おかしな色の空
二、
その日は、朝から空の色がおかしくて、男たちはあつまって、浜からずっと沖のほうをながめてはささやきあい首をかしげていた。
あたしももう十八で、育った浜とはすこし離れた浜で漁をする男といっしょになって、こどものころとおなじ浜で、ずっとかわらない暮らしをしていた。
タキちゃんとはあまり顔をあわせなくなったが、村長のところに持って行った魚を干したりしていると、ほかの者にはみえないよう、米や野菜をわけてくれることもあった。
「 また おいで 」
そういってなにかをくれるタキちゃんは、こどものころとちがって、眉の下がった心細げな顔をしていた。
いつも、もっとはなしたいようなそぶりをするのだが、タキちゃんはすぐに姑によびもどされる。背中に負った三番目の子も、ぐずりっぱなしだ。その子がひどくからだが弱くて手がかかるのだと言っていた。
たしかに、うまれてからもう二年ほどたつのに、あまり育っていないようにみえた。
「医者が、からだにいいものをくわせろなんていいよる」
そのときのおこった顔は、ちいさいころウラカタに怒っていたときと同じものだった。
そうだ。
タキちゃんはそのウラカタをする婆様がいる村長の家へはいったのだ。
朝からおかしな色の空をみあげてそんなことをおもいだしながら、今日とった貝をみんなでわけた。
そういえば、タキちゃんのいる浜じゃあ、こんな岩場にすむ貝はとれないだろう。タキちゃんのこどもにもっていってやろうか・・・
貝で煮たてた鍋はうまいしからだにもいい、と十八でいっしょになった二つ上の夫はよくいう。うちにはまだこどもがおらず、夫の親はもう亡くなっているので、タキちゃんが姑に怒られているのをみたりすると、夫にはもうしわけないが、うちの姑は亡くなっていてよかったとおもい、どういうわけか、タキちゃんに勝ったような気になる。




