アダージオ 【前日の過ごし方】 3
[場所:部室]
[吹雪]:「――ついに、完成だー!」
[舞羽]:「わーい!」
[カホラ]:「おめでとう、二人とも」
俺たちは三人でハイタッチを交わした。
製作期間約半年、あきらめず頑張った甲斐があったってもんだ。
[カホラ]:「よく頑張ったね。本当にすごいと思うわ」
[吹雪]:「いや、先輩の手助けがあったからすよ」
[舞羽]:「はい、先輩が最後にアドバイスくれなかったら、今年中には完成しなかったと思いますし」
[カホラ]:「あら? そうかしら?」
[吹雪]:「そうです、本当に感謝してます」
[カホラ]:「ふふ、役に立てたなら私としても嬉しいわ。お茶にしましょう? 完成祝いに」
[舞羽]:「あ、じゃあ私が煎れますよ、お茶」
舞羽は準備室へと入っていった。
[舞羽]:「じゃあ、お疲れさまでしたー」
[カホラ]:「お疲れさま」
[吹雪]:「お疲れ」
音頭をして、お茶を一口飲む。
[カホラ]:「ふー、美味しい」
先輩がそうつぶやいた。
[カホラ]:「あ、そういえば、出来たプラネタリウムはどうするんだっけ? 出展するのかしら?」
[吹雪]:「はい、来年の学園のイベントで発表すると思います」
[カホラ]:「そっか、いい結果になるといいわね」
[舞羽]:「えへへ、今回は、少し自信があるね、吹雪くん」
[吹雪]:「ん、そうだな。なかなかに納得のいく出来になったからな」
[カホラ]:「ふふ楽しみに待ちましょう」
先輩は優しい笑顔を浮かべていた。
[カホラ]:「いよいよ明日ね、選出の日」
[吹雪]:「そうですね」
[舞羽]:「はい」
[カホラ]:「誰が選ばれるのかしら、今年は」
[吹雪]:「誰でしょうね」
[カホラ]:「今日ばっかりは、どこもかしこもこの話で持ちきりみたいだったわ」
[吹雪]:「そうでしょうね」
[舞羽]:「この島で一番の行事ですもんね」
[カホラ]:「これによって、来年を平和に過ごせるか決まってくるわけだものね。当然って言えば当然よね」
[吹雪]:「そうですね」
[カホラ]:「選ばれるってことは、島の代表になるってこと。なった人には、自覚を持って望んでほしいわね」
もっともな意見だ。誰がなったとしても、それは忘れてはいけないこと。
[舞羽]:「うー、何か緊張してきちゃうね」
[カホラ]:「そうね、島の存亡がかかってるようなものだものね」
[舞羽]:「そうですね」
[カホラ]:「不思議よね、ピアノを奏でることによって島の四季が保たれる。誰が残したのかも、どうしてそうなったのかも分かってない。だけど、私たちは弾き続ける。ロマンを感じるわ」
[吹雪]:「確かに、普通の島ではこんなことはないですもんね」
[カホラ]:「文献にもあんまり残ってないのよね、このことについては。もし分かったら、偉人になれるわね」
[吹雪]:「先輩は、知りたいんですか?」
[カホラ]:「ええ、もちろん。というか、定期的に調べてもみてるわ」
[吹雪]:「あ、そうなんですか?」
[カホラ]:「まあ、一度気になっちゃうと何度も気になっちゃう質だから、つい、ね」
[吹雪]:「で、何か分かったんですか?」
[カホラ]:「うーん、それがほとんど。図書館で歴史を見ても、それらしきことは書いてないのよね。今のところは有力なことはあまり分かってないわ」
[吹雪]:「そうなんですか」
[カホラ]:「まあ、そんな簡単に見つかったら、今まで詳細不明ってことは有り得ないわよね」
[吹雪]:「確かに」
[カホラ]:「でも、一応これからも続けてはいくよ。まだ時間はあるしね」
[吹雪]:「暇があれば、俺たちも手伝いますから、言ってくださいよ」
[カホラ]:「あら? いいの?」
[吹雪]:「もちろん、な? 舞羽」
[舞羽]:「はい、プラネタリウムが完成したのは、カホラ先輩のおかげですから」
[カホラ]:「ありがと、二人とも」




