」


 眼鏡の管理職がそう聞く。


「……」


 出喜流たちは応じずに視線を落とす。

 たしかに怖いもんな。

 横山とかいうのも、この管理職のやつも情けない。

 新入社員とキャリアの差を見せつつ高圧的な態度を取るとは。

 お前らが張り合う先は新人じゃなくて歴戦の猛者である社員たちであろうに。


 重暗くなる空気の中、沈黙を切り裂くようにして出喜流が声を発する。


「すみませんでした!私たちは消灯時間を守らずに、新入社員たちと交流をしておりました」


 見ていて気持ちの良いくらいに頭を下げている。


「そんなんで済んだら、ルールを作る意味ないよね?」


「それは……」


 出喜流は真剣な表情で少し黙ると、閃くように口を開いた。


「その通りです。ですので、私はルールを破った代わりとして、早朝の本社清掃を致します」


 素晴らしい案だ。

 他の新入社員たちも出喜流をキラキラと見ている。


「いや、そんなのいいよ。ルールを守れないんだったら、寮から出て行ってもらうから」


 なんて。

 なんて重たいんだ。


 空気すらもどんよりと重くなる中、間宮が手を挙げる。


「どうしたの?間宮さん?」


 横山が威圧的な口調で言う。


「横山さんたちは、昨晩、私たちに復習をするように申しつけられました。私はたしかに、消灯後もロビーにて資料の読み込みをしておりました。ですが、これも会社に関わるものです」


 間宮だけは表情が陰ることも、焦る顔も見せていない。むしろ、呆れたようにして周囲を見渡している。


「そして、私が消灯時間を超えたのは、それ以前に昨日の復習をしていたためです。遊んでいたわけではありません。それに」


 ギロリと二人の社員を睨む。


「そのルールについてのペナルティについては知らされておりませんでした。後出しは社会人として信用を失う行為なのでは?」


 二人は顔を見合わせる。


「うん。やっぱり退寮ね」


 冷たい宣告が横山から下される。

 なんて。

 なんて重たいんだ。


「君たち全員」


 は?

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